Memories Off Another

 

 

 

 

 

 

 

「今日はどうする?ゲーセンでもいくか?」

「あー、俺今日バイトだからちっと無理」

「なら、しょうがないか。今日はさっさと帰るか。信の奴もそうそうに消えちまったことだし」

「あ、二人とも今日はまっすぐ帰るの?」

放課後。智也と二人で昇降口に向かってると階段を上がってきた桧月と出くわす。

ホームルームが終わってから担任に呼び出されてたっけ。

「ま、そんなとこだ」

「・・・・・・先生、何だって?」

「うーんと、学祭の実行委員やってくれないかって。断わっちゃったけどね」

「・・・・・・かったるそうだもんなぁ」

納得したように頷く俺。そんな面倒な係を引き受けるのはよほど酔狂な奴に違いない。

「何にしろ用事は済んだんだろ?なら、一緒に帰るか?」

「うん、鞄取ってくるから、昇降口のとこで待っててね」

「あぁ、早くしろよ」

智也と桧月のそんなやりとりを俺は黙って眺めてる。

桧月はそのまま俺たちとすれ違って教室に向かう。

「・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・何だ?」

「いや、別に」

・・・・・・・・・・・・かったるいなぁ。

 

 

 

そんなことがあって昇降口までたどり着くと、キュッキュッという音が近づいてくる。

そしてその音は加速度的に大きくなっていく。

それに嫌な予感を感じたのかダッシュしようとする智也。

すかさず俺は智也の首根っこをつかんでそれを阻止する。

「くっ!放せっ!俊!!俺は行かねばならんのだ」

「却下だ」

何故ならそのほうが面白そうだから。

「とぉーもぉーちゃーん!!しゅーんくーん!」

遠くからそんな声が聞こえてくる。確認するまでもなく今坂だろう。

智也はどうでもいいが俺まで大声で呼ぶのは勘弁して欲しいのだが。

智也のほうも流石に逃げようとしても無駄と悟ったか観念したように振り向く。

「はぁはぁはぁ・・・・・」

「どした?そんな息を切らして・・・」

「す―――ッ、ハァ――ッ」

息も絶え絶えの今坂は俺の疑問に答えず深呼吸。何をそんなに急いでいたのやら。

「あのさっ!智ちゃん今朝聞かせてくれた例の話あるじゃない?」

「あ、ああ・・・・あれな、カルフォルニアのバスト160cmの女性の話だろ?」

「何の話をしてた、おまえら」

「ちーがーうっ!例のガイコツの話っ!あれさぁ調べてみようよっ」

「調べる?調べるっていうとあれか?おまえ疑ってるのか?」

むしろ誰が信じる。

「疑ってるわけじゃないけどぉ・・・ひょっとしたら目の錯覚ってこともあるでしょ?」

と、いうか間違いなくでまかせだと思うが。

「いいや、錯覚なんてことはありえないぞ、俺がしっかりとこの目で見たんだ。絶対にあのガイコツは動いたんだ。信憑性100%。従って調査の必要性も皆無」

いや、たしかに調査の必要は皆無だけどそれはあくまで信憑性0%だからだと思うぞ。

「・・・・・・・」

「・・・・なんだ、その目は」

「いや、別に。気にするな、続けてくれ」

智也は憐憫のまなざしで見ている俺が気になったらしいが俺はあえて口に出して突っ込まない。

このまま黙って話を進めさせたほうが面白そうだから。

「あれ?みんなで何話してるの?」

良いタイミングで鞄を持った桧月が合流する。

「あ、彩ちゃん。今ね、今朝の話の続きをしてたの」

「・・・・・今朝の話って・・・・ガイコツのこと?」

「うん、そう!それでね、唯笑からちょっとして提案があるんだけどぉ・・・・」

「ダメだ」

「まだ何も言ってないよぉっ!」

「・・・・・・・夫婦漫才はいいから話を進めろ」

「夫婦って唯笑と智ちゃんが?」

「ば、ばかっ!だ、誰がこんなのと夫婦だっ!」

俺の突っ込みに二人して同時に反応する今坂と智也。息もバッチリじゃないか。

「こんなのってなによぉっ智ちゃんっ!」

「おまえなんかこんなので充分だっ!」

「いや、だから夫婦喧嘩はいいから」

「だから違う!」

「あーっ!何もそんなに強く否定しなくったっていいじゃないっ!」

「・・・・・・話がループしてるぞ」

「どっちかっていうと、俊くんが原因のような気がするんだけど・・・・」

今坂と智也のやりとりに辟易してため息をつく俺に冷静に桧月が突っ込む。

「そうか?」

「うん」

「まぁ・・・・・それは置いといて・・・・今坂の提案って何よ」

「あ、うんそれはね、智ちゃんの話本当かどうか調べてみない?」

「・・・・・調べる?」

桧月が首を傾げる。

「だから何度も言ってるだろう。俺が見たんだから間違いなし!信憑性100%だっ!」

「まず、ありえんな」

「よくもまぁ、そんなでたらめを・・・・・・」

桧月もジト目で智也を見てる。

「だからぁ、信憑性がどうのこうのじゃなくて・・・・・興味本位って言うか怖いもの見たさっていうかぁ・・・・」

「・・・・・唯笑ちゃんて、怖いもの苦手じゃなかったけ?」

「うん、だから・・・・かな?こういうのって臆病な人ほどこういう話好きだったりするじゃない?」

「で、そういう興味本位で見に行ったりする奴に限って呪われたりするわけだ」

「ええ!?」

俺の言葉に面白いくらいビビってくれる今坂。

「そうだねぇ・・・夏の心霊スペシャルとかでもよくそういうことあるよね」

「ふぇぇぇっ!?」

桧月の呟きにさらに顔を青くする今坂。面白い奴。

「と、智ちゃん、どうしよぉぉっ!」

いや、どーするもこーするもまだ何もしてないから怖がる必要まったく無いと思うのだが。

「そうか、唯笑。迷わず成仏してくれ。じゃ」

「ちょちょちょちょちょちょっと待ってぇ!」

そういって踵を返そうとする智也を今坂が必死になって止める。

「ひどいよ智ちゃんっ!唯笑をこのまま放っておくのぉっ!?」

「唯笑ちゃん・・・・まだ何もしてないから平気だと思うよ?」

見かねた桧月が苦笑しながら言う。

「・・・・・・あ、そっか。てへへ」

そして照れたように誤魔化す今坂。やれやれだ。

「で、結局どうするんだ。行くのか?やめるのか?」

「え、だって・・・いったら呪われちゃうんでしょ・・・・?」

「おお、そうとも。とても残念だが諦めるんだな」

「でも、智也、朝に呪われたりしないから怖くないって言ってたよね?」

「ふむ、ならば問題ないな」

そもそも智也の作り話なのだから怨念だのそういったものは一切ないだろう。

「えへ、じゃあ決定だね、智ちゃん♪」

「・・・・・・・・・・一応俺の意見をはっきり言わせて貰おう」

「?」

今坂の発言をさえぎるように智也が手で制する。

「イヤだ」

「え〜なんでなんでなんでなんでぇっ!」

今坂奥義駄々っ子戦法発動。

「理由は3つある」

「ほう」

どうせかったるいとか面倒だとかおっくうだとか言うのだろう。

「1.かったるい。2.面倒くさい。3.おっくうだから」

ビンゴだった。

「ええええぇぇ!!!、やだやだやだやだやだぁぁぁぁ!!!」

まさに駄々っ子状態の今坂が喚き散らす。

やかましいことこの上ないので俺は指で耳を塞ぎながら一歩離れて様子を見守ることにした。

「・・・・・うるさい。俺はもうあんな怖い思いをするのは2度とごめんなんだよ」

さも思い出しく無いかのようなような素振りを見せる智也。怖くもなんともないといったのはおまえじゃなかったか?

「でも見たいんだもん・・・・・・見たいんだもん見たいんだもん見たいんだもん見たいんだもん!!」

今坂は完全に駄々っ子モードに移行。

「あっそ。行くのならお前らだけで行ってくれ」

「くぅぅっ・・・」

見ていて飽きない奴ら。

「いいよ、唯笑ちゃん。私たちだけでいこ。俊くんもくるよね?」

興奮する(?)今坂をなだめるように桧月が言う。

「問題ない」

俺としては桧月の誘いなら断る理由もないしな。

「おお、それは名案じゃないか?せいぜい頑張ってくれたまえ」

「「ムッ・・・・・・」」

智也の挑発したような言葉に見事にムッとする桧月と今坂。

「ふんだっ!いいよ智ちゃんのバカッ!」

「・・・・まぁおまえのやすき節を楽しみにしてるよ」

「・・・・・・・・」

下駄箱から靴を取り出そうとする智也の動きがピタっと止まる。

例の約束、絶対今の今まで忘れてたな。

「さぁて、何時に待ち合わせしようか?」

「待て待て待て待てっ!」

俺が桧月たちに聞くや否や物凄い勢いで智也が割り込んでくる。

「何?」

「どうしたの、智也」

今坂と違って桧月の奴は絶対わかってて聞いてるな・・・意外と意地の悪い奴だ。

「まぁまぁいいから待て」

きっと智也の頭の中ではどうやってやすき節を回避するか。脳をフル回転して考えているのだろう。

「なんなの、智ちゃん?」

「あー、えーと、だな・・・・・」

そういって時間を稼ぐ智也。さてどうするつもりかな。

「ねぇ智ちゃん、唯笑ちょっと急いでるんだけどな」

「何か用でもあるの?」

「うん、先生がなんだかわからないけど話があるから放課後職員室に来てくれって」

「おお、そうか。なら結論から言うことにしよう。やっぱり俺も行くことにした」

「ホントに?」

ぱぁぁっと今坂の表情が明るくなる。

「ああ、まぁ、そのなんだ。俺自身もう一度確かめてみたいとも思うしな」

「・・・・・・絶対なにか細工する為だよなぁ」

「・・・・・うん。絶対に間違いないよね」

盛り上がってる今坂に聞こえないよう小声で桧月と話す。

「そんで、いつ行くつもりだったんだ」

「今日」

「きょ、今日!?」

即答する今坂。驚く智也。

「今日って、ずいぶんいきなりだね?」

「うん、だって明日休みだしちょうどいいじゃない。彩ちゃんと俊くんもいいよね?」

「うん、あたしは平気だよ」

「まぁ、俺も問題ないかな」

一応バイトはあるが時間的には多分大丈夫だろう。

「今日かぁ・・・・・」

なにやら思案顔で呟く智也。

「うん、だからぁ・・・・ええっと11時ぐらいかなぁ?夜の11時ぐらいに唯笑と彩ちゃんは智ちゃんちに集合ってことで。
 俊くんは11時半ぐらいで澄空駅でいい?」

「オッケー」

「あん?女の子が夜中にフラフラしてたら危険だろうが。俺と彩花がおまえんちに行ってやるから家の前で待ってろ」

「へぇ・・・・・」

「え、う、うん・・・・」

感心する桧月と頬を染める今坂。

「・・・・・・智也がまともなことを言ってる」

ズサッ、とオーバーリアクション気味に後ずさる俺。

「どういう意味だ、おい」

「いや、何か不吉なことでも起こらなければいいなと」

「・・・・・・・・・」

お、智也の青筋のあたりがちょっと引きつった。

「まぁまぁ、二人とも」

微妙な雰囲気があたりを支配しそうになったところで桧月が場をとりなす。

「じゃあ唯笑ちゃん。11時ごろに迎えに行くね?」

「うん、分かった。智ちゃん忘れちゃダメだよ?」

「わかってるって」

「大丈夫、わたしがちゃんと覚えてるから」

「じゃ、決まりだな」

「うん、じゃあ唯笑、そろそろ職員室にいかなくちゃいけないから。3人ともまた後でね」

「うん」

「おお」

「またな」

走り出す今坂を3人で見送る。

途中すれ違った生徒とぶつかりそうになってつんのめる。

そして照れ笑いを浮かべながらこちらを振り向く今坂。

「もうっ、唯笑ちゃんたら」

「まったく・・・・」

それを見ながら苦笑する桧月と呆れる智也。

2,3度手を大きく手を振ってから再び今坂は走り出していった。

廊下を走るのはあまりよろしくないと思うのだが。

「んじゃ、帰るか」

今坂が角を曲がって見えなくなったところで自分のクラスの下駄箱へと向かう。

「そうだね・・・・って、智也?」

桧月もそれに続こうとして・・・・足を止める。

何かと思って振り向くと何故か智也はせっかく出した靴を下駄箱へと閉まっている。

「帰んないのか?」

「いや、ちょっと用事を思い出したんでな。悪いが先に二人で帰っていてくれ」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

桧月と二人で顔を見合わせる。

「じゃ、二人とも後でな」

そういってそそくさと駆け出す智也。

「・・・・・・・何か小細工でも思いついたかな」

「・・・・・・・そんなとこだろうね、どうしよっか?」

「・・・・・・・ほっとくか。あいつが何しかけるか興味もあるし」

多分放っておいたほうが面白いことになるのだろう。

確かに智也が考えるようなことは突拍子も無いものが多いがLV自体は低い。

何か仕掛けてあっても見破ることは容易いはずだ。

「・・・・・・帰るか」

「・・・・・そうだね」

・・・・・・そういや桧月と二人だけで帰るってのはなかなか珍しいかも。

そして俺たちは他愛も無い会話をしながら駅へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TOPへ  SSメニューへ  Memories Off Another Index BACK NEXT

採点(10段階評価で、10が最高です) 10
お名前(なくても可)
できれば感想をお願いします

UP DATE 04/04/05

***************************************************