ZOIDS Kanon Destiny EX

 

第7話「新たな仲間」

 

 

 

 

 

「鉄竜騎兵団<アイゼンドラグーン>・・・・・・・・・・・」

ニクシー基地の一角。

そこにはスノークリスタルメンバーと浩平、秋子、聖たちが集まっていた。

「鉄竜騎兵団・・・・・西方大陸戦争時代でも一部の部隊で噂だけにはなってましたね」

壊滅した瑞佳の部隊や浩平から得た情報が、モニターに出される中、美汐は呟く。

「どんな噂なんだ?」

祐一の言葉に美汐は首を静かに振り、

「神出鬼没の幻影部隊・・・・それだけですよ」

「正体に関する情報なし・・・・というわけね」

美汐の答えはあらかじめ予想できたのか香里も溜息をつく。

「・・・・・・・そんなことはどうだっていいんだよ・・・・・・・」

体のいたるところに包帯をした浩平が静かに呟く。

あの戦闘のあと、生き残った味方を回収部隊にまかせたあと、浩平はニクシー基地まで辿り着いた。

傷ついたジェノブレイカーを短期間で修理する為の設備が整っていた一番近い基地だったからだ。

そしてブレイカーの修理を依頼し、二日間眠りつづけ、目が覚めたのはついさっきのことだ。

「俺はあいつ等を探し出し、長森を取り返す。それだけだ」

口調は静かだった。だが、その裏に内包した怒りはこの場にいる誰もがはっきり感じていた。

「おまえの気持ちもわかるけど、どうやって奴らを探し出すんだよ。帝国と共和国両方の捜査網にも未だに引っかからないんだぞ?」

「・・・・・あのティラノ型・・・・バーサークフューラーのパイロットは俺を狙っていた。だったら俺が一人でいればそのうち向こうから姿を表すさ」

―――バーサークフューラーのパイロット。

あの時に遭遇した女の子の声を祐一は鮮明に覚えている。

何故かは祐一自身にもわからない。

ただ、漠然としたイメージだけが祐一の脳裏に焼きついているのだ。

「・・・とにかくブレイカーの傷が治り次第俺は行くからな」

そういって浩平は話は終わったと言わんばかりに席を立ち、ドアへと向かう。

だが、浩平がドアを開けるより早くドアは開かれた。

 

ドスッ!!

 

「ぐっ、ぐほっ・・・!?」

鈍い音とと共に腹を押さえ、崩れ落ちる浩平。

「何、一人で格好つけてんのよ、あんたは」

「な・・・・・なんでお前がここにいる・・・・・・」

浩平は蹲りながらもドアから入ってきた人物を恨めしそうに見上げる。

「ふふっ、わたしが呼んだんですよ。折原さんの監視役も兼ねてね」

秋子は笑顔で微笑みつつ、入ってきた人物に目を向ける。

「そゆこと。瑞佳の心配してるのはあんただけじゃないんだから、一人で突っ走らないでよね」

そう言って入ってきたツインテールの少女――七瀬留美は軽くウインクしてみせる。

「そうそう、浩平くん一人にまかせておけないもんね」

ひょこっとドアから顔を覗かせたのは長い髪の少女。

だが、その瞳には光を映していない。

「一人でできることなんて限られていますよ、浩平」

長いおさげの少女はそういって穏やかに微笑んでいた。

「みさき先輩・・・・茜まで・・・・・・・・・・うおっ・・・・・」

突然飛び込んできた小さな影に押し倒される浩平。

『わたしもいるの』

にこにことしたまま、スケッチブックを掲げる小柄な女の子。

「澪・・・?おまえまで出てきたのか?」

予想だにしなかった面子の出現に驚きを隠せない浩平。

「ことは折原さんだけの問題ではありませんからね。上層部も本気になったということですよ・・・・・・・・さて、話をつづけるわよ」

秋子に促され、新たに加わったメンバー達も、それぞれの席につく。

浩平も留美やみさきに連れられながら渋々と席に着く。

「とにかく・・・足りないのは情報だな。相手の目的も正体もはっきりしないことには手の打ちようが無い」

聖がモニターを操作しながら、説明を続けていく。

「だが、今回折原くんが襲撃に遭ったことで、いくつかわかったことがある。

まず、一つは敵戦力の構成。新型の小型ゾイドを主力とし、その旗艦ゾイドとして

ティラノ型ゾイド・バーサークフューラーが存在することが確認されている」

モニターにはこの前の戦闘で得た鉄竜騎兵団の機体のデータが次々に表示されていく。

聖が解析したデータによると、バーサークフューラーを除いたゾイドは全て小型機であるが、

その戦闘力は既存の同クラスのゾイドを圧倒するほどの性能を有し、集団戦を得意としていることまでわかった。

「そして今回確認されたので一番問題なのが・・・・・・・小型機のパイロットについてだ・・・」

説明する聖の顔つきは不意に厳しくなる。

そこからは怒りと悲しみその両方が混じったような感情が伺える。

そして聖の報告を受けた後、その場にいた誰もが同じ感情を抱くことになる。

小型機のパイロット―――――その多くがここ最近の事件で行方不明になった者達ばかりだったのだ。

中には西方大陸戦争時に行方不明となった者もいる。

聖が言うには、彼らが鉄竜騎兵団の捕虜となった後、強力な洗脳を受け鉄竜騎兵団の忠実なコマと化していたらしい。

今回の戦いで保護された者達も戦闘時のショックで洗脳が解けたものもいるが、いまだに解けない者も多くいる。

量産性の高い小型ゾイドと、捕虜にしたパイロットを洗脳し、捨て駒として扱う。

それが鉄竜騎兵団の手口なのだ。

「・・・・・それじゃ、瑞佳も・・・」

「留美ちゃん!」

言いかけた留美だが、みさきに言われて、ハッとしながら続く言葉を飲み込み、反射的に浩平に目を向けてしまう。

留美の予想と裏腹に浩平は静かに座っていた。

だが、その瞳は激しい怒りと強固な意志に満ちている。

「洗脳の解除にはこちらでも出来る限りの事はしている。彼女さえ、保護できればあとは我々でなんとかするさ」

技術者兼医者である聖は断固とした口調でそう告げる。

「ああ、長森は必ず俺が取り戻す。だからその後のことは頼む」

「うむ、まかせておけ。・・・・・・・・・・さて、敵戦力について続けるが・・・」

力強く頷いて見せた聖だが、その表情はすぐにまた厳しいものになる。

モニターに表示されるのは浩平達のゾイドが無力化されたときのデータだ。

鉄竜騎兵団のゾイド、グランチャーの発する強電磁波――ジャミングウェーブ。

それは強電磁海域トライアングルダラスで発生しているものと酷似していた。

深海から成層圏に至るまで、プラズマ嵐が荒れくるう難所中の難所。

あらゆるゾイドの計器を狂わせ、操縦不能にする電磁波。

今までの基地守備隊が一方的にやられたのもこのジャミングウェーブのせいなのだろう。

「現在、撃破した機体を解析して、ジャミングウェーブに対する防御策を研究中です。

少なくとも対策ができるまでは迂闊に行動するわけにはいかないというのが現状ですね・・・・」

秋子は現状打破が出来ない自分達が歯がゆいのか、深い溜息をつく。

「だけど、このまま何もしないというわけにはいかないでしょ?」

祐一の質問に秋子はゆっくりと頷く。

「ええ、もちろんです。現在光学迷彩を搭載したヘルキャットを多数配備し、鉄竜騎兵団の基地探索にあたらせています。

しばらくは彼らの報告待ちですね・・・・」

「・・・・・・・・・待つことしか出来ない・・・つらいところですね」

仮に基地を発見できたとしてもジャミングウェーブ対策ができていなければ、攻撃を仕掛けても返り討ちに遭うのみだ。

結局、今の彼らにできることなどないのだ。

「・・・・・・・・・・」

今まで何のリアクションも起こさなかった舞が立ち上がる。

「舞、どうしたんだ?」

「・・・・・じっとしててもしょうがない。美汐・・・・訓練の相手して」

それだけ言うと舞はさっさと部屋から出て行ってしまった。

「・・・・・あの人は変わりませんね」

苦笑しつつも美汐も舞いに続いて部屋を出て行く。

「あ、美汐、待ってよーッ!!」

真琴も慌てて美汐を追いかけていく。

「あいつらは・・・・・・・・秋子さん、いいんですか?」

「了承」

「・・・・・・・・・」

相変わらず1秒だった。

「なら、俺も出るか・・・・・・・相沢、一勝負しようぜ。お前とのケリは着いてなかったしな」

「折原・・・・・あんたのゾイドは調整中だってこと忘れてるでしょ?」

「・・・・・・あ」

不敵に笑って見せた浩平だが、留美の鋭い突っ込みが炸裂する。

「わたし、お腹すいたよ〜、澪ちゃん、食堂にでもいこ?」

『おなか、減ったの』

「・・・・浩平、いきましょう・・・」

「わたし眠い・・・・」

「あ、祐一さん。私たちも訓練しましょう?」

「・・・・そうだな」

「お姉ちゃん、私たちはどうしましょうか?」

「・・・さぁ」

あっとういう間に先ほどまでの雰囲気は嘘のような空気に包まれる。

秋子はそんな彼らのペースに安堵しながらも、内心では不安を抱えていた。

(折原さんが言っていた彼女の言葉・・・・ヘリックとガイロスを滅ぼす・・・まさかゼネバスの?)

人々の思惑をよそに時間は流れていく・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

予告

真琴「ねぇ、美汐。あたしたちの出番がないわよ?」

美汐「大丈夫です。主役の相沢さんの出番もほとんどありませんから」

真琴「…それ、大丈夫って言うの?」

美汐「これからが本番ということですよ」

真琴「ホントッ?真琴と美汐の活躍で一話丸ごととかあるっ?」

美汐「しばらくはなさそうですが・・・・そろそろ次回予告ですよ」

真琴「あぅー。敵の基地見つけたのに真琴は留守番なのー?」

美汐「大丈夫です。最後は私たちが美味しい所を持っていきますから」

真琴「ホントっ!?ふっふっふー、腕が鳴るわ」

美汐「次回、ZOIDS Kanon Destiny EX 第8話 「潜入」

真琴「真琴と美汐の活躍、楽しみにしてなさいっ!」

 

 

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彩花「何か言うことは?」

ネメシス「え〜、更新が遅れて誠に申し訳ありませんでした」

彩花「2ヶ月ぶりの更新のわりにはあまり話も進んでないし・・・ただでさえ、影の薄いキャラがいるにこれ以上増やしてどうするの?」

ネメシス「・・・・・ま、いつもどおり行き当たりばったりでなんとかするんだろ」

スパーン!!!!!

ネメシス「ご、ごふっ!!」

彩花「とりあえず、8月はSS以外のゾイド関連の更新をする予定なので長い目でみてやってください。ではまた次回ー」