ZOIDS Kanon Destiny EX

 

第5話「バーサークフュ―ラー」

 

 

 

先手を打ったのはあゆのバーサークフュ―ラー。

バスタークロー基部に装備されているビームキャノンを的確に連射していく。

「そのぐらいっ!」

浩平は、フリーラウンドシールドでビームを防ぎ、BFとの距離を詰めながらも、負けじと脚部のビームガンを撃ち返す。

もちろんあゆもそのぐらいは予想済みでバーニアを吹かし、ビームを避け、ブレイカーとの距離をとる。

2体とも並みの高速ゾイドを凌駕するスピードで戦場を駆け抜ける。

「逃がすかっ!」

ブレイカーの咆哮と共に背部に装備された計6機のスラスターが一気に臨界まで稼動する。

現存する陸上ゾイドとしては最速を誇るジェノブレイカーだ。

最新鋭機であるフューラーとの間合いを瞬く間に詰めていく。

しかし、あゆの表情に焦りはない。

それどころか薄ら笑いさえ浮かべていた。

不意にフューラーが足を止め、その顎を大きく開く。

「迂闊だね!こんな単純な手にひっかるなんてっ!」

一瞬の閃光。

砂塵を巻き上げ、荷電粒子の渦が一直線に向ってくるジェノブレイカーを包み込んだ。

そして閃光が収まったときジェノブレイカーの姿はなかった。

「これで終わり・・・・?随分あっけなかったね」

フューラーが辺りを見回すがブレイカーの姿は何処にもない。

{・・・!?」

が、地面に奇妙な影があるのに気付き、慌てて上を見る。

「え?」

あゆが見たのは迫り来る閃光。

つい先ほど自分の機体が放ったものと同じ光だ。

上空から放たれた光の渦がフューラーを確実に包み込む。

「単純なのはどっちだったかな?」

もちろん荷電粒子砲を放ったのは浩平のジェノブレイカーだ。

彼はフューラーの荷電粒子砲をあらかじめ予想し、砂塵に紛れて上空へとジャンプしていたのだ。

初めて相対した機体だが、そのフォルムから自分の愛機と同じような装備があることは容易に想像できていた。

ゆっくりと足場に着地するブレイカー。

浩平の目は油断なくフューラーのほうへと向けられている。

フル出力ではなかったとはいえ、荷電粒子砲をまともに喰らえばただではすまないはずだ。

あの状況で回避できたとは思えないが・・・・。

「ちっ・・・・あれで決まるとは思ってなかったけどな・・・・」

舞い上げられた砂塵が収まり、その光景に浩平は舌打ちをする。

中から姿を表したフューラーは無傷だった。

ドリルの形状だったバスタークローが展開し、それが光を放っていた。

言うまでもないEシールドだ。

「ふぅ〜っ、さすがにびっくりしたよ。シュンくんの言うとおりやっぱり油断はいけないね」

あゆは額の汗を拭うとその表情を引き締める。

「ここからはボクも本気で・・・・・いくよっ!」

バスタークローを収納し、スラスターを作動させる。

ブレイカーが放った2発目の粒子砲を危なげなくかわし、接近していく。

「今度は接近戦か?いい度胸だな・・・・・ブレイカーに接近戦を挑むとは・・・」

格闘性能を引き上げたジェノブレイカーに接近戦を挑める同クラスのゾイドなどほとんど存在しない。

浩平もフューラーに合わせて真っ向から突進していく。

2機の機獣の激突。

辺りに響いたのは甲高い金属音。

「な・・・・にっ?」

驚愕の声を上げたのは浩平だった。

フューラーのバスタークローが甲高い音を上げ、フリーラウンドシールドを貫いていた。

「ちっ!!」

ビームガンを撃って牽制し、すぐにフューラーとの距離をとるブレイカー。

反射的に機体を逸らしたおかげで、本体へのダメージはほとんどないが、左のフリーラウンドシールドには

しっかりとバスタークローによる穴があいていた。

「まさか、フリーラウンドシールドをこうもあっさり破るとはな・・・・・」

そうは言うものの浩平の表情に焦りはない。

それどころかこの状況を楽しんでいるかのようにも見えた。

あのデススティンガーとの戦闘以来久しぶりに手ごたえのある相手と戦えるからだ。

「いくぜ・・・・・」

浩平は誰とも無く・・・いや、おそらくは自分自身とブレイカーに向けて呟き、操縦桿を握り締める。

荷電粒子砲で牽制。

そして再び接近戦を挑むべく、突撃をかける。

「学習能力がないの?またバスタークローで貫くだけだよ」

荷電粒子砲をかわしたあゆはビームキャノンを撃ちながら浩平のやり方に呆れたような表情を浮かべる。

「やられた分はきっちり返さないといけないだろ?」

そして再び激突するエクスブレイカーとバスタークロー。

「うそっ!?」

驚愕の声を上げたのは今度はあゆだった。

一度は貫いたフリーラウンドシールドをバスタークローは貫けず、受け流されていた。

無傷・・・という訳ではなく、シールドには傷が刻まれているが、それは文字通りかすり傷という程度だ。

バスタークローがシールドに激突する瞬間にタイミングと角度を調整し、受け流したのだ。

並みのパイロットができる芸当ではない。

ブレイカーと一心同体になった浩平ならではの神業だ。

「さぁ、反撃開始だぜ!!」

エクスブレイカーが展開し、フューラーへと襲い掛かる。

「うぐぅっ!!」

フューラーもバスタークローを展開し、それを防ぐ。

「続けていくぞっ!!」

左右のエクスブレイカーの連撃。

「わ、わ、わ、わっ」

フューラーはそれを防ぐのに手一杯で反撃どころではない。

少しづつ後退していくフューラー。

もはや完全に浩平のペースだ。

「そろそろ決めるぜっ!!」

浩平はエクスブレイカーの攻撃に加えて頭部のレーザーチャージングブレードを振り下ろす。

フューラーの顔の装甲が削り取られる。

フューラーの動きが一瞬止まる。

その隙を逃がさずブレイカーの腕がフューラーを掴み、顎を開く。

牙で首を食いちぎろうとしているのだ。

「このー――――っ!!!!」

その時フュ―ラーの口内で荷電粒子の光が収束しているのを浩平は見た。

――――マジか!?

刹那の瞬間、浩平はフュ―ラーのパイロットの正気を疑った。

こんな密着状態で荷電粒子砲を撃てば、自分も大きなダメージを受けるのを免れない。

放たれた閃光。

閃光が収まったときには2体のゾイドは互いに離れていた。

だが、その姿は共に満身創痍。

バーサークフュ―ラーは機体の随所に細かい傷を負っている。

一方のジェノブレイカーは左のエクスブレイカーを消失していた。

あの瞬間とっさに回避行動を起こしたのだが、あの距離では完全に回避することはできなかったのだ。

互いに無傷ではないが、先ほどまで優勢だった浩平のほうがダメージが大きいのは一目瞭然。

浩平はすぐに今の状況を整理する。

格闘能力はほぼ互角だが、こちらは左のエクスブレイカーを失っていた。

火力はこちらが上回っているようだが、向こうにはEシールドがある。

――あの武器はやっかいだな。

浩平は知らず知らずのうちに舌打ちしていた。

機体のパワー、機動性はほとんど互角。

火力は多少上回っているようだが、それ以上にバスタークローが厄介だった。

フリーラウンドシールドを貫くバスタークロー。

更にビームキャノンとEシールドまで兼ね添えた代物だ。

――先にアレを潰しとくべきだったか・・・・。

そこまで浩平が思考したとき、

「流石は魔装竜だね。こんなに追い詰められるとは思わなかったよ」

通信機から発せられる少女の声は素直に賞賛しているようだ。

だが、次の言葉はその雰囲気ががらりと変わっていた。

「・・・・でも、もう遊びは終わりだよ」

その声は冷たく人間味を感じさせなかった。

ブレイカーが低く唸る。

何時の間にか周りを小型のゾイドに囲まれていた。

周りを囲んでいるゾイドはそれぞれカマキリ型、ディロフォサウルス型のようだ。

その数は30を下らない。

浩平の見たことの無いゾイドばかりだ。

――ひょっとしたらこいつ等がここ最近の事件の原因か?

だが、今はそんなことを考えている場合ではなかった。

目の前のゾイドだけでも苦戦を強いられているのにこの数に囲まれていては・・・・。

「やるしかないか・・・・・・・」

そしてジェノブレイカーは咆哮とともに敵の中に突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

予告

佐祐理「ふぇ〜、折原さんピンチですね」

舞「はちみつクマさん。でも・・・・きっと彼ならなんとかする」

佐祐理「うん、祐一さんのライバルだもんね。きっとなんとかなるよ」

舞「次回、ついに敵の部隊の名前が判明する・・・・」

佐祐理「ほとんどの人が予想ついていると思いますけど」

舞「次回、ZOIDS Kanon Destiny EX 第6話「鉄竜騎兵団」」

 

 

 

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え〜これ書いている間中、常にハピレスのOPが流れてます(爆)