リリカルブレイカー

 

 第11話 『友達になりたいんだ』



「な、なんてことしてんの!あの子達!」

 管制室に飛び込むと同時にエイミィさんの悲鳴じみた声が上がる。モニターに映し出されているのは、荒れ狂う海上で奮闘するフェイトの姿。
 竜巻のように立ち昇る水流と幾筋も煌く雷の閃光。
 うわぁ、こりゃすげぇや。台風も目じゃないね。

「ジュエルシードの反応は6つ!」

 海中にあると思われるジュエルシード探索のために、海に雷撃を撃ち込みジュエルシードを強制発動させる。海に沈んだジュエルシードを見つけるのにその方法は間違いじゃない。
 例え海に魔法で潜れたとしても、石ころ程度の大きさしかないジュエルシードを探す出すなんて不可能に近い。
 問題は残ったジュエルシードが複数あること。一個一個ならばともかく、六個のジュエルシードを同時に封印するなんて離れ業はフェイトの力量を持ってしても不可能だ。
 ましてや強制発動のために、この広い海全域に強力な雷撃を撃ち込んで魔力の大半を消耗しているはず。
 その証拠にフェイトは封印どころかジュエルシードの暴走によって生じた雷や突風、巻き上げられた水流に一方的に翻弄されていた。

「なんとも呆れた無茶をする子だわ」
「母親に認められたい一心ですからね。無茶も限界も考慮にないんでしょう」

 リンディさんが呆れるのももっともだが、フェイトからすればどんな無茶でも無理な事だろうと、母親が望むならやり遂げるしか選択肢がない。
 少なくとも今のフェイトにとって、母親の為に生きるのが全てなのだから。

「……そうね。あなたの話した事が事実なら、あの子はどんな無謀なことでも挑んでしまうのでしょうね」

 母親として、プレシアのフェイトに対する扱いには忸怩たる思いがあるのだろう。いつも明るいリンディさんの声は何時に無く重い。

「でも、あれじゃ間違いなく自滅します。あれは個人に為せる魔力の限界を超えている」

 実際、クロノの言うとおりバルディッシュから放たれる魔力刃の光も明滅して今にも消えてしまいそうだ。
 アルフがサポートしているとはいえ、ジュエルシードの封印どころか十数分持ちこたえられるかすら怪しい。

「フェイトちゃんっ!」

 そこに息を切らしたなのはが飛び込んでくる。エマージェンシーコールを聞いて、急いで駆け込んできたんだろうけど第一声がそれか。

「あの私、いそいで現場にっ!」
「その必要はないよ。放っておけばあの子は自滅する」
「えっ?」
「仮に自滅しなくても力を使い果たしたところで叩けばいい」
「で、でも……っ」
「今のうちに捕獲の準備を」

 クロノの言葉になのはは戸惑いを隠せない。クロノの言ってることは正しい。漁夫の利と言ってしまえば聞こえは悪いかもしれないが、現実の問題として、最小限のリスクで最大の成果を出すにはそれが一番だ。
 奇麗事や感情論だけで通らないのが大人の世界なのだ。

「私たちは常に最善の選択をしなければならない。残酷に見えるかもしれないけどこれが現実」
「でも……」

 とはいえ、ただの小学三年生の女の子でしかないなのはにそれがすんなり受け入れられるはずも無い。
 なのはにとって、フェイトはただの敵じゃない。伝えたい想い、伝えたい言葉がある相手。
 正論で感情をねじ伏せるには、純真で優しく、そして幼すぎる。それが長所でもあるんだが。
 放っておいてもユーノと共謀して飛び出しちゃうんだろうけど駄目元で助け舟出してみますかね。

「とはいえ……」
「フェイトの背後にはプレシア・テスタロッサが控えてる」

 助け舟を出そうとしたらリンディさんの言葉を遮る形になってしまったでござる。あれ?
 周りの視線がこっちに集中して、ちょっと気まずい。リンディさんも視線で俺の言葉の続きを促している。
 やば、なんか踏まなくてもいい地雷踏んだ?内心で焦りつつも平静を装って言葉を続ける。

「プレシアがこちらに仕掛けてくる前に、先手を打つのも手じゃないですか?」
「プレシア・テスタロッサがアースラに攻撃を仕掛けてくると?」
「十中八九。次元攻撃を仕掛けてくる機を狙ってるかと」

 仮にフェイトの自滅を待ったとしても、次元干渉攻撃の直撃を受ければアースラと言えどもダメージは受ける。
 そうなった場合、フェイトらが逃走、もしくはプレシアに転送された場合の追跡はかなり困難になるはず。
 プレシアの情報をはっきりと掴んでなかった原作も、一時的な機能停止に追い込まれ、まんまとしてやられたはずだ。

「次元跳躍攻撃?そんなもの……いや、プレシアほどの大魔導師なら有り得ない話じゃないか」
「俺の話を信じてくれるなら、フェイト・テスタロッサは保護対象でしょ?こっちで確実に保護して話を聞くべきじゃないですか?」

 フェイトが実行犯であることに変わりは無いが、それでも何も知らず、ただ母親の願いを叶える為だけに動いている彼女の事情を鑑みれば、被害者であるとも言える。
 フェイトの背後にプレシアがいると言う俺の話に確証が無い以上、管理局のような公的機関っぽいのがそれを鵜呑みにしての判断は厳禁だろうが、そこはリン ディさんの母性というか人情に期待。現場の判断でなんとかして貰いたい。アルフの協力があれば、ある程度の確証は得られるはずだけどもどうだろう。
 ……いや、いっそのことこの場でアルフを引き込めないか?

「え?え?え、と、何の……お話?」

 話についていけず、首を傾げるなのは。なのはにはフェイトの事情話してないから当然の反応だ。
 この子の場合、あまり知りすぎても深く悩んで動けなくなってしまうかもしれないので伝えていない。
 なのはもユーノもフェイトも何でもかんでも自分で抱え込む癖あるから面倒臭いんだよなぁ。もっとお気楽極楽で良いのに。

「お子様には内緒のお話だ」
「って、ゆーとくんも同い年だよっ!」
「残念。俺は九歳。なのははまだ八歳。俺のが一コ年上だ」
「それでも一コしか変わらないしっ!たった数ヶ月しか変わらないじゃんっ!」
「ふぅん。それでも俺のが年上であることには変わりない」
「なのは、落ち着いて。今はそれどころじゃないからっ」
「あっ、そ、そうだ。フェイトちゃんがっ!」

 ユーノに宥められてようやく今の状況を思い出したのか、またあたふたし始めるなのは。
 忙しないやっちゃのう。

「君もだ。今は遊んでいる場合じゃないだろう」

 コツンと頭を小突かれた。はい、誠にもってその通りでございます。

「なのはのせいで怒られたじゃないか」
「えぇっ、私っ!?」

 ジト目でなのはを見てると、難しい顔で考え込んでいたリンディさんが顔を上げ、なのはとユーノへ呼びかける。

「なのはさん、ユーノくん」
「は、はいっ!」
「今すぐ現場へ飛んでください。フェイト・テスタロッサと共同でジュエルシードを封印した後に彼女の身柄を確保。できますね?」

 一瞬、リンディさんの言葉に何を言われたのかわからず、きょとんとするなのはだったが、すぐに笑顔となって勢いよく頷く。

「はいっ!ユーノくんっ!」
「う、うん!」

 頷いたなのははユーノの手を引いて勢いよく転送ポッドへと駆け出す。

「ゆーとくんっ!」

 呼びかけられた声に言葉は返さない。ただ親指だけを上げた拳で応え、なのははそれに力強く頷く。
 頑張れ、主人公。

「クロノはいつでも出動できるよう待機。アレックス、ランディはアースラの対魔力防御。エイミィは彼女の逃走追跡の準備を」
「はい!」

 なのは達が転送される傍らでリンディさんはテキパキとクルーに指示を出し、各員それに従っていく。
 エイミィさんたちはともかく、クロノまでもが何も反論せずに従うのはちょっと意外。リンディさんの指示に逆らったりはしないだろうけど、何かお小言っぽいのは出ると思ったのに。

「これで満足かしら?」
「……もしかして、最初からそのつもりでした?」

 にっこり笑顔なリンディさんに背筋が寒くなったのは気のせいだと思いたい。

「想像にお任せするわ。少なくともフェイト・テスタロッサの背後関係がはっきりしてなければ、さっきの言葉通りに行動したのは間違いなかったでしょうし」
「でも、プレシアが背後にいるっていう確証は取れてませんよね?」

 俺の話で裏づけが取れたのはプレシアが人造生命の研究をして姿を暗ましたってことくらいだろう。
 今の段階ではフェイトのバックにプレシアがいるという確証は何も取れてないはずだ。

「管理局提督としては間違った判断かもしれないわね。でも、あなたの話が真実だとしたらあの子は少しでも早く保護してあげたい。例え母親から引き離す形になっても、ね」

 物憂げに呟くリンディさんの横顔はどこまでも優しく、それでいてどこか複雑そうな表情だった。
 モニターに目を戻すと、ちょうどなのはがフェイトに魔力を分け与えている。
 二人できっちり半分こ、か。

「なのはさんの想い、あの子に伝わるといいわね」

 呟かれた言葉に静かに頷く。できれば俺もあの場に行って力になりたいところだけど、如何せんまともに空も飛べないんじゃどうしようもない。
 俺に他にできることは、と。

「ちょっと通信したい奴いるんですけどいいですか?」












「あー、テステス。アルフさん聞こえますか〜?」

 ちゃんとリンディさんに許可を貰って、フェイトに聞こえないようアルフに通信を送る。
 ネタに走ろうかと思いつつ、とっさに良いネタが出てこない自分の懐の狭さが悲しい。

『あ?アンタ誰?』

 なのはに飛び掛ってユーノに遮られたアルフさんはご機嫌斜めでした。

「や、前にフェイトと一緒にご飯食べて、こないだレッドアイズなドラゴンになっちゃった通りすがりの小学生です」
「……一体、何をやってたんだ君は?」

 クロノが呆れた声で突っ込むが、俺にもよくわからないうちにそうなってたんだから答えようが無い。
 それはともかくとして。

『今、忙しいんだっ!話なら後にしなっ!』
「プレシアからフェイトを引き離すのに協力しない?」
『……!?』

 再度ユーノに飛び掛ろうとしたアルフの動きがピタリと止まる。

「フェイトがプレシアの命令で動いてることも虐待されてることも知ってる。このままプレシアの元にいてもフェイトは幸せにはなれない。アルフもそう思ってるんだろ?」
『…………』

 アルフからの返答は無い。狼形態だから表情は読めないが、逡巡してるのは間違いないはず。

「俺はフェイトを助けたい。普通の女の子として友達と笑って、遊んで、幸せになってほしいと思う。その為には今の状況をなんとかしないといけない」

 嘘偽りの無い本当の気持ち。フェイトがどんなに良い子で、今まで、いや今も苦しんでいることを知ってる。そしてフェイトがちゃんと笑える未来があることも知っている。それを一分一秒でも早く実現させたい。

『……なんでアンタはフェイトのことをそんなに気にかけてくれるんだい?一体、何の得があって?』
「なんでって……」

 なんでだ?フェイトが良い子だから?可哀想だから?将来、有望な可愛い子だから?未来を知ってるから?
 全部当てはまる気もするが、なんかしっくり来ない。う〜ん、そうだなぁ。

「友達……だから?」
『……あんたが?フェイトの?』

 うわぁ。まるで信じてねぇし。

「ま、フェイトはそう思ってないだろうけどさ。俺は勝手にそう思ってるよ。一緒に飯食えば友達になる理由には充分。と、いうか可愛い女の子を助けるのに理由はいらんわっ!」

 って、そこまで言って思ったけど、別に誰かを助けるのに理由っていらなくね?どっちかっていうと条件反射的にそう思ったから行動しただけだし。
 そもそも古今東西、可愛い女の子を助けるのは当然のことだね!

「まぁ、それは置いといて、今のプレシアは正気を失ってる。このままフェイトが尽くしてもそう遠くないうちに必ず捨てられる。管理局に協力かつ、色々証言してくれればフェイトの無実は証明できる」
『それ、本当かい?』
「横にいるクロノ執務官様に確認したから大丈夫。裁判やら何やらで半年くらいかかるけど」

 そこら辺は念のため、事前にクロノやリンディさんに確認済みだ。あくまで俺の言ったことが全て事実なら、という前提だが。

「あくまでフェイト・テスタロッサがプレシア・テスタロッサの目的を知らず、命令のままに動いているという前提だがな」
『あたし達はジュエルシードを何のために使うのかも知らされていないし、ただ集めて来いって言われただけさ。あの女の目的なんか知りやしないよ』

 クロノの補足に答えるアルフは苦々しく答える。必死こいてジュエルシード持っていった結果がフェイトの虐待だったのだから当然か。
 あー、思い出したら俺までむかついてきた。プレシアの境遇には同情するが、やってることにはさらさら共感できない。ぜってぇ、プレシアの思い通りにはさせてやんね。

『あんた達を信じていいのかい?』

 アルフの問いに俺は力強く頷き、自信満々に答える。

「おう、まかせろ。このクロノ執務官様が全部解決してくれる!」
「人に丸投げかっ!おいっ!」
「や、だって俺執務官じゃないし。大丈夫、大丈夫。クロノくんって愛想は無いけど実は優しいから」
「勝手なこと言うんじゃないっ!」
「あはは、本当のこと言われたからって照れない照れない♪」
「うるさいっ!」

 エイミィさんに怒鳴るクロノくんだが、その顔が赤くなっててはまるで威厳がなかったりするわけで。

「って、何撮ってるんだ、おいっ!」
「や、もちろん面白そうだから。あとでなのはとユーノにも見せてあげようと思って。ふひひ」

 こういったときの為に、デジカメはあらかじめ持ち込んでいる。エイミィさんと共謀して密かに録画もばっちりだったするのは秘密だ。

「なんで君はそういうくだらないことだけは手が込んでるんだっ!」
「才能?」
「そんな才能は捨ててしまえっ!」
『……あんたたちを信用して本当に大丈夫かい?』

 小さく呟くアルフはとても不安そうだった。





 なんておバカなやりとりをしてる間に、向こうもクライマックスのようだ。
 ユーノとアルフがバインドで立ち昇る水流を抑え、なのはとフェイト、二人のデバイスがシーリングモードへと変形していく。
 レイジングハートが。
 バルディッシュが。
 それぞれが桜色と金色の魔法陣を形成し、強く、激しく、輝きを増していく。

『せーのっ!』
『サンダァァァァァァッ!』
『ディバイィィィィンッ!』

 二人が構えるその光景に、無意識のうちに拳を強く握り締める。あー、くそ、かっけぇなぁ、二人とも。
 この光景を知っていてなお興奮を抑えきれない。
 ただ見てるだけじゃない。俺もあいつらと同じ場所に立ちたい。もっと……もっと、強くなりたい。

『レイジィィィッ!!』
『バスタァァァッ!!』

 なのはのディバインバスター・フルパワーとフェイトのサンダーレイジが同時に炸裂する。
 桜色の閃光が迸り、無数の雷が降り注ぎ、モニターが閃光の輝きに包まれる。

「ジュエルシード6個全ての封印を確認しました!」
「な、なんて出鱈目な……!」
「でも、凄いわ」

 たったの一度の攻撃でジュエルシード6個全てを封印。あんだけ荒れ狂っていた嵐が嘘のように収まり、雲の隙間からは太陽に光が差し込んでいる。
 まー、たしかに今の攻撃は圧巻の一言につきる。
 攻撃の余波で舞い上がった海水が雨のようにしたたり落ちる中、なのはがゆっくりとフェイトに近寄っていく。

『友達に、なりたいんだ』

 背景と相まってある意味、感動的な光景なんだけどもさ。

「あれ?ゆーとくん、なんか顔色悪くない?大丈夫?」
「いや、ちょっとトラウマが……あはは」

 少し前の出来事を思い出し、思わず目頭を押さえてしまう。
 俺、アレより凄いのを前にモロに喰らってたんだよね。ジュエルシードの暴走に取り込まれてたとはいえ、よく無事だったんもんだ。今更ながらにぞっとする。
 そしてしみじみと思う。なんで俺生きてるんだろ?
 なんてことを思った次の瞬間、アースラのモニターが警告を告げる真っ赤な画面に切り替わり、警報が鳴り響く。

「次元干渉!本艦及び戦闘区域に向けて魔力攻撃来ます!」
「来たかっ!」
「アースラ対魔力防御を出力全開っ!」
「なのはっ!フェイトッ!アルフっ!ユーノ!上空から魔力攻撃が来る!全力でガードっ!」
「着弾まであと6秒!」

 プレシアからの次元跳躍攻撃がアースラ、そしてなのは達を襲う。
 エイミィさんの報告に即座にリンディさんが指示を出し、俺はなのは達へと警告を発する。
 だが、アースラへの攻撃はこちらの読みどおり。リンディさんの指示を待つまでも無く、警戒態勢にあったアースラの対魔力シールドが発動し、その攻撃を防ぐ。
 が、その衝撃の全てを吸収しきれず、ブリッジも振動に大きく揺れ、俺も体勢を崩して膝を突く。

「おわっ、とっ!?……って、フェイトッ!」

 アースラが振動に揺れる中、モニターに映し出される光景に思わず声を出す。

『母さん……?』

 フェイトを除いた面々は俺の警告と空に発生した異変に、すぐに防御魔法を発動させるがフェイトは事態を飲み込めず、何のリアクションも起こしてない。
 頭上に発生した紫の雷光にただうろたえてるだけ。
 次の瞬間には紫電が奔り、なのは達へと降り注ごうとしている。フェイトやアルフをもターゲットとして。

『フェイトォッ!』

 アルフがフェイトの元へと飛ぶが距離があり過ぎる。間に合わない。

『フェイトちゃんっ!』
『!?』

 フェイトへの降り注ぐ雷撃に事態を察したなのはが飛び込む!

『あああああああぁっ!!』
「なのはっ!」

 自ら雷撃に飛び込む形となったなのはがフェイトの身代わりとなって、雷をその身に受ける。
 あのバカ……っ!
 雷撃のショックで意識を失ったのか、なのははそのままぐったりとして動かない。
 デバイスだかバリアジャケットのセーフティの一つである自動浮遊機能のおかげで落下はしていないが、ピンチには変わりない。
 ユーノとアルフは自身の防御で動きが取れない。

「クロノっ!」
「わかってる!けど、今の攻撃を防いだ余波で転送に若干のラグが生じるっ!」

 返ってきた答えはあまり良いものじゃない。やべ。なんか俺の知ってる展開となんか違ってきた。

『さぁ、フェイト……その子の杖ごとジュエルシードを奪いなさい』
「この声は……」

 アースラが拾ったフェイトへの念話。声の主は間違いなく。

「プレシア・テスタロッサ……っ!」

 ヤバイ。このままじゃ全部のジュエルシードが持っていかれる。どうする。どうすればいい。

『か、母さんっ、でもっ!』

 プレシアに命じられたフェイトだが、さすがに抵抗があるらしくすぐには実行に移せない。
 ただ戸惑いの表情を空へと向けるだけだ。
 このタイミングなら……間に合うか?

『なのはっ!』
『フェイトッ』

 フェイトが躊躇してる隙にユーノとアルフが二人の下へと駆けつける。

『…………フェイト、あなたは本当に使えないわね。もう、いいわ』
『母さん……?』
『フェイトッ!』


 フェイトの呟きに対する返答は紫電の閃光。
幾筋もの雷光が収束し、フェイトへと降りかかる。

『ああああああぁぁぁぁっっ!!』

 アルフがフェイトを庇うようにシールドを張るが、プレシアの雷撃はそれすらも貫いて二人に降り注ぐ。

『くっ!』

 ユーノは気絶したなのはを庇うだけで手一杯。
 バルディッシュは砕け散るようにして待機状態に戻り、フェイトも気を失う。
アルフのほうは辛うじて意識があるようで、フェイトを慎重に抱きかかえている。

「って、ジュエルシードがっ!?」

 先ほど封印したばかりの6個のジュエルシードが空中に吸い込まれるように消えていく。
 プレシアの物質転送魔法か。

「大丈夫っ!ちゃんと捕まえてるよっ!」

 流石。こういうときのエイミィさんは頼もしすぎる。
 ジュエルシードの物質転送を逆探知し、プレシアの本拠地座標を即座に割り出している。

「武装局員。転送ポッドから出動!任務はプレシア・テスタロッサの確保です!」





■PREVIEW NEXT EPISODE■

遂に姿を現したプレシア・テスタロッサ。
明かされるフェイト出生の秘密。
全てに決着を着けるため、魔導師たちは時の庭園へと挑む。

クロノ『作戦は一刻を争う』

 

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UP DATE 09/7/10

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