Memories Off Another

 

第40話

 

 

「どう、詩音ちゃん?俊くんの制服姿は?」

俺が注文を取りに行った桧月の第一声がこれだ。

毎度毎度、どうしてこいつは俺と双海をくっつけたがるかね?

くそぅ、今に目に物見せてくれるわっ!

「え?どう・・・と、言われましても・・・」

きょとんと俺の姿を見つめる詩音。

「どうもこうもあるか、ドアホ」

軽くコツンと手にしたトレイで桧月をどつく。

「いったーい!何もぶつことないじゃないっ!」

「アホなことばっか言ってるからだ。智也のアホが移ったか?」

「移るか、バカ」

すかさず智也から反論が来る。

「そうか、おまえの反論するところはそこか」

自分がアホだっていう自覚はあるらしいな。

「・・・ぷ、あははっ。やっぱり二人ともいい漫才コンビだね」

音羽さんが笑いをこらえられずに吹き出す。

それにつられるように智也と俺を除く面子が笑い出した。

「あははっ、智ちゃんは誰とでも仲良くなれるからね」

「で、俊くんは誰に対しても突っ込めるもんね?」

ドッとまた笑う一同。

「おまえらなぁ・・・・・」

「何でもいいからさっさと注文しろ」

時間が時間だけにまださほど忙しくは無いがやることはそれなりにある。

そして何よりこの多勢に無勢な状況は色々面倒なことになりそうなので早めに撤収するに限る。

「あ、じゃあ、私はダージリンティーを・・」

開口一番双海がメニューの写真を指差して言う。

こいつも妙なとこで学習してないな。

「やめとけ。いつぞやの二の舞だぞ。ファミレスの紅茶なんて自販機のと大差ないからな」

以前の双海の顔を思い出しながら忠告する。

前行った店の紅茶で65点ならばここの紅茶なんて赤点レベルだろう。

・・・・・・・忠告無しで飲ませたら罰ゲームっぽくてそれはそれで面白かったかもしれないが。

「あ、そうなんですか・・・」

傍目に分かるほどがっかりする双海。そんなに紅茶好きなのか、おまえは?

「なになに?いつぞやの話って何のこと?」

ここぞとばかり身を乗り出す今坂。

「注文が終わってから双海に好きなだけ聞きだせ」

「ぶぅ、俊くんつれないよ〜」

「いつものことだから諦めろ」

「そうそう、愛想振りまいてる俊なんて気持ち悪いだけだろ」

「その言葉、そのまま返す」

「・・・うん、確かに智也が愛想振りまいてたら気持ち悪いかも」

「くっ・・・」

再び笑いに包まれるこの一画。

いいから早く注文しろと言うに。

 

 

 

ふぅ、なんでオーダー取るだけでこんな疲れて時間かけなきゃならんのだ。

「相変わらず楽しそうなお友達ですね」

くすりと、笑いながら言うのはお馴染みの片瀬さん。

「あー、楽しいっていうか、うるさい?」

そして疲れる。

「また人数増えてませんか?」

片隅を占拠するやかましい集団をむー、と唸りながら眺める片瀬さん。

「あぁ、なんかまた一人増えた。なんでかは聞くな。俺も知らん」

「天野くんの友達って、可愛い子ばかりですよね・・・・・・」

「んー・・・まぁ、そうかな」

少なくともここに集まってる面子はみんな美少女ぞろいだ。

まぁ、この際、性格は置いといて。

「むー」

しかし、この子はさっきから何をむー、むー唸ってるんだろう?

「一応、その友達に片瀬さんも含まれてるからな」

「あ、はい・・・・・・って、え?え?」

あ、面白いくらい動揺してる。

「え、あ、そ、わ、私なんて別に・・・・、あ、その」

おぉぅ、顔が真っ赤にして慌ててる。

・・・・・やっぱ片瀬さんも面白い子だよな、うん。

片瀬さんもかなり可愛い部類に入るんだけど、やっぱ本人にその自覚はないんだなぁ。

ま、照れるから面と向かっては言わないけど。

「ハイハイ、落ちつこーね」

ぽん、ぽんと片瀬さんの頭を叩く。

「うー、わたしのことからかってませんか?」

片瀬さんは真っ赤な顔のまま上目遣いににらんでくる。

むぅ、こういう可愛いところを見せられるともっといぢめたくなるのが俺の性よのう。

「全然、そんなことはないぞ」

と、言いつつ、頭を撫でる。

「・・・子供扱いしてます」

「そんなことないぞ?」

「目が思いっきり笑ってるし、口がにやついてます」

あ、だんだん目つきが険しくなったきた。

「大丈夫だ。目が笑ってても口がにやついててもさっき言ったのは嘘じゃないから」

「・・・・・うー」

お、トレイで顔隠した。

ふむ、あんまりいぢめすぎるのもアレだからこの辺りで許してあげるか。

「っと、ちょうど料理が出来たみたいだから運んでくるよ」

ククッと笑いながら顔を真っ赤な顔した片瀬さんを残して料理を取りに行った。

 

 

「・・・・・・バカ、鈍感」

 

 

 

 

「って、なんでお前が前に出てるんだよ?」

俺がバックに戻るとキッチンで料理を作ってたはずの信が料理を運ぶ気満々だった。

「いやぁ、やっぱり唯笑ちゃんにはオレが愛情込めて作ったものを直に持っていってあげたくて」

「・・・・・・そか、早く行け」

色々言いたいことはあったが、あえて突っ込むまい。

オレは静かにため息をついて残りの料理を持って行った。

 

 

「ほい、ご注文は以上でよろしいでしょうか?」

「はい、よろしいですよー♪」

と、手を振ってるのは桧月。

・・・・・・・・・くぅ、可愛い。

思わず顔がにやけそうになるのを堪えながら、なんとか無表情を装う。

「双海から何を聞き出してるのかは知らんが、どうせなら紅茶について色々教えてもらえ。きっとそっちのほうが色々役に立つだろうよ」

「え?」

「あ、それは名案かも」

いきなり話を振られてきょとんとする双海を横目に音羽さんがうなずく。

「俊にしては良い事を言うな」

「おまえに比べたら誰でもそうだろうな」

「・・・ぐっ」

「・・・・・・いつも思うけど俊くんの突っ込みって鋭いよね」

「うん、淡々としてて、的確な分、余計にグサッとくるよね」

桧月さんに音羽さん?そういうのは普通本人に聞こえないように言うもんじゃないですか?

「まぁ、そんなわけだから、食い終わったらゆっくり紅茶講義をしてやると良い」

「・・・・・・わかりました。おまかせください」

「・・・・・・・?」

なんだろう、今、一瞬双海の気配が変わったような気がするのは気のせいか。

「まぁ、ほどほどにごゆっくり」

なんとなく嫌な気配を感じたのそそくさと退散することにした。

 

 

 

「どうしたんですか?なんだか釈然としない顔してますけど?」

「・・・・さぁ、なんだろうな。俺にも良く分からん」

「?」

片瀬さんと二人で首を傾げる俺だった。

 

 

その後、桧月たちは例によって俺らが上がるまで店に居座っていたが、妙にぐったりしてたのは何故だろう。

双海だけは妙に生き生きしてるように見えたが。

「・・・・・俊くん、謀ったね?」

と、桧月に言われたが俺には何のことやらさっぱりだった。

 

 

 

 

 

 

 

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Up DATE 07/3/19


ぬぁー、お待たせした上に大して話進んでなくてごめんなさい。orz

次回はなんとか今月中にあげますゆえ・・・。

>次の話しがとても気になりますww詩音と彩花と彩花の関係がとても気になります〜
>そして次回予想されるであろうルサックでの詩音の反応も気になります
>次回の話を心からお待ちしています

次回の話がとてつもなく遅くなってすいません。詩音の反応が淡々としてすいません。
本当はこのルサックでの話は書く気なかったんですが、このコメントを見て書いちゃいました。・・・・てへっ。

>やる時は徹底的に、という言葉が気になりました
>どんだけの事をやる気だよ俊……
>今後の展開に期待!頑張って下さい

ありがとうございます〜。何をするかはみなもちゃんの手術が終わった後に〜。

>本当におもしろくて続きが早く読みたいです!!個人的には詩音ちゃんとくっついてほしいですね...

遅くなって死ぬほどごめんなさい。詩音派は圧倒的ですねー。

>いやいや私は俊×彩派ですよ?wかなり期待しているのですが♪

(゚∀゚)人(゚∀゚)ナカーマ

>シナリオも後半に突入かな。初恋は実らないってことで自分は
>俊×詩音派に1票。どうでも良い話俺も学生時代こんな青春がしたかったぜww今となってはもう遅いOTZ

まだ、1/3も終わってない気がする・・・・(汗
逆に考えるんだ、だからこそこれから良いことがきっとある!・・・と。

>おお、彩花巻き返しですか、彩花派の自分としてはとても楽しみです。
>がんばってくださいw

イエッサー。つーても彩花の巻き返しはまだ当分先になりそう・・・orz

>やったね楽しみにしてた急展開
>ひょっとしたら智也のほうは簡単に済ますのかもと思ってただけにうれしい誤算です
>私は彩花ファンですが俊君が誰と結ばれても全然OKだったりします
>羽付きで見守るだけだったのに比べればね〜・・
>この話が完結したら私の中では1stのTUREストーリーなるかもです。期待してますね

わおわお、そう言っていただけるのは本当嬉しいですー。
智也とのこともきっちりと決着つける気満々ですよー。
>>羽付きで〜
あぁ、本当にそうですね。羽根彩花は大好きなのですが、あの展開はやっぱり見てて切ないです・・・orz