Memories Off Another

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ・・・・・」

あくびを噛み殺しながら携帯のディスプレイを見る。

時刻は23時26分。流石にこの時間にもなると駅前といえど人通りがあまり無い。

くたびれた顔をしたサラリーマンが何人か通り過ぎていく程度だ。

「んっ・・・・!」

昼の学校生活と夜のバイトで疲労した体をほぐすため、軽く伸びをする。

どうしてこう人を待つ時間ってのは退屈なんだろうか。

「しゅーんくん」

「お待たせ」

声に振り向くとそこには桧月、今坂、智也の3人が改札を出てきたところだった。

「うむ、出迎えご苦労」

「蹴るぞ、おまえ」

桧月と今坂には手を上げて答えるが約一名の礼儀知らずをジト目で睨む。

「ハイハイ、仲が良いのはわかったからこんなとこでケンカしないの」

「そうそう、ぐずぐずしてたら決定的瞬間を見逃しちゃうよ?」

すかさず仲裁に入る桧月と今坂。

「ちっ、勝負は預けとくぞ」

「フッ、望むところだ。俊、いつもで受けてたとう」

フッフッフ、と不敵に笑いあう二人。

「何の勝負なんだか」

「・・・・ま、アホなことしてないでさっさと行くか」

智也と二人で笑いあっていても何も楽しくない。

「ほーら、3人とも早くいこーよぉー」

俺達より先に歩き出した今坂が元気一杯といった感じで手を振る。

「・・・・・元気な奴」

呆れる智也と苦笑する桧月と肩をすくめる俺。

俺達はゆっくりと今坂の後に続いて歩き出した。

 

 

「私服で学校に来るってのも中々珍しいよな」

ひっそりと夜の闇にたたずむ校舎を見上げる。

俺も含めてみんな私服だ。

学校に来るときは基本的に制服なので少し妙な気分だ。

「よ、夜の学校って怖いねぇ・・・・・」

そういって今坂はまるで小動物のようにぴったりと智也の背中に張り付く。

さっきまでの元気はどうしたよ?まだ校門のとこまで来ただけなのにこれだ。

ま、今坂の言うとおり人気のない建物というのは夜という闇の中で言いようの無い不安を掻き立てるものだ。

「・・・・・確かに夜の学校ってのは不気味だけどな」

今坂でなくともそう感じてしまうのは当然だろう。

「・・・・・・行くか」

意を決したように智也が歩き出した。

「うん、絶対、置いて行かないでね?」

それに続くように今坂がぴったりと智也にくっつき、今坂に手を引かれた桧月が続く。

(・・・・・・やれやれ)

若干の疎外感を感じながら俺もそれに続いて歩き出す。

校門から生物室までの道のりを意気揚々と歩いていく智也とビクビクしながら歩く今坂。

そして平然とあたりを見回しながら歩く桧月。

「やっぱり夜の学校っていつもと全然違うねぇ」

「そうだな・・・・・」

桧月は今坂と違って、まったく怯えていないらしい。

特に強がっている様子もなくいつもどおりだ。今坂ほど怯えるとは思っていなかったがこれはこれで予想外だ。

多少は怯えたりする素振りを見せると思っていたのに。

俺のほうはというといつもどおりの平常心といえば嘘になる。

恐怖以上に怖いもの見たさゆえの高揚というか、ちょっとワクワクしているというのが現状だ。

たとえ智也の話が単なるデマだとしてもそれ以上に夜の学校の雰囲気がそう感じさせるものがある。

「おっと」

「ふぁっ!?」

暗闇の中、智也と今坂の声が聞こえる。

どうやら地面の段差か何かで智也が躓いて、今坂が掴んでいた智也の服の裾を手放して慌てた声らしい。

「わ、ゆ、唯笑ちゃん?」

今度聞こえてきたのは桧月の声。

暗闇に慣れた目で見ると、今坂が右手で桧月の腕を左手で智也の腕を抱え込んでいた。

「お、おい、唯笑」

「うぐぐぐぐぐぅぅっ!」

その様子に今度は智也が慌てるが今坂はがっちりと抱え込んだ手を放そうとはせず、フルフルと頭を振っている。

なんというか、必死だ。その手を放した瞬間に取り返しのつかないことになってしまうとかそんな感じだ。

そんな今坂の様子に呆れたように顔を見合わせて苦笑する俺達。

仕方なく智也たち3人はその体勢のまま歩き始めた。

俺はただ一人空いている両手をポケットに突っ込んでその後に続く。

・・・・・・・・・・・・さっきより物凄い勢いで疎外感を感じてしまった。

なんか一人すげー寂しいんですが、俺。

かったりぃなぁ・・・・。

そんなことを思いながらも俺達はようやく生物室の前にたどり着く。

教室の中では熱帯魚の水槽の照明が青紫色の光を放っていた。

その光度は強いとは言いがたいが、それでもあたりの様子を確認するのは充分だった。

その光に気付いてようやく今坂が抱え込んだ桧月と智也の手を放して照れ笑いを浮かべる。

「えへへ・・・・」

「・・・ったく」

そんな二人の様子を見て桧月がやれやれと言った感じで俺の方を振り向く。

俺はそれに対して肩をすくめて応える。

俺が携帯を取り出して時間を確認する。

「11時57分・・・・予定通り・・・ってとこかな」

コクンと今坂と桧月が頷く。

とりあえず俺達は当初の目的を果たすべく窓から中を覗く。

今坂だけは何故か後ろを向いたままぴったりと後頭部を窓につける。

怖くて中が見れないのだろうけど、それで何をするつもりだ、おまえは。

「・・・・・・・・」

今坂のことは置いておいてとりあえず改めて中を覗く。

生物室にあるホルマリン漬けやら何やらあらゆるものが青紫色に照らされていて不気味なことこの上ない。

そのまま視線をガイコツへと向ける。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

教室の隅で普段見てる通り、気をつけの姿勢で佇んでいる。

当然奴の身体も青紫色に輝いてはいるが、これといって異常は見当たらない。

智也の話どおりアゴがカタカタ動く・・・・・・・・・・・などといった素振りはまったく無い。

「ど、ど、ど、ど、どう?」

視線を校庭に向けたまま今坂が震えた声で尋ねる。

「どう?って言われても・・・・・別に変わったところは見当たらな・・・」

言いかけて智也がハッとする。

「・・・・・ガイコツ・・・・動かないねぇ・・・」

「・・・・・・ウンともスンとも言わないな」

拍子抜けしたように呟く桧月と俺。

別に期待していたわけでもないが、何かしら智也が仕掛けてると思っていたのに何も無い。

これはこれで肩透かしをくらった。

「ほ、ほんとに・・・・?」

「ああ、まったくもってちっとも動かないな」

「ほんとに、ほんとに、ほんとに・・・・・本当・・・・?」

「うん、全然、ちっとも」

桧月が頷くと覚悟を決めたか今坂は恐る恐る振り返って中を覗く。

ただしその体勢はいつでも逃げられるように半身で振り返っている。

そして横目でじぃっと隅の方を見つめ・・・・・。

「・・・・・ふぅっ」

と、脱力したように息をついた。

「なぁ〜んだ、やっぱり」

「・・・・ま、こんなことだろうとは思ってたけど」

「・・・・所詮智也の戯れ言だったか・・・・」

口々に感想を漏らす俺達。

「ま、まぁ、もう少し待て」

そんな俺達の言葉をさえぎって智也はジッと中を見つめている。

時間を確認するがすでに時間は深夜12時を回っている。

「往生際が悪いな」

くっくっく、と自然に頬がにやけてしまう。

一方智也のほうは冷静を装ってはいるが内心では相当焦っていることだろう。

「動かないねぇ・・・・・」

今坂が再度確認するように呟く。

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

智也をジッと見つめながらそれぞれに訪れる静寂。

その瞬間智也に何が起きたのか。

 

「ウォーッ!ウォーッ!ウォーッ!」

 

突然智也は何を思ったのか両手を広げ、窓ガラスをバンバンと猛烈な勢いで叩きつけ始めた。

「と、智也・・・・!?」

「と・・・・智ちゃん!?」

突然智也の常軌を逸した行動にさすがに動揺を隠せない二人。

無論、俺も例外ではない。

「だぁっ!だぁっ!」

智也が大声を張り上げたせいかヨダレまで垂らしていやがる。

バーサーク状態の智也に完全にヒキ状態の俺。ズサッと思わず3歩ほど後退してしまう。

はっきり言って近づきたくない。

「ちょちょちょちょちょちょっと智也!な、何してるのよぉっ!?」

「そ、そうだよ!や、やめなってばっ!見つかっちゃうよぉ!」

そんなバーサーク智也に怯えながらも二人は智也の腕を取って制止する。

「ん?」

二人に腕を止められた智也は何事もなかったかのように振り向き、ヨダレを拭う。

あの状態の智也に近づけるとはさすが、幼馴染。俺は近寄れない。つーか、近づきたくない。

「と、智也、一体どうしたの?」

「な、何か変なモノに取り付かれたとか・・・・・?」

だが、智也は二人の問いに答えず無言。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「お、おさまった・・・・・・のか・・・・な?」

今坂が呟いたその次の瞬間。

 

「町田中尉ィ――――――!!!」

 

再び狂気に走る智也。

「智ちゃんが智ちゃんが・・・・・壊れちゃったよぉぉっ!」

「ちょ、智也ぁっ!そんな大きい声出したらダメだってっ!唯笑ちゃんも落ち着いてっ!そもそも町田中尉ってダレェッ!?」

桧月が慌てて智也を止めると再び訪れる静寂。

俺は危なくてとても近寄れません。

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・智ちゃん?」

 

 

「めーをーさーまーせー!!」

 

 

 

「あーもーっ!!だから誰に言ってるのよっ!」

桧月がキレた。

「ああっ!二人とも大きな声出しちゃ駄目だってばっ!」

今坂の声も充分にでかい。

 

 

「めーをーさーまーせー!!」

 

なおも叫ぶ智也。

 

「オノレが目を覚ませェッ!!!」

 

右足を距離を取るため後ろに置き、軸足を45度の角度で開く。右足を内側にたたみ、開くときの力を利用し外側へ捻り打ち出す。

俺の必殺の蹴りが智也のわき腹に炸裂する。

「ぐほぉっ!!」

我ながら見事なほど綺麗に決まった。

堪らず足から崩れ落ちる智也。

「と、智ちゃん!?」

崩れ落ちる智也を支える今坂。そのまま地べたに座り込む。

「俊くん、さすがにそれは・・・・やりすぎ・・・・じゃないか・・・なぁ?」

「しゅ、俊・・・・・てめぇ・・・・」

恨みがましい目つきで痙攣する智也を一瞥しながら俺はきっぱり言った。

「いや、悪霊にとり憑くかれた智也を解放するにはこれしかなかったんだ」

「ええっ、智ちゃん、悪霊にとり憑かれてたのぉっ!?」

「ああ、間違いない」

(きっと多分、もしかしたら、いや、ひょっとしてそーだといいな)

と、心の中で付け加える。

「ま、まぁ、確かにそう思っても仕方ないくらい智也はおかしかったけど・・・」

すると突然目を晦まさんばかりの光が照らされる。

とっさに俺は桧月の手を取り、今坂の頭を抑え、窓の下に身をかがめる。

「おいっ!」

生物室の中からドスの聞いた声が聞こえる。

ま、あれだけ大声で騒げば見回りにくるわな。

「どーするのよっ!智也が騒ぐからッ!」

「ど、どーしよぉっ・・・・!」

「・・・・・・・・・・・・・!」

壁にぴったりと背を預け智也を睨む桧月。

小動物のようにガクガクと怯える今坂。

痛みで声が出せないのか口をパクパクさせる智也。

そうこうしている間にも校庭に浮かんだライトの光が揺れ、カツカツといった音と共に楕円から真円へと形を変える。

どーするもこーするもないと思うが。

わき腹を押さえながらなんとか起き上がる智也。どうやら動けるほどには回復したらしい。

起き上がった智也と顔を見合わせて頷く。

「唯笑・・・・彩花・・・・・俊」

「・・・・・」

ささやくように智也が声を出す。

だが、今坂は恐怖に怯えているのまるで反応がない。

「今坂〜」

「・・・・唯笑ちゃん」

「・・・・唯笑」

桧月と智也に揺さぶられてスローモーションのように智也のほうに振り向く。

「・・・・・・?」

今坂を除く3人が顔を見合わせて頷く。

「逃げるぞ」

その一言を残し、智也は今坂の手を引いて一目散に走り出す。

当然、俺と桧月もその後に続いて走り出す。

「おいっ!コラ、待てぇっ!!」

背後から怒鳴り声が聞こえるが、この場合待てといわれて待つ奴はいない。

ただ、ひたすらに走る。何も考えずに走る。

・・・・・前言撤回。

走ってる間に色々考える。いや、感じたと正しいのか。

小学生ぐらいのころに感じたこの感覚。

そういえばこんなふうに何かから逃げて走るなんて何年振りだろう。

懐かしい感覚に身を委ねながらもひたすらに駆けた。

 

 

 

「ハァ・・・ハァハァ・・・・・」

四人が四人それぞれが息も絶え絶えだ。

「ふぅ・・・・やったね」

今坂がはつらつとした笑顔を向けた。

「へ・・・・ふふ・・・・ははっ」

さっきまでバカみたに怯えていたくせにもう笑ってやがる。

それが可笑しくて思わず吹き出してしまう。

きょとんとした顔で3人が俺を見るが、桧月と智也もやがてつられてように笑い出した。

「あは、あはははっ」

「ふっ・・・あははははっ」

「・・・・・・・ほえ?ほえほえ?みんな何笑ってるの?」

「いや、別にたいしたことじゃない。ただ、楽しかったなって」

「そうそう♪」

「ま、そんなとこだ。気にするな唯笑」

「・・・・・・・ほえ?あっ!そうだぁ!」

一人訳もわからずきょとんとしてた今坂が思い出したように声を上げる。

「結局、動かなかったよね?ガイコツ・・・・・」

「あ、そういえばそうだね」

「おお、そういえば智也は何か約束してたよなぁ?」

「くっ・・・・・」

余計な事を・・・・と言いたそうな感じで顔を引きつらせる智也。

「約束ぅ・・・・・」

「やすき節ぃ・・・・・」

今坂の声に俺が続く。

桧月はわたし知ーらないって感じでそっぽを向いている。

「いやいやいやいやいや!もうちょっと待っていれば動いたハズなんだっ!」

慌てふためく智也。

「見苦しいぞぉー。男なら言ったことはやってみせろー」

「ええぃっ!おまえは黙ってろ!あと少し待ってれば必ず動いたんだっ!」

「ふーん・・・・・・でもいいんだぁ。許してあげちゃおう」

「「え」」

俺と智也の声が重なる。

智也は驚いたように、俺は激しく不満そうに。

「いいの、唯笑ちゃん?」

「うん、だって最高に楽しかったんだもん」

「・・・・楽しかった?」

「『楽しませてくれた代』としてチャラってことにしてあげるね?」

「お、おう・・・・」

「えー、つまんなーい。やすき節ー。そっちのほうがもっと楽しいぞー」

「ええぃっ、だからお前は黙ってろ!」

「ぐぁっ・・・・」

不意のことだったので反応が遅れた。

さっきのお返しと言わんばかりに智也の右の拳が俺の腹に突き刺さる。

「約束したのは唯笑ちゃんなんだから、諦めるしかないね?」

ぽんぽんと俺の肩を叩く桧月。

「そういうことだ。諦めるんだな」

くっ、智也の奴偉そーに。

智也は腹を抱える俺を一瞥すると呟いた。

「さてと・・・・・帰るか」

「その前に今坂・・・・手大丈夫か?」

ふと、さっきから気になっていることを聞いてみる。

「手?手がどうかしたのか?唯笑?」

「ちょ、ちょっと手がしびれてきて・・・」

「手が!?大丈夫か?」

・・・・・こいつ、本気で言ってるんだろうか。

「うん。左手なんだけどね・・・・・ちょっと感覚が無くなってきちゃったみたいで・・・・・」

「え?おまえ、それはヤバイだろ。病院に行くか?」

いや、むしろ、お前が行け。

「病院とか何とかってことじゃないと思う・・・」

「じゃあ、なんなんだよ?」

「・・・・・・・って、普通気付かない?」

普通じゃないから無理かも。

「智也ぁ・・・・右手あげてごらん?」

呆れたように桧月が言う。

「・・・・・?」

言われたように右手を上げる智也。同じように今坂の左手も上がる。

智也は自分の右手と今坂の左手をじっと観察する。

ジト目でそれを見るほかも3人。

 

「何でオレの手首をお前が握ってるんだ!?」

 

一気に脱力して崩れ落ちる俺と桧月。

「・・・・・・智ちゃん、それって完全に見間違えてると思う・・・・」

「・・・・・?」

再度じっくり観察する智也。

「ぐわっ!」

ようやく自分がしっかりと今坂の手を握り締めていることに気付いて飛び退くようにして右手を離した。

「オ、オレいつからおまえの手なんか握ってた!?」

「生物室から逃げ出すとき」

「それからずーっと握ってたのか?」

コクリと頷く今坂。

「智也ぁ・・・・・さっきの意味不明な行動といい・・・・智也が病院にいくべきじゃない?・・・・・ハァ」

無言で俺も頷く。桧月に激しく同意。

今坂は掲げたままになっていた左手をプルプルと振りながら下げた。

街灯の光に照らされた手首から先は思いっきり紫色に変色していた。

「わ、わりぃ」

「ううん、大丈夫。それにホントはちょっと・・・・」

「ちょっと・・・・・・?」

「ううん、なんでもない」

「・・・・・・?なんだよ・・・・」

「・・・・・・・・」

そんな智也と今坂のやりとりを見てる桧月の表情が寂しげなものに変わったのを俺は見逃さなかった。

だが、それも一瞬のこと。すぐにいつもの表情に戻った桧月は智也に話しかける。

「・・・・・そんなことよりね、智也。もう一つ言っとくことがあるんだけど」

「ん?」

「もうね?」

「もう・・・・なんだ?」

「・・・・・もう終電ないよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

桧月の宣告に沈黙する智也。

もしかして今の今まで気付かなかったのだろうか。

「・・・・・・・もしかしなくても・・・・気付いて・・・・なかった?」

「うぉぉっ!俺としたことが!」

智也が頭を抱える。

どうやら本気で気付いてなかったらしい。

生物室についた時点で12時になっているのだから終電がなくなるのは当たり前だ。

やはりとびきりのAHOだ、こいつ。

「じゃ、どうやって帰るんだよっ!?」

「歩いて帰れ」

間髪いれず即答してやる。

「まじで?こっから一時間はかかるぞ?」

「ここからだと、もっとかかるよぉ。たぶん、2時間ぐらい・・・・かな」

「なにぃっ!?何故教えないっ!」

「後先考えずにここまで走ってきたのは智也でしょうっ!」

桧月の言う通り。ここから智也達の住む藍ヶ丘は学校より遠い位置だ。

よーするに俺らは帰る方向と逆に逃げてたわけだ。

「バーカ」

「うるさい!おまえも終電がないことには変わりないだろっ!?」

「それでもせいぜい1時間かかるかどうかだけどな」

おまえらよりは楽だ。

「ま、諦めるんだな」

そういって俺は歩き出す。

「ほーら、智也置いてくよ!」

「智ちゃん早く早くーっ!」

「わーかったよ。たくっ!」

空を見上げると雲にさえぎられることも無く、星々が煌いていた。

・・・・・・・・・・・ま、確かに楽しかったよな。

 

 

「ねぇ、さっき叫んでた町田中尉って、誰?」

「あのガイコツは昔陸軍中尉でな・・・・」

「・・・・・生物室で飼ってるネズミのことじゃないのか?」

「え?そうなの?何で智ちゃんがネズミの名前を叫んでたの?」

いつものとおり下らない話が続いた。

 

 

 

 

 

 

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UP DATE 04/04/16

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原作のシナリオを流用ってのはこれで最後に・・・・・したいなぁ。

自分のレベルの低さがなんとも・・・・・。

予告だけ書いたSRWMOなんですが何気に2話まで書いてあったりします。

まだ構想もしっかりまとまってないんで公開未定ですけど。