Memories Off Another

 

第16話

 

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昼休み。俺は音羽さんと智也との勉強会の打ち合わせでまた屋上へと来ていた。

購買で仕入れたパンを片手にあたりを見回すと昨日と同じところに音羽さんを発見する。

向こうも俺に気づいたようで軽く手を上げて挨拶する。

「智也は?」

「購買に行ってからくるって」

「ふーん。で、昨日はどうだったの?」

俺は小夜美さんの手伝いで行けなかったが昨日は二人で図書室でテスト勉強をしたはずだ。

音羽さんの近くに腰を下ろしながら聞くと何故か音羽さんは箸を持った手を額に当てながら顔をしかめる。

「・・・・・・ハァ。それがね・・・」

 

 

 

 

 

「・・・・・と、いうわけなのよ」

音羽さんから話を聞いた俺は腹を抱えて声もなく笑いをこらえていた。

「そ、それは、災難・・・だった、な」

音羽さんに対しての慰めの言葉も笑いをこらえるのに必死でさまになってない。

「本当にねぇ、結局勉強どころじゃなかったもん」

ハァ・・・、と音羽さんがため息をつく。

「・・・・・・何の話だ?」

そこへ購買の袋を持った智也が不思議そうな顔をして現れた。

「やっぱ、おまえはネタに尽きないな」

ポンポンと智也の肩を叩く。

「ハァ?何が?」

「昨日のこと。図書委員の子に見とれてアホ面さらしたり、2度もこけて盛大に恥かいたんだって?」

きょとんとした智也の表情が瞬く間に変わっていく。

「お、音羽さんっ!!」

「あはは、ごめんねー。でも、元はといえば三上くんが悪いんだよ?」

あせる智也に対して悪びれた様子もなく音羽さんが言う。

ちなみに彼女、智也のあまりな行為にいたたまれなくなって一人その図書室から離脱したらしい。

テスト前ということで図書室にもそれなりに人がいたのだろうから当然の行為といえよう。

少なくとも俺はそんな恥ずかしいやつの同類とは思われたくない。

「だな、仮に俺が音羽さんの立場だとしても同じように他人の振りしてその場からいなくなるわ」

「う、うぐっ」

「おまけに教科書忘れるってギャグにしかならんぞ」

「だよねー。三上くん何か言い訳は?」

しれっとした笑顔で智也に問う音羽さん。

やがて智也はその笑顔の裏に隠されたプレッシャーに屈するようにうな垂れた。

「・・・・・・ごめんなさい」

・・・・は、こいつ桧月や今坂はおろか、音羽さんにまで尻にしかれてやんの。

「で、今日はどうすんだ?俺のほうは空けてきたが」

一応、今日も小夜美さんに仕事を頼まれたものの、流石にテスト前というのを理由に断ってきた。

バイトも同じ理由で休んでいるだけに2日続けて働く気にはなれなかったのもある。

「わたしのほうは平気だよ」

「俺も大丈夫だぞ」

「ってことは場所だが・・・・・・図書室は・・・」

音羽さんと二人でチラリと智也に目を馳せる。

「・・・・・・・」

それに対して多少バツが悪そうに智也は目をそらす。

「昨日図書室にいた連中はどうせ今日もいるだろうし、智也がいる限り無理だな」

智也の様子に苦笑しつつ俺は言った。図書室で2度もこけるという偉業を成し遂げた以上、顔も覚えられていることだろう。

さすがに俺自身はその場に居合わせなくても、ノコノコと智也と行動を共にしたくはない。

「悪かったな・・・・」

「話のネタにはなったからそれで十分だけどな」

俺のからかいに智也は憮然とした顔をする。ホント、信と並んでネタには困らんやつだ。

「ま、三上くんの罪はおいおい追及するとして場所はどうしよっか?」

追求する気はあるのかと、いう突っ込みをいれようとしたが、いい加減話が進まないのでそれは口に出すのをやめておく。

「駅前のワックでいいんじゃないか?図書室ほど静かでもないが、周りに気兼ねする必要もないしな」

「そうだな、あそこなら追加で注文しなくても結構粘れるし」

「三上くんがいいならわたしも反対しないよ」

「じゃ、決まりだな。・・・・・・で、智也。ひとつ相談があるんだが」

「何だよ?」

「桧月は誘わないのか?」

「桧月・・・さん?」

「コレと今坂の幼馴染で俺のお隣さん」

首をかしげる音羽さんに智也を指差して簡潔に説明する。

「正直、桧月のが俺よりよほど役に立つと思うが。特に数学以外の教科で」

他の教科というのは主に英語を指す。古文や化学なんかは暗記だからいいとしても英語は特に苦手なのだ。

悔しいが、勉強に関して言えば俺は桧月に遠く及ばない。ついでに言うと桧月と一緒だと俺が嬉しい。

「ああ、それはやめておいたほうがいい。リスクが大きすぎる」

「なんだ、リスクって?」

「もれなく唯笑がついてくる」

俺の疑問に智也はこれまた簡潔に一言で答えてくれた。

「あぁ・・・」

思わずうなずいて同意してしまう。

確かに桧月、智也とそろって今坂がついてこないわけがない。流れでいうと信もおまけとしてついてくる。

ついてこなかったらこないで後から面倒なことになりそうだ。

「え?え?どういうこと?」

「いや、あいつが加わって多人数で集まると、うるさくて勉強どころじゃなくなる」

「いつだったか信も加わってまったく勉強にならなかったしなぁ・・・」

そのときのことを思い出し、遠い目でフェンス越しの景色を眺める。

ことあるごとに話題が逸れて肝心の勉強はちっとも進まなかった。

図書室など静かな場所ならともかく、バーガーワックなどのファーストフードで集まるとヤバイ気がする。

一応補足しておくが、今坂だけでなく、智也や信も充分すぎるほどその一端を担っていたのは間違いない。

「あ、あはは。それは・・・大変だったねぇ・・・」

そんな俺たちの様子を見て音羽さんが引きつったような笑いを浮かべるだけだった。

 

 

 

 

 

 

「今日も何か用事あるの?」

HRが終わったあと、椅子にもたれかかってぼけーっとしてると頭上から声がする。

「あぁ、何故か今日もあるんだ」

頭だけ動かして頭上の桧月に顔を向ける。

「テスト前なのに勉強しなくていいの?」

一応用事そのものはテスト勉強なのだがあえて言う必要もない。

桧月と一緒にテスト勉強ができるのならそれがいいが・・・
それをわざわざ自分で提案できるほど図太くもないし、今回はその他の理由で残念ながら見送りだ。

「普段からしてないからいいんじゃないか」

俺の言葉に毎度のことながら桧月は頭が痛そうに顔をしかめる。

「普段してないなら余計にしなくちゃダメじゃない・・・」

俺もそう思う。

「ま、いつものことだから気にしないでくれ」

「・・・・・・・」

桧月は相変わらずな俺の態度に諦めがついたのか、仕方ないなぁといった風にため息をつく。

「それで今日も小夜美さんの手伝いなの?」

「いや・・・・・・どっちかってーと、智也の手伝いとゆーか、尻拭いというか・・・」

「智・・・也?一体何する気なの?」

「・・・・・・まぁ、智也本人に直接聞いてくれ。俺も良くわかってない」

「何それ」

「さぁ」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

微妙な間が二人の間に流れたころちょうど智也が今坂を引き連れて教室に入ってきた。

「俊、今日は音羽さんの都合が悪くてパスだってよ」

「そうなの?」

「あぁ、なんか用事ができて遅くなるらしい」

「ふーん、じゃ、今日は中止だな・・・」

少なくとも俺の中に智也と二人でテスト勉強という選択肢は存在しない。頼まれても御免こうむる。

「だから何の話?」

「あのね、智ちゃんと俊くんが音羽さんに数学の勉強教えるってことになったんだって」

俺らに代わって今坂が桧月の疑問に答える。

「音羽さん・・・・て、智也のクラスの転校生だよね?なんで、智也と俊くんが教えるの?そもそも智也は数学全然ダメじゃない」

「いや、なんだかよくわからないけど、話してるうちにそういうことになったんだよ。な、俊」

「どっちかっつーと、俺はお前に巻き込まれただけなんだが」

「ふーん、そうだったんだ。じゃ、二人ともこのまま帰るの?」

「そのつもりだけど」

「・・・・・・おまえさ、小夜美さんに用事頼まれてなかったか?」

「あ、そういえばそうか・・・・・・」

帰る気満々の智也に突っ込む。

さっき小夜美さんに聞いたのだが、智也の奴も小夜美さんに取り置きをしてもらっていたらしい。

それで今日は俺が断ったので智也に頼んだはずだが、智也のほうも音羽さんとの先約があるから断ったらしい。

「おまえが断ったのは音羽さんとの約束があったからだろ?それが潰れたんだから心置きなく小夜美さんの手伝いをしてこい」

俺だけが手伝って智也だけ手伝いなしというのは納得がいかない。

もし手伝いに行かないというのなら小夜美さんに報告して取り置きの中身をバナ納豆パンにすり替えてやる。

「う・・・・・・しょうがないか。小夜美さんを怒らせると後が怖いしな」

そんな俺の思惑を知らずに渋々といった感じでつぶやく智也。まぁ、小夜美さんを怒らせると後が怖いという点だけは同意できる。

小夜美さんがおばちゃんの代理である以上あの人が俺たちの昼飯の生命線を握っているといっても過言ではない。

が、智也に対し異議を唱える駄々っ子が一人。

「えー、智ちゃん、一緒に帰れないのー?」

もちろん声の主は誰であろう今坂だ。

「だからしょうがないだろ。行かなきゃ俺の平穏な昼飯が確保できないんだから」

「ぶぅー、だからぁ、唯笑がお弁当作ってきてあげるっていってるのにぃ」

「それは絶対に遠慮しておく」

「うーっ」

毛を逆立てた猫のように唸る今坂。

俺は今坂に聞こえないようにそっと桧月に耳打ちした。

「今坂って料理下手なの?」

「あ、あはは・・・・えーと、俊くんのご想像におまかせしまーす」

「・・・・・・あ、そ」

引きつった笑顔で答える桧月。想像に任せるも何もその表情がすべてを物語っているんだが。

ま、俺が今坂の手料理を食べる機会なんてあるはずもないから別に問題はない。

その機会がありえそうな智也に心の中だけで合掌しておく。

「じゃ、そういうわけなんでちょっくらいってくるわ。また明日な」

「うん、せいぜい小夜美さんに迷惑かけないよーにね」

そんな桧月と智也の様子をみてボソリと俺は呟いた。

「まるで夫婦の会話だな・・・」

自分で言っておいてなんだか心にグサッと突き刺さるものがあるなぁ。

だが、そんな俺の小さな呟きも二人にはしっかり聞こえていたらしい。

「ななななな、何言ってるの!!そ、そんなわけないじゃないっ!」

「そ、そうだとも!な、なんで俺がこんなのなんかとっ!!」

「・・・・・・は」

面白いくらいに慌てる桧月と智也に対して俺は冷めた視線で失笑するだけだ。

その間にも心にチクチク痛みが走るわけだが、もう大分鳴れたものでもあるので気にしない。

「ちょ、こんなのってどういう意味よっ!」

「あーっ、もう、と、とにかく小夜美さんのとこに行ってくる」

そしてそそくさと逃げるようにして教室から出て行く智也。

「あ、こらっ、智也ーっ!!」

「・・・・・・・智ちゃんのバカ」

その智也に向かって怒鳴る彩花と沈痛な面持ちで呟く今坂。

今坂の呟きは小さなものだったので桧月には聞こえていないだろうが、俺にはしっかりと聞こえていた。

はぁ・・・・・・、やれやれ。

こっちはこっちで厄介なこった。

心の中だけで俺は小さくため息をついた。

「なんだったら智也が終わるまで待ってれば?どうせテスト前なんだから図書室ででもテスト勉強しながら待つってのもありだろ」

俺の提案にぱぁっと顔を輝かせてたのは言うまでもなく今坂だ。

一転笑顔・・・とでもいうべきか、一瞬で表情をコロコロ変えて忙しい奴。

「俊くん、それナイスアイディアっ!!彩ちゃんもそうしよっねっねっ!」

「うん、それもいいかもね。じゃ、そうしよっか、俊くん」

「あぁ・・・そうだな・・・って、俺もか!?」

どっちかって言うと俺は落ち込んだ今坂を元気付けるために適当言っただけなんだが。

何故に俺まで智也を待つのに付き合わなければならないんでしょーか。

「先に言い出したのは俊くんなんだから当然でしょ?それに元々勉強するつもりで残ってたんだからいいじゃない」

しれっという桧月。まぁ、桧月の言うとおりそのつもりで残っていたわけだし桧月が一緒ならそれも悪くない。むしろオッケー。

もちろん、ただ智也を待つだけというなら全力で断ってたが。

「じゃ、決まりだね。唯笑、智ちゃんにそのこと伝えてくるから、二人で先に図書室に行っててよ」

今坂はそれだけ言うと止める間もなく教室から出て行ってしまう。

「まるで子犬だな」

「ふふっ、唯笑ちゃんらしいね。じゃ、わたしたちも行こっか」

「らじゃ」

桧月に促されるようにして俺もかばんを持って立ち上がる。

ちと、予定と違ったがこれはこれでなかなか嬉しい展開だ。

そんなことを考えながら桧月と一緒に図書室へと向かった。

 

 

 

 流石にテスト前ということだけあって図書室はそれなりに混雑していた。

なんというかどいつもこいつも黙々と教科書やらノートと向き合っていて余裕が感じられない。

「みんな必死だねぇ・・・・・・」

「俊くんは危機感とか足りなさすぎだと思うけど」

桧月の突っ込みは軽く肩をすくめて受け流す。

「そういうセリフはどっちかってーと、智也に言ってやれ。あいつは必ず俺の斜め上をいってるから。悪い方向に」

「・・・・・・・それを一概に否定できないのがなんとも言えないとこなんだよね」

俺の言葉に桧月は顔をしかめてこめかみを押さえる。

「智也の幼馴染も楽じゃないな」

「うん、でも・・・・・・悪いことばっかりでもないよ」

そう言った桧月の顔はどこはかとなく嬉しそうでもありどこか楽しげだ。また、チクリと胸が痛む。

「そりゃ、ごちそーさん」

その痛みを誤魔化すかのように俺は茶化した口調で言った。

「だ、だからっ、別にそーいうんじゃないってばっ!」

「図書室では静かにしてください」

慌てて否定する桧月にピシャリと言い放たれた冷たい声。

恐る恐る桧月と二人で声のしたほうを振り返るとカウンターに座る見覚えのある女の子がいた。

「図書室は静かに読書をする場所です。私語は慎んでください」

「あ、す、すみません。気をつけます」

平謝りする桧月とは対照的に俺はその子――双海さんに対して軽く手を上げて応えた。

「わりぃ。ちょっとテスト勉強するのに場所を借りようと思ったんだ」

「でしたら、奥の机が空いているのでそちらでどうぞ」

「りょーかい。・・・・・・で、双海さんはテスト勉強進んでる?」

何気なく聞いた質問だったのだが、予想に反して双海さんはその表情を曇らせる。

「・・・・・・あまり進んでません」

おいおい、昨日までテストの存在すら知らなかった人間がそれでいーのか。

彼女の手元には読みかけの本があることにはあるが少なくとも教科書や参考書の類でないことは確かだ。

「ま、昨日も言ったことがするけどそれなりにはやっておいたほうがいいと思うぞ。
 一応、俺でわかることだったら質問も受け付けるからさ」

「・・・はい。ありがとうございます。そのときはよろしくお願いしますね」

「りょーかい」

俺が軽くうなずきながら手を振ると彼女はほんのわずかだが微笑していた。

「じゃ、いこうぜ。桧月」

「・・・・・・うん」

奥の机に向かって歩き出すとなぜか傍らの桧月は物珍しげな顔をしてこちらを見ていた。

「・・・・・どした?」

「うん、ちょっと珍しいなぁって思って」

「ねぇねぇ、今話してたの詩音ちゃんだよね?」

俺が何がと、聞こうとする前にいつの間に来ていたのか今坂が後ろから話しかけてきた。

「詩音ちゃん?唯笑ちゃんあの子のこと知ってるの?」

「うん、ほら前に話したじゃない? 音羽さんより前に話した転校生のこと」

「あぁ、あの子がそうなんだ」

今坂の話を聞いて納得したように相槌をうつ桧月。

話しながら部屋の隅の空いてる席に3人で座る。

「で、その双海さんと話してたのがどうしたの?」

俺が桧月に質問するまえに先に桧月が口を開く。

「うん、詩音ちゃんってクラスの中でも全然他の子と話さない子なんだよね。唯笑もあんまりお話したことないんだよ」

「へぇー、そうなんだ」

「でね、その詩音ちゃんが俊くんと普通に会話してるの見たから珍しいなぁって思って」

うわぁ・・・好奇心丸出しの質問だ、こいつ。

「ふーん、そっかぁ。俊くんそういうことなんだぁ・・・」

「ほえ?」

「は?」

桧月は何やら意味ありげな視線と言葉を俺に向けてくる。

なんだかものす・・・・・・・っごく嫌〜な予感するんですけど。

「さっきもそうだが、何がだ」

「うんうん、照れなくてもいいよ。わたしもね、俊くんが違うクラスの女の子と話してるの珍しいなぁって思ってたんだ」

「は?」

「ほら、俊くんってわたしたち以外の女の子とクラスでもあまり話してないじゃない?」

「・・・・・・それで?」

「でも、自分のクラスでもあまり話さないっていう双海さんと俊くんは凄く親しげじゃない?」

「いや、至極普通の会話だったと思う」

あれをどう見たら親しげに見えるのか俺には理解できない。

「一般的から見て普通でも、俊くんは普段自分から女の子に話しかけないし、双海さんはクラスメイトともあんまり話さないんだよね?」

「うん、普通に話してるのも見ないし、詩音ちゃんが笑ってるのって唯笑さっき初めて見たよ」

・・・・・・・うわぁい。なにやら話が怪しげな方向に向かってらぁ。

「いや、それはたまたま偶然だから」

「だって、双海さんとは違うクラスなのに昨日も話したんでしょ?」

「それは朝、駅で会っただけだし」

「え、詩音ちゃんと俊くんって駅で待ち合わせしてるの?」

今坂、無責任にとんでもないことを言い出すな。

「いやいや何故にそうなる。偶然会っただけだっつーの」

だんだん頭痛くなってきたぞ、くそっ。

「だから、隠さなくてもいいってば、わたしはちゃーんとわかってるからね、うんうん」

全然っわかってねぇっ!!人の気持ちも知らずむしろ何思いっ切り勘違いしやがりますか、このお方はっ!?

俺はそう叫びたくなる衝動を全力で押さえつけながら静かに言った。

「本当に偶然だっての・・・はぁ、もう好きに解釈してくれ」

いや、そりゃ確かに双海さんのことは可愛いと思うし、他の女の子に自分から話しかけたりなんてまずしないさ。

だけどそれとは別に俺が好きなのは、今目の前にいる嬉々として勘違いしているお前さんであって!

つか、本気でボク泣けてきます。その気になればこの場で涙流せますよ?

「ふふっ、そっか。そういうことなんだー♪」

さっきの仕返しと言わんばかりに嬉しそうに顔を綻ばせる桧月。

ああっ!ちくしょうっ、なんでこうなるかなぁっ!!!

結局こんな感じでテスト勉強しようにもまともに手がつかず、桧月と今坂の質問攻めにあったり、
誤解されたショックでそれどころじゃなかったりで散々だ。

 

 

 

帰り際に智也に対してはその話題は振らせなかったものの、結局桧月は勘違いを勝手に解釈して確信に変えてしまってい

「俊くん、わたしで良ければいつでも力になるからねっ♪」

別れ際に桧月が残した言葉はいつにも増して残酷だった。

知らないってことは罪だよな。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ。

いつもより数百倍重い足取りで俺は帰路へと着いた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ホント、泣けてくる。

 

 

 

 

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UP DATE 04/12/1

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