Memories Off Another

 

第14話

 

 

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「ふぁ……」

ねみぃー、だりぃー、かったりぃー。

結局昨日はノートを写すのに5時間以上かかってしまった。

そりゃ、帰ってすぐに取り掛かれば徹夜なんてする必要はないんだけど、この俺がそんな殊勝なことできるはずもなく。

飯食ってTV見て風呂入ってたりだらだら過ごしてたら12時回ってたわけで。

必死こいてノート写し終わるころには朝日を拝んでいましたよ、と。

結局そのまま眠ったら起きないのは確定だからそのまま眠気覚ましにシャワーを浴びて適当に飯食って登校することにした。

「ふぁ・・・・」

再びあくびをかみ殺しながら寝ぼけ眼で電車待ち。

あぁ、くそ、かったりぃ・・・。早く学校行って寝よ。

「おはようございます」

「ふぇ?」

突然かけられた声に間抜け面で振り向くとそこには見知らぬ美少女が立っていた。

―――訂正。見知らぬ美少女ではなく、いつぞやの双海さんだった。

「と、おはよ。・・・・・・・って、滅茶苦茶早いね」

「何が・・・ですか?」

俺の言葉の意味がわからなかったらしく首をちょこんと傾げる双海さん。

その仕草がちょっとかわいい。相変わらずと言うか表情は硬いままだけど。

「いや、学校に行くのが。まだ7時前だろ?」

部活の朝練ってわけでもなさそうだし、普通はこんな時間に登校したりしない。

「私は図書委員の仕事がありますから」

「ああ、なるほど・・・って、図書委員の仕事ってそんなに早いのか!?」

いくらなんでも早すぎないか?俺がもし図書委員になってたら絶対仕事をこなせないぞっ!?

「仕事自体はそこまで早く来る必要はありません。私が読みたい本があるだけですから」

「ほぅ・・・・・・もしかしていつもこの時間に学校行ってるの?」

「はい」

こともなげに言ってくれる。すげ・・・俺には絶対真似できない。ってかしたくねぇ

「・・・・・・」

そのまま沈黙してしまう双海さん。

そのままなんとなく会話が途切れてしまう。

ぬー、ここは普通俺のほうはどうしたんですかとか切り替えしてくれるとスムーズな会話ができるのだが・・・。

この間の図書室でのことを思い返してみると向こうから挨拶してくれただけで奇跡みたいなもんだしなぁ。

後半はそれなりに気を許していてくれた気もするんだけど、今はどことなく最初と同じ雰囲気を漂わせている。

・・・・・・ま、変に考える必要もないか。普通に接すればいーやな。

「な、テスト勉強とか進んでる?」

「テスト・・・・・・ですか?」

双海さんは何故か、微妙に疑問系の顔をしてこちらを見ていた。

「テスト。来週から中間テストだろ。その勉強はしているのかってこと」

「・・・・・・来週からテスト・・・・」

おいおい、この反応ってもしかして・・・・。

「もしかしなくても・・・・・・テストのこと知らなかったとか?」

「・・・・・はい」

微妙に気まずそうな顔で頷く双海さん。

その次の瞬間には電車がホームへと滑り込んできた。

 

 

 

「流石に・・・何も勉強してないってのは不味くないか?」

「そう・・・ですね」

「・・・・・・・・・」

世の中上には上がいるもんだ。

外見上は成績とか良さそうに見えるけどどうなんだろうか。ってか、テストがあること自体を知らなかったってことにびっくりだ。

「余計なお世話かもしれんが、放課後とかにでも多少はやっといたほうがいいと思うぞ。
 なんだったら朝のうちでも多少は時間あることだしさ。追試になったら面倒だし」

「・・・・・・・・・」

何やら考える双海さん。

「・・・・・どうした?」

「テスト範囲がわかりません」

思わずガクッと足の力が抜けた。平然と爆弾発言を投下してくれやがる。

「・・・大丈夫ですか?」

「いや、俺は全然平気だけど・・・・・・」

むしろあんたの方が大丈夫か、と言いたいのをグッとこらえる。

まぁ、ね。テストの存在そのものを知らなかったのにテスト範囲なんてわかるはずないよな。

「つーか、テストの存在を知らないってもしかして授業とかH.Rの話まったく聞いてない?」

「はい、その時間は本を読んでいますから」

またしても平然とした顔で爆弾発言。

「一応聞いとくけど授業とはまったく関係ない本?」

「はい」

「・・・・・・・・・・・・・」

睡魔に襲われている頭がさらに頭痛まで起こしてきた気がする。

「テストに対して自信あるとか?」

「・・・・・・・あまり、ありません」

・・・・・・・・ふぅ、今日はいい天気だなぁ。

って軽い現実逃避をしている場合じゃない。

はぁ・・・・・・しゃーない。かったるいなぁ・・・。

「図書室まで俺も付き合う。で、大体のテストだけでも範囲を教えておくよ」

別にここで教えてもいいのかもしれないけど教科書とか広げて確認したほうがわかりやすいだろう。

「え・・・・・・でも」

「ついでだ、ついで。俺も図書室に用があるからな」

そう言い切って俺は視線を電車の外へと向ける。

ついでったって、俺の用事は別に図書室である必要はまったくないけどさ。

「・・・ありがとうございます」

「・・・・・・ついでだからな」

双海さんの礼に対して俺は視線を外に向けたまま素っ気無く答えた。

 

 

 

 

「・・・・で、ここまでがテスト範囲。とはいってもこれは俺のクラスのだから、一応同じクラスの奴に確認しておきな。
 大体の範囲は同じはずだけど授業の進み具合によって多少誤差がでるかもしれないから」

俺は自分のノートにメモってあるテスト範囲をそのまま双海さんに見せ、手元にあるノートと照らし合わせながら教えておいた。

「はい。どうもありがとうございます。おかげで助かりました」

「・・・まぁ、そんな大したことでもないし。余計なお世話かもしれないが、テストに支障が無い程度は授業を聞いておいたほうがいいと思うぞ」

「そうですね。今後は気をつけます」

とか偉そうに警告して置きながら俺が双海さんよりも点数が下回っていたら目も当てられないなぁ。

そんなことを思いつつカウンター脇にあるソファーへと向かう。

「テスト範囲教えたお礼ってわけでもないけどさ、今から俺寝るから図書室から出るときは起こしてくれ。じゃ、おやすみ」

「え?」

双海さんの返事を待たずに俺はソファーへと寝転がり、瞼を閉じる。

・・・・・・ソファーの大きさは充分とは言えないが仕方あるまい。いい加減俺は眠くて仕方ない。

そのまま程なく俺は眠りへと落ちていった。

 

 

 

 

「・・・・さい・・・・・・かん・・・・で・・・・・・・よ・・」

身体が誰かに揺すぶられてる。

「時間ですよ、起きてください」

「ふぁ・・・・・・・・」

無理やりに意識を覚醒させ、ソファーから起き上がる。

「ん・・・・・・もう、時間か・・・・ふぁ・・・・」

身体を起こしたまではいいが、まだ眠気からは完全に醒めず大きくあくびをする。

「随分、ぐっすりお休みになられていましたね」

そう言う双海さんの顔はさっきよりいくらかは和らいだものになっている気がした。

「ああ、おかげさまで。昨日、徹夜で借りたノートを写してたから眠くて眠くて・・・ふぁ〜あ」

立ち上がってグッと伸びをする。うむ、さっきよりはいくらかスッキリしたかな。

「徹夜で勉強していたのですか?天野くんは真面目な方なんですね」

「・・・・・・いや、真面目じゃないからノートを借りて徹夜をする羽目になったと思うだが」

自分で言うのもアレだが、どう考えても俺は不真面目な分類にはいると思う。

「あ、それもそうですね・・・」

「そういうこと。さて、そろそろ行きますか」

「・・・・・天野くんの用事というのは・・・」

「ん、寝ること。教室でも良かったんだけどここのソファーのが寝心地が良かったんでな」

きょとんとした顔の双海さんを置いて先に廊下に出て、双海さんを待つ。

「・・・・・・・天野くんは変わった方ですね」

図書室の鍵を閉めて振り返った双海さんはかすかに微笑んでいた。

「・・・・・・・まぁ、それはよく言われるけどな。双海さんにもそのセリフをそのまま返そう」

「・・・そうですか?」

「あぁ、俺に負けないくらいな」

そういって俺もニヤリと笑う。

「そうですか、肺に命じておきます」

「・・・・・・肺じゃなくて肝な」

「・・・・・そうなのですか?」

「・・・・・そうです」

「・・・・・・・・ふっ」

「・・・・・・・・くすっ」

そして一瞬の間を置いてお互いに吹き出す。

「では、私は職員室に鍵を返しにいかなければならないのでここで」

「あぁ、またな」

「それでは、ごきげんよう」

ぺこりと頭を下げる双海さんに背を向けて俺は自分の教室へと向かった。

・・・・・・・・うーん、朝っぱらから俺は何やってんだろうな。

悪い気分ではないけど、チト疑問だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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UP DATE 04/10/22

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