Memories Off Another

 

第13話

 

 

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 「だー、うるさい・・・・・・」

休日の午前中、俺は二度寝という素晴らしい時間を堪能していたのにいきなり鳴り響いた携帯の着信音に全てをぶち壊された。

ディスプレイを見るとお馴染みの信からだ。

ったく、一体何の用だよ・・・。

「もしもしー?」

眠気と不機嫌さを隠さず電話に出る。

『なんだ、寝起きか?いかんぞ、せっかくの休日を惰眠に費やすのは貴重な時間を浪費しているだけだと思わんかね?』

いきなり切りたくなった。

が、ここで切ってもすぐに掛けなおしてくるのはわかっているのでグッとこらえる。

「おまえに言われたかねぇ。御託はいいからさっさと用件を言え」

『相変わらずせっかちだねぇ。仕方ない、ならば単刀直入に言おう。図書室でテスト勉強でもしないか?』

「・・・・・・・・・・・・・・はい?」

今のは俺の聞き間違いか?

「すまん、もう一度言ってくれ」

「だから、一緒にテスト勉強でもしないかと聞いているんだ」

どうやら聞き間違いじゃなかったらしい。

「・・・・・・熱でもあるのか?それとも今日は地球が滅亡する日なのか?」

俺は至極真面目に尋ねた。

『どういう意味だ、それは?』

「いや、おまえがそんなこと言い出すなんて熱でも出して正気を失ったのか、天変地異の前触れだと思って」

『真面目に失礼なことを言うなっ!オレだって極稀にはそんな気になることもあるわっ!』

「自分で極稀とか言ってる時点でダメじゃん」

『余計なお世話だ。こっちに色々と事情があるんだよ』

「色々な事情ねぇ…まぁ、別に予定もないからいいけどさ」

野郎だけで集まって勉強ってのもあんま美味しくないけど、どーせ一人で家にいても何もしないからなぁ。

たまにはやる気を出すのも悪くないかもしれない。

『んじゃ、13時に澄空な。智也の奴にも声かけておくよ』

「ん、了解。じゃ、あとでな」

 

 

 

 

 

 

 

 で、なんで俺は今ここに立っているのだろう。

「なぁ、信。俺はテストに備えて図書室で勉強をするという話を聞いたのだが」

「うん?あぁ、おまえに電話したときはそうだったな」

今、俺らが立ってる場所は間違いなく図書室ではなくゲーセンだ。

「これが信くんの言ってた新作のゲーム?へぇー、結構面白そうだね」

「あ、智ちゃん見て見て!猫ぴょんもいるよっ!」

「いや、アレは猫じゃなくてトラだろ?」

新作ゲームの筐体には桧月、今坂、智也の三人組もいる。

よーするにいつものメンバーなわけだが。

 

 

 澄空駅に俺が着いたとき、既に信や智也が集合していて何故か桧月や今坂までいた。

桧月と今坂はまぁ智也に付いてきたというのは予想できるが。

で、信を先頭に歩き出したらたどり着いた場所は学校ではなくこのゲーセンだったわけだ。

「ほら、いつまでしかめっ面してんだよ。せっかく唯笑ちゃんや彩花ちゃんが来てくれたってのに勉強なんかしてらんないだろ?」

「・・・・・・・」

テストがやばいと言ってたのどこのどいつだ、コラ。

グッと信の頭をどつきたくなる衝動を抑える。

まぁ、いいどうせテストが終わった後で泣きを見るのはこいつなのだから。

せいぜり後で泣きをみるがいいさ。

「信くんも俊くん一緒にカード作ろーよぉー」

「あぁ、うん。今、行くよー」

今坂に呼ばれて子犬のように駆け寄る信。・・・・・・子犬に失礼か。

一人で突っ立ってても仕方ないので俺も信に続く。

この新作のゲームは『ゾイドインフィニティ』と言って、金属生命体ゾイドを2本のツインスティックで操作する対戦アクションだ。

機体ごとのカードを作ることによって武器などのアイテムを収集したり戦績を記録できるシステムになっている。

集めた武器やオプションパーツで自分の機体をカスタマイズしたり、機体を乗り換えたりできるっていう寸法だ。

「みんな作る機体決めたのか?」

桧月と今坂がゲーセンにくるのは最初は意外に思っていたが、中学のころから智也に付き合っているうちにわりと普通に遊ぶようになったらしい。

と、いっても智也がいないとこういった格闘やアクション系はやらないらしいが。

「うんっ、唯笑はね、このねこぴょん!」

そういってセイバータイガーというトラ型の機体を指差す今坂。

「だから唯笑、それは猫じゃなくてトラだって言ってるだろ・・・」

「おんなじ猫科なんだから大して違わないよー」

「大分違うと思うけど・・・・なぁ」

「・・・・・だな」

信の言葉に頷く。

そういやこないだ学校から帰るときに猫を見つけて大騒ぎしてたなぁ。

にんにんネコピョンだのなんだの言ってはしゃいでたっけ。

「俺はこのライガーゼロだな。シンプルなデザインが気に入った」

と、智也。

「ふっふっふ、甘いな、智也。男ならこの共和国最強ゾイドゴジュラスだろ!?」

信・・・・おまえは何をそんなに熱くなってんの。

「私はね、この黒いの」

桧月が指差したのはティラノサウルスタイプの黒いゾイド。

「ふーん、ジェノザウラーかぁ」

ゾイドのアニメでは主役がライガー系のゾイドと、するとジェノザウラーはそのライバルにあたる機体になる。

「俊くんもどれにするの?」

「俺はシールドライガー。こいつから乗り換えできるブレードライガーが俺の目当てだ」

俺の一番好きなゾイドがブレードライガーなのだからコレは当然の選択と言えよう。

 

 

 

 それぞれが何回かプレイし操作にある程度慣れたころに対戦を開始する。(今坂は基本操作もおぼつかないので観戦)

まだ、数回のプレイでは誰もストーリーをクリアできてないが、基本操作さえできるようになれば仲間内での対戦は楽しめる。

「相変わらずつめが甘いな、信」

まずは智也が信に勝ち一勝。

「くっそぉ・・・!ルサックの黒い疾風と呼ばれたこの俺が・・・」

「誰も呼んでねぇ。ま、自称黒い疾風は引っ込んでろ」

そもそもお前黒くねぇよ。見た目的に。まぁ、性格的に黒くも・・・・・・ないか。口は上手いが間が抜けてるし。

悔しがる信を押しのけて筐体に座る。

「自称ってつくと物凄く、うさん臭い気がするよね」

「うん、それに信くんどこも黒くないし」

「ついでにヘタレだしな」

ピロン♪
俺、桧月、今坂、智也の4連コンボが炸裂した

「そこまで言うかっ!?」

「事実だからな」

「う、う・・・・おまえらいつか見返してやる!」

負け犬の遠吠えを無視して対戦開始。

 

 「ま、こんなとこだな」

「ちっ、あと一歩だったのに」

まずは智也に一勝。

「じゃ、今度は私の番だね」

NEXTチャレンジャー桧月彩花。

他の対戦だと格闘などのアクションは俺、パズル系とかは桧月といった感じで優劣がついている。

優劣といっても桧月は飲み込みが早いからそれほど腕の差があるわけでもない。

互いに今日初めてやるゲームでの初対戦。ここは負けるわけにはいかない。

 

 

 「・・・・・・・・・・くぁ」

思いっきり負けた。

最初の1セットは俺が勝ったものの、2セット目で僅差で負け。そして3セット目で大きく体力差を付けられて負けてしまった。

ま、まずい。俺が桧月に勝ってる数少ないアドバンテージが・・・。

「えへへー、ごめんねぇ、俊くん」

ちぃ・・・・・・つ、次は負けられん。

「ふふふ、ここは俺の出番だな」

根拠のない自信を手に信が挑戦。

 

 1セット目はそこそこ追い詰めるもあっさり逆転されストレート負け。

勝者桧月。稲穂信。対戦2連敗。

・・・・・・所詮は信か。

「見せ場くらい作れよ、ヘタレー」

「う、うるさい」

「ま、おまえならこの程度だな。どけどけ」

NEXTチャレンジャー三上智也。

1セットを落とすも2セット目はかろうじて取り返す智也。

が、3セット目はことごとく動きを見極められあっさり敗北。

「彩ちゃんすっごーい!3人抜きだよ!?」

「ふふふっ、智也の動きなんてお見通しなんだから」

「な、何を!?い、今のはあれだ、デモンストレーションだ。俺が本気を出せば彩花なんかに負けるはずないじゃないかっ」

「相手の体力半分も減らせなかった奴が言っても虚しいだけだな」

「くっ」

智也の負け惜しみのすかさず突っ込む。

むしろ智也が本気を出して勝てるものって体力面ぐらいのものしかないんじゃないだろうか。

「みんな、まだまだだね♪」

「さて、それはどうかな」

智也を押しのけて筐体に座る。

伊達に今までの対戦を観戦してたわけじゃない。

さっきまでの俺と桧月の動きの違いははっきりと把握した。

それがわかった以上、そうそう負けるわけにはいかない。

俺はカードとコインを入れ、意気揚々とスタートボタンを押した。

 

 

 

 

 「ちくしょー、結局今日は俊に負け越しかよ」

駅への帰り道、智也が悔しそうに唸る。

あの後は俺が桧月に勝ち、続く智也を退けたものの、操作ミスで信に敗退。

で、その信は続く彩花に負けて、彩花は智也に負け。

さすがに智也も信もそれなりにゲーム慣れしてるだけあってそれなりに対戦のコツはつかんだらしい。

ラストは俺が智也に勝ったところで、キリのいい時間だったのでそこで締め。

「ま、いいんじゃない。あのゲーム結構楽しかったんだし、ね、唯笑ちゃん?」

「うん、唯笑はまだみんなより下手だけど、今度は唯笑も対戦できるように頑張るよ」

「あ、じゃあ、唯笑ちゃんさえ良かったらオレが色々教えてあげるよ」

ここぞとばかりに信がしゃしゃり出る。が。

「おまえの機体と今坂の機体じゃ明らかに操作違うだろ。教わるなら智也とか桧月のがいいだろ。機体性能的に」

・・・・・・・・・本当は俺のシールドライガーが一番操作感覚が似てる気がするが、かったるいのでパス。

「うん、そうだね。智ちゃん、今度じっくり教えてね♪」

「そ、そんなぁ・・・」

ガックリと肩を落とす信。見てて飽きない奴。

「面倒くさいから嫌だ」

「えぇー、なんでだよぉ。ぶー、智ちゃんのケチィ。いいもん、いいもん。彩ちゃんに教わって、智ちゃんなんかコテンパンに負かしてあげるんだからっ」

「ハハハハッお前が俺に負けるわけないじゃないかっ!そんなことがあったら何でも一つお前の言うことを聞いてやるさ」

「むぅぅぅぅぅぅっ、智ちゃん、今言ったこと、ぜーったいに忘れちゃダメだかんねっ!」

「本当、君ら毎回飽きないねぇ・・・・・」

こないだも同じようなことやってた気がするぞ。かったるい奴ら。

「はーいはい。二人ともあんまり熱くならないの。どーせ、来週は中間テストなんだからしばらくはゲームセンターに行くのもおあずけだよ。
 どーせ、智也はテスト勉強なんかしてないんでしょ?赤点とっても知らないよ」

「う゛・・・」

ちなみにテスト勉強をしていないのは智也のほかにも約2名(俺と信)

「それと、俊くん」

「・・・・・・はい?」

人事だと思ったら今度は俺に矛先が回ってきた。

「昨日、貸したノート。明日にはちゃんと返してくれるよね?」

なぜか、にっこりと笑顔で聞いてくる、桧月。

この場合その笑顔が非常に強いプレッシャーを放っているわけですが。

「・・・・・・おうよ」

ちなみに借りたノートは一応手持ちの鞄に入ってることは入ってる。

本来なら今日図書室で全部移すつもりだったのだが・・・。

休日の午後に桧月(や他数名)と楽しく過ごせたのは良しとしてもその代償は軽くなかったらしい。

ノートは計4冊。はぁぁぁ、今夜は徹夜かなぁ・・・かったるぅ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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UP DATE 04/10/4

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ほぼ3ヶ月ぶりの更新・・・・(滝汗

そのくせ内容は若干、自分の趣味に走ってる節があります(死)

続きを待っていてくれた方には非常に申し訳ないというか、なんというか。

このSSのテーマ的に何気ない日常を書くのが自分的に重要なわけでその辺は生暖かい目で流してくれるとありがたいです。

なんかあとがきで言い訳ばっかしてるぞ、自分。_| ̄|○

次回ではそんなことを書かないですむといいなぁ。