Memories Off Another

 

第50話

 

 

 

 

 

 

登波離橋で待つこと数分。

約束の時間ちょうどに智也はやってきた。

「なんだよ、いきなり呼び出して?」

用件も言わずに呼び出されたのだから智也はとっても不機嫌そうだった。

「悪い。急ぎで大事な話だったんでな。俺にとっても、お前にとっても――――」

俺の声色と表情に、智也も何かを感じ取ったのだろう。

その表情が訝しがりながらも真剣なものへと変わっていく。

「下で話そうか」

そう言って俺は橋の下に流れる嘉神川へと歩き出した。

 

 

登波離橋の下で俺と智也は向き合う。

「結論から言うな」

くどくど能書きをたれる趣味はない。

俺は核心から話すことにした。

「俺は桧月に告白した」

「・・・は?」

智也の目が点になる。

あいつにとっては予想もしなかった言葉だろう。

絶句したまま立ち尽くす。

うん、予想通りの反応ありがとう。

俺は内心で苦笑しつつ、もう一度だけ同じ言葉を繰り返した。

「俺は桧月に告白した」

短い沈黙の後、ようやく智也が口を開く。

「・・・彩花はなんて答えたんだ?」

今度の苦笑は内心だけでなく、実際に口元から零れてしまう。

あいつの答えなんて聞くまでも無くわかってるだろうに。

「答えは聞いてない。今のあいつの答えなんて聞くまでも無いからな」

智也の表情は変わらない。

ただじっとこちらを見つめてる。

「おまえだってわかってるはずだろ?桧月の気持ちなんて。わかってないなんてほざいたら本気でぶっとばすからな?」

「・・・そうだな」

数瞬の後、智也はかすれた声で呟く。

「桧月だけじゃない、今坂の気持ちだっておまえは知ってるだろ?」

静かに智也の瞳を射抜く。

誤魔化しや冗談などで答えをはぐらかすことは許さないという意味を込めて。

「・・・・・・」

智也は沈黙を持って答える。

「二人の気持ちを知った上で、おまえはどうしたい?ずっとこのままの関係でいられると思ってないだろ?」

「・・・お前はなんで結果がわかった上で告白できたんだ?」

智也の質問を鼻で笑う。

「そんなもん決まってる。決着を着けたいからだよ。今のあいつに俺が何したってあいつの気持ちは変わらない。お前との関係がはっきりするまでは、な」

そう。誰のためでもない。

「癪なことこの上ないが、お前が答えを出さない限り、俺にはどうしたってチャンスなんてない。だから動いた」

これは俺自身のエゴ。

「桧月も今坂もずっとお前の答えを待ってるんだ。お前だってわかってるだろ?」

智也の表情が苦いものを含んだように歪む。

「俺にできるのはお前らを追い詰めて今の関係を変える・・・いや、はっきりさせるってとこかな?

「俺は・・・」

「ってゆーかっ、お前が答えださないと俺にチャンス回ってこねーんだよっ!だからとっとと選べっ!」

びしっと智也を指差す。

指を突きつけられた智也は呆然と俺を見返し、

「あぁっ?なんでおまえにそんな偉そうに言われなきゃなんないんだよっ!」

思いっきり怒鳴り返してきた。

「俺が見ててイライラするからだ、ボケーッ!!そもそもシリアスで説教するなんて俺のキャラじゃねーんだよっ!」

「逆切れかよっ!?」

「文句あるかーっ!!」

「大アリだっー!!」

俺と智也の叫びが響き渡る。

「真剣な話してたくせにいきなり茶化すなーっ!!雰囲気台無しだろがっ!

智也の言い分はもっともだろう。だが、俺にも理由がある。

「男同士で雰囲気なんか知るかーっ!こちとら桧月んときからシリアスやってて、いい加減飽きたんじゃーっ!」

智也はひきつった顔でこめかみを指で押さえる。

「おまえとまともに話そうとしたオレがバカだったのか・・・?」

「お前がバカなのは今さらだろ」

俺は思いっきり深いため息をついた。

「シリアスに飽きたとか言うやつに言われたくねー」

心底疲れたように肩を落とす智也。

「まぁ、とりあえずは、だ」

そろそろ話を戻さないといつまでも脱線しかねない。

「桧月だけじゃなく、信も今坂に告白してるはずだ」

「何?」

はじかれたように顔を上げる智也。

「今坂と桧月どっちかが告白された状態だとお前は告白された方に傾きそうなんでなー。せっかくだから信も巻き込ませてもらった」

ニヤリと笑みを浮かべる。

「まぁ、あいつも告白したところで玉砕したのは間違いないだろうけど」

「・・・おまえ、笑顔でそういうこと言うなよ?外道だな」

ジト目で視線を送ってくる智也。

「お褒めに預かり恐悦至極」

それに対してしっかりと悪の笑みを返すことは忘れない。

「褒めてねぇって」

げんなりとした声が返ってくる。そろそろ智也も疲れてきたようだ。

「それはさておき、俺としては八つ当たりの意味で拳で語り合いたくもあるんだが・・・

「八つ当たりかよっ!?物騒だな、おいっ!」

そろそろ智也の突っ込みレベルがレベルアップしそうな勢いだ。

「ああ、そうそう」

俺は智也に渡すものがあったのを思い出して鞄の中を漁る。

「スルーかよっ!」

「ほい、餞別だ」

智也の突っ込みは無視して二枚のチケットを差し出す。

差し出されたそれを訝しげに見つめる智也。

「なんだよ、これは?」

「遊園地のフリーパスだ。見てわからんのか」

頭だけじゃなく目まで悪くなったのだろうか?

「そうじゃなくて何でそんなものオレに渡すんだよ?」

「はぁ〜〜〜〜〜〜〜っ」

やれやれ、と深い深いため息をわざとらしくついた。

「それ使ってお前が選んだやつ誘えって言ってるんだよ、ド阿呆」

「あ?」

「期限が今月一杯なんでな。どーせ、俺が持ってても誘う相手いないし、お前使え」

そう。桧月が誘えないなら俺が持ってても仕方の無いものなのだ。

智也が桧月と今坂どちらを選ぶかは知らないが、使えないものを持ってても仕方ない。

「俊・・・」

「お前が桧月を選んだとしても流石に一ヶ月以内で奪えるとは思えんしなー」

「おいっ!!」

俺の呟きに激しく反応するバカ。

「なんだよっ?」

「お前はアレかっ!?俺が彩花を選んだ場合、親友の彼女を口説くつもりだったのかっ?

激昂する智也に俺は呆れたように返す。

「当たり前だろー?俺が誰を好きになろうと自由だし、親友の彼女だろうと諦める理由にはならん」

「いや、常識的に考えて諦めるだろ、そこは?」

フッと智也の言葉を嘲笑う。

親友を自称する割にはまだまだ俺のことを知らないな。

ぽんっと智也の肩に手を置く。

「バカだなぁ、智也」

にっこりと笑みを浮かべ、

「欲しいものを手に入れるためなら俺は神をも超え悪魔を倒すっ!!

魔神○帝かっお前はっ!?

「はっはっはー、それはともかく、だ」

ぎゅっと智也の肩に置いた手に力を籠める。

「きっちり、答え出してくれ。おまえ自身の為だけじゃない、桧月や今坂、信の為にも、な」

「・・・あぁ」

智也は真剣な面持ちで、力強く肯いた。

 

 

 

「・・・・・ま、お前が桧月選んでも、いつか絶対俺が奪い取るけどなっ」

「さわやかな笑顔で物騒なこと言うなぁぁぁぁっ!」

智也の叫びが夕焼けに響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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Up DATE 07/12/17


と、いうわけで智也挑発編は以上となりましたー。

前回アンケートの結果なんですけど、てっきり俊一の相手は詩音が圧勝かなー、と思ったら意外や意外、彩花と詩音がほぼ同数でびっくりですよ。

前は俊一×詩音派が圧倒的だったと思うんですけど、彩花派の人も増えたんですかねー?

冬コミ原稿コピー本になった挙句、まだ終わってません・・・orz 彩花×智也漫画に思いのほか時間取られた・・・。

>久しく覗いておりませんでしたが2話も更新ですか!
>なんとも先が楽しみな展開になりまして、とても嬉しい限りです^^
>智也が誰を選ぶか、それは私には判らないことではありますが、俊君には彩花と結ばれて欲しいと強く願っております。
>更新頑張ってください^^
その代わり2ヶ月近く空いてしまいましたorz
俊君が誰と結ばれるかはまだ先ですけど期待を裏切らないように頑張りたいと思います。

>俊一の気遣いがすごいなぁ〜と感心した
俊君の頭の9割は彩花のことだけですからw

>頑張って
ういっす。冬コミ原稿もSSも頑張りますです。

>この作品の主人公カッコいいですね。私的にはこれ以上はないんじゃないかって言うくらいに最高です。そしてシチュエーションもいい!主人公の想い人には別の好きな人が!っていうのも感情移入できていいですwこの作品では信も完全燃焼できそうですしねw
>主人公のCPとしては、詩音か静流がいいなぁと私は思いますwそれぞれ1と2の中で一番好きなキャラなので。あっでも2は鷹乃かなぁ・・・。
>まぁそれはどうでもいいか^^;長くなりましたが、続き楽しみにしています。がんばってくださいw
お初&感想ありがとうございますー。SSでのオリキャラは賛否両論あると思うのですが、気に入っていただけたようで何よりです。
鷹乃は詩音との絡みでイベントこなしたいなぁ、と思いますが時系列がそこまでいくかどうか・・・(汗

>桧月さん気づいて無かったんですか!!かなり驚きました
>あ・・でもこれはこれで面白いかも・・うんうん(笑
>告白シーンはちょっぴり台詞つきで聞いて見たいくらいよかったですよ
>イラストシーンは第1話の俊君の目覚めのシーン
>次は俊君から彩花への告白シーン
>第3希望は悩んでんですけど25話のルサックに5人が押しかけてきて片瀬さんの前で俊君が膝を付くシーン(他でもルサックならOKで)
>PS:冬コミがんばってくださいね
桧月さんは智也以外は今のとこアウトオブ眼中でしたからー。
実際にこんな告白したら俊くんのように絶対後で悶絶しそうですがw。
アナザーのイラスト候補応募ありがとうございます。
今回の本では結局見送っちゃったのですが、来年中に一冊は出したいと思っていますので、その時は宜しくお願いしますw

>すごく面白いです、更新が再開されてとても喜んでいる所存であります。
また更新空いてしまってごめんなさい。年内にもう一回くらいは更新したいと思ってますので今後ともよろしくお願いします。

>メモオフのオリキャラ主人公作品は非常に数が少ないので頑張ってほしいです。
オリキャラ自体が受け付けない人もいるでしょうからねぇ・・・。
何はともあれ頑張りたいと思います。