Memories Off Another
昼休み。
食料確保の任務に成功した俺は屋上へと来ていた。
どーもここ数日購買にたかる人数が増えてる気がしてならない。
それに比例して、小夜美さんのおっちょこちょいのスキルって日ごとにLvが上がってるような気がするのは気のせいだろうか。
まぁ、まともな食事にさえありつければOKなのだが。
パンを食べながら景色を眺める。
陽射しも暖かく、風も心地よい。春と並んで今が一番過ごしやすい季節だと実感できる。
たまには一人でこうやって静かに過ごすのも悪くない。
何気なく辺りを見回すと少し離れた所には一人の女生徒が立っていた。
フェンスに手を置き街を眺めているのか、その目は遠くを見ている。
(どっかで見た子だよな・・・・・)
とりあえず俺も視線をフェンス越しの景色に戻して記憶を探る。
・・・・・・信のクラスの転校生だっけか?
また横目にちらっと彼女を見る。
前に教室で見た明るい彼女とはまったく違う印象を受ける。
穏やかで何か物思いに耽っているような。
(・・・・・・ま、彼女も転校生なりに色々あったのかもな)
今のところ俺には彼女との面識もないし、特に関りあいになるようなことでもない。
それ以上その子のことは気にせず、さっさと食事を終わらせる。
「んっ・・・・」
軽く伸びをして気合を入れる。
暖かい陽射しのせいで軽い眠気に襲われるが、午前中も授業を2つもサボった手前午後も同じことをやるわけにもいかない。
携帯で時間を確かめると昼休みが終わるまではまだ若干の時間がある。
すぐに教室に帰る気にもならず、なんとなく校庭を見下ろしてみる。
校庭ではサッカーをして遊んでいる奴等が走り回っている。
・・・・・元気だねぇ。
そのまま校庭を眺めていると隅のベンチでまた見知った女の子を発見。
一昨日智也が寄りかかってた長くて綺麗な髪の女の子。
たしかあの子も転校生だったはずだ。
遠目だけど、あの髪の長さと色なら間違いないだろう。
そういや俺も彼女が転校してきたときに興味本位で教室までいったものの、いつも居なかったんだよな。
あの信でさえ隣の席にも関わらずロクに話せないって言ってたっけ。
近寄りがたいオーラみたいなのを発してるとかどうとか。
こないだ見たときは結構可愛い子だったけどなぁ・・・・。
放課後。
「な、頼む!俺今日の用事はどうしても外せないんだって」
「知るか。つーか、言うのが遅い!」
俺の目の前で頭を下げている奴はクラスメイトの新井俊樹。
「だいたいだ、なんで俺がおまえの代わりに図書委員の仕事をせねばならんのだ」
帰りのHRで担任に言われるまで図書委員の仕事があるのを忘れてたこいつが悪い。
確かに今日の俺はバイトも無く特に用事も無いが、こいつの尻拭いをする理由など何処にも無い。何よりかったるい。
「まぁまぁ、おまえのことだ。そう言いながらもちゃんと行ってくれるんだろ?俺はちゃんとわかってるんだ」
「行くかっ!!そもそも答えになってない!!」
「今度、奢るからさ。じゃ、後は頼んだぞ。図書室に行けば、他のクラスの図書委員が一人いるはずだからさ。じゃな」
「あ、コラッ待て!!」
自分勝手なことだけ言って、俺の声に耳も止めず、足早に教室から出て行く新井。
「・・・・行っちゃったね」
隣の席で一部始終を聞いていた桧月が苦笑する。
「野郎・・・・」
あいつに奢らせる時は相応の礼をせねばなるまい。
「新井くんの用事って何なんだろうね?」
「ハッ、どーせ下らんことだろ。ナンパした女の子とかの待ち合わせとか」
そう、新井は信と同等かそれ以上の女好きだ。
もっともこれまた信と同様に軽い性格のせいか、良い人で終わってしまうこと数知れず。まぁ、悪い奴ではないのだけど。
デートの約束まではこぎつけてもすぐに本性がバレて振られてしまうのがオチだ。
あの様子だと多分今回も同じパターンだろう。
もしも上手くいったら・・・・・・海に沈めよう。
「俊くん、犯罪はダメだよ?」
「・・・・人の心を読まなくてよろしい」
なんで桧月はたまに俺の考えてることを読むかな。
そんなに顔に出してるか俺?
「それで、結局どうするの?」
「・・・・・行くしかないだろ・・・他のクラスの奴一人だけにやらせるわけにもいかないし。かったりぃ」
これが新井一人の仕事だったら問答無用でシカトするだけのことだが。
「フフッ」
何故か桧月がそこで笑い出す。
「・・・・何がおかしい?」
「ううん、べっつに〜♪」
何が面白いのか知らんがとても楽しそうだ。
「不愉快だ・・・」
「あはは。あ、別に悪い意味じゃないから気にしなくても平気だよ、うん♪」
「じゃあ、どういう意味だよ?」
「んふふー、内緒♪」
なんとなく察しは付くものの、からかわれているような気がしてあまり良い気分ではない。
俺はそれ以上追及するのをやめ、溜息をついてもう一度呟いた。
「不愉快だ」
とりあえず妙に楽しそうにしていた桧月と別れ、俺は図書室の前に立っていた。
・・・・・俺がここに来るのって冬に昼寝に来た時以来か?
・・・・・ハァ、何にしろ、図書委員の仕事なんぞメンドくさいことこの上ない。
「・・・・・かったるい」
そんなことを思いつつ図書室の中へと入っていった。
図書室の中を見回すと人はほとんどいない。
テスト直前というわけでもないので、当たり前といえば当たり前だけど。
ま、いいや。
それより図書委員の人は・・・・・と。
カウンターで一人本を読んでる髪の長い女の子に目を止める。
(この子か・・・・ってあれ?)
よく見るとその子は昼休みにも見た信のクラスの転校生だ。
・・・・・・名前は覚えてない。
「あの・・・・・・」
俺が遠慮しがちに声を掛けると女の子はページをめくる手を止めると顔をあげる。
「・・・何か御用でしょうか?」
どこか他人を拒絶するような声。
「あ、えーと、俺C組の図書委員の代理で来たんだけどさ」
「代理・・・・・ですか?」
「ああ、ちょっとそいつが用事でこれなくなってさ。代役として俺が来たってこと」
一瞬彼女は怪訝な顔をするが俺の説明を聞くとすぐにそれを打ち消し、無表情な顔に戻る。
「そうでしたか、それはご苦労様です」
「で、俺は何をすればいいの?」
その子は何か考えるような素振りを見せるが、すぐに本を閉じて立ち上がる。
「今日は新規図書の受入れと他の本の移動と整理です。手伝っていただけますか?」
「ああ、もちろん。っていうかその為に来たんだからな。えっと・・・・・・」
そう言いかけて言葉につまる。
だから名前を知らないんだよ、俺は。
向こうもそのことに気づいたようだ。
「私は双海詩音と申します」
双海・・・詩音・・・か。よし、覚えた。
「・・・・・・どうかしましたか?」
「あ、いや、何でもないよ。俺は天野俊一。よろしく」
「はい。こちらです」
俺の挨拶に一言だけ答えるとさっさと歩き始めてしまう。
・・・・・・あっさりしてるなぁ。
その反応になんとなく寂しさを感じてしまう。
「では、こちらの本をあの棚に並べていただけますか?順番はラベルの番号順にお願いします」
「あ、うん」
慌てて彼女の元にいき、言われたとおり本を並べていく。
「・・・・・・・」
うーん、何か話したいところだけどこれといった話題も無いんだよな。
黙々と本を並べる作業を続ける。
「なぁ、図書委員っていつもこんなことしてるのか?」
「いいえ」
「・・・・・・・」
一刀の元に会話が断ち切られた。
「じゃ、じゃあ普段は何をしてるんだ?」
「本の簡単な整理と貸し出しです」
「・・・・・・・」
うぐぅ。
再び一振りで断ち切られる会話。
ちょっと泣きたくなった。
床に「の」の字を書いていじけてみる。
「・・・・どうかしましたか?」
床に蹲った俺を不審に思ったのか双海さんが声をかける。
「いや、なんでもない。ちょっといじけてみただけだ」
「・・・・はぁ」
きょとんした顔で再び作業に戻る双海さん。
・・・・そこで、いじけた理由を聞いて欲しかった。
素で返されるとまた泣きたくなってしまう。負けるな、俺。
「そういえばさ、双海さん、昼休みに校庭で昼食べてたよね?」
って、何言ってんだ俺は?向こうは俺のこと知らないんだから下手すると俺がストーカーしてるみたいじゃないか・・・・。
「はい」
・・・・何事も無かったかのように普通に返事をしてくれる双海さん。
むぅ・・・・変な風には思われなかったようだが会話の流れはまたしても断ち切られる。
なんとなく悔しいので意地でもまともな会話を成立させたい。
「いつも一人で食べてるの?」
「はい」
会 話 終 了
「えっと、クラスの子とかと一緒に食べたりしないの?」
「はい、わたしは一人が好きなんです」
「あぁ、そうなんだ」
再 び 会 話 終 了
「・・・・・・」
諦めたら試合終了なんだよな、安西先生?
「双海さんてさ、信とか智也とか今坂と一緒のクラスだよね。あいつら授業中でも騒がしいでしょ?」
「わたし、普段は本を読んでるので、クラスの事はあまり気にしてません」
「そ、そっか」
ま た も 会 話 終 了
「・・・・・・・」
まだだ!まだ、終わらんよ!
くじけるな、俺!・・・・・・・ってなーんで、俺ムキになってるんだ?
まぁ、いい。ここまできたら俺の意地にかけて後には引けん。
どんな意地かと、言うと俺にもわからんが。
「双海さんって本好きなんだ?どんな本を読んでんの?」
「そうですね・・・・最近は剣客モノの時代小説をよく読みます。・・・・あなたも本は読まれてるのですか?」
お、食いついた!?
「んー、よくってほどでもないけど、本を読むのはかなり嫌いじゃないよ。まぁ俺が読むのはファンタジーとか冒険モノが多いけどね。
SFっぽいのとかも好きだし剣客モノも嫌いじゃないな」
ちなみに大半が漫画とかライトノベルというのは秘密だ。
「でも双海さんが剣客モノってのは意外な感じだな」
「そうでしょうか?」
イメージ的にはイギリスとか北欧あたりの物語とか読んでそうだったんだけどな。
「まぁ、なんとなく。信から聞いたことあるけど、双海さんてたしか海外から転校してきたんでしょ?
海外にいて日本の時代小説が好きってのは珍しいんじゃないの?」
「そんなこともないと思いますけど・・・・。それにわたしはファンタジーや他のジャンルも好きですから」
「なるほど。一般的なジャンルは大抵カバーしてるってわけだ。双海さんってそうとう本が好きなんだな」
「・・・・・・はい、そうですね。・・・本ならいつ、どこでも読めますから」
なんとなくその双海さんの言葉に重いものを感じた。
「・・・・そっか」
信から聞いた話だとたしか彼女は親の都合で転校を繰り返してきたらしい。
それも国境を超える転校を幾度となく。
そんな彼女にとって国や交友関係に左右されることのなく読める本は彼女にとって大事なものなんだろう。
それ以上はお互いに話すことも無く淡々と作業を続ける。
「・・・・あ」
「ん?どうかした?」
黙々と作業を続けてい俺は双海さんが発した声に顔を上げる。
「あんなところに本が・・・」
双海さんが指を指したとこを見ると本棚の上に一冊の本が乗っかっているのが見える。
双海さんが背伸びをして手を伸ばすが、全然届かない。
「どれどれ・・・・・・・くっ・・・・のっ!」
俺も双海さんの代わりに俺も手を伸ばすが、かろうじて指先が触れる程度で本を取ることができない。
(くっ、誰だ!?よりによってあんなところに本を置いたのは!?)
別に俺の背が低いわけでは無い。本棚が無駄に高いのだ。
「仕方ないですね・・踏み台か何か持ってきます」
「ちょっとタンマ。任せてくれ」
踏み台になるものを取りに行こうとした双海さんを呼び止め、俺は本棚に向き直った。
この程度で引き下がっては床屋志望のプライドがすたる。
・・・・・まったく関係ない上に嘘だけど。
「よっ・・・・」
俺は棚の横の部分を掴み、下の棚に足を掛け、一気に手を伸ばす。
棚一段分の高さを稼いだおかげで今度は難なく本を取ることができた。
「ほい」
棚に掴まったままで本を双海さんに手渡す。が、これがまずかった。
グラッ
「あ」
「え?」
やべっ。
そう思った時には手遅れだ。
俺の体重がかかった分、重心がずれて本棚が倒れてきたのだ。
当然、このままだと俺はともかく双海さんまで本棚の下敷きになってしまうわけで。
「すまん」
「きゃっ」
棚から本が落ちるより一歩早く、俺は棚から飛び降りると双海さんの肩を押し、突き出した。
そして次の瞬間、俺の頭上に直撃する本棚。
よりによって棚の角だ。おまけにその直後俺に砲弾のように降り注ぐ大量の本。
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
時が止まった・・・・・・・・ような気がした。
双海さんを見ると俺が押したせいで尻餅を着いてはいるが、特に怪我もないようだ。
せいぜい足元に本が1,2冊転がっているようでそれ以上の被害もないらしい。
「・・・・大丈夫?」
双海さんは驚いたような呆気にとられている顔をしながら頷き、
「あ・・・はい。わたしは大丈夫だけど・・・・・その・・・あなたのほうが・・・・大・・・丈夫・・・・ですか?」
俺は何事もなかったかのように無言で頭に直撃したままの本棚を元に戻す。
「・・・・・実はもの凄く痛い」
棚が直撃した頭を抑えて蹲る。
本気でいてぇ。よりにもよって角が直撃しなくてもよかろうに。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そして沈黙。
「・・・・・・・ぷっ」
「・・・・?」
「ふっ・・・ふふふふふ」
ふと、顔を上げると双海さんが必死に噴出すのをこらえていた。こらえきれてないけど。
「ひでぇ。人が必死に痛みと戦っているとうのに」
言いつつも、双海さんの意外なリアクションを見て俺の表情は大分緩んでいるんだろう。
「だ、だって・・・・ふふ・・・あはははははっ」
ついに双海さんがこらえきれず声を出して笑う。
俺が初めて見る笑顔で。
「へへっ・・・・ははっ・・・あははっ」
それにつられて俺も笑い出してしまう。
周りに人がいたらもの凄く奇妙な光景に見えるだろうな、と頭の片隅で思う。
「それにしても本当に大丈夫ですか?」
ひとしきり笑いあったあと、落ちた本を並べなおしながら双海さんが心配してくれる。
「ああ、頑丈なのが取り柄だからな」
多少頭は痛むが、たいしたほどではない。降り注いだ本もさほどのダメージではないし。
「つーか、あれだけ笑った後にそれは酷くない?」
「あ、あれはその・・・・・・あんまりおかしかったから・・・・」
俺の言葉にちょっと困ったような顔をする双海さん。
さっきまでの無表情と違って面白いくらい感情が表れていて、それが可愛いと思える。
「あはは、じょーだん、じょーだん。あれは俺の自業自得だし。むしろ俺が謝らなくちゃいけないんだよな」
「え?」
「だって、余計な仕事増やしちまったし、双海さんも危なかったわけだし・・・・」
下手してたら双海さんが怪我してたもんなぁ・・・それはシャレになってない。
よくよく考えなくてもこれはちゃんと謝っておかねばならんだろう。
「と、いうわけで・・・・・本当にすまん」
双海さんに向き直って頭を下げる。
「いえ、わたしはあなたのおかげで大丈夫でしたから・・・・気になさらないでください」
「そういってくれると助かる」
頭を上げて双海さんの顔を見る。うん、さっきまでと比べるとやっぱり表情が柔らかくなってるよな。
「・・・・・・わたしの顔に何かついてますか?」
「・・・いーや、別に♪」
双海さんとの距離が縮まったような気がしてもの凄く良い気分だ。
再び本棚に向き直って作業を再開しようとしたところ・・・・
「・・・・・・・・・お名前は?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?
「・・・・お名前を教えていただけますか?」
「あ、ああ・・・・・天野・・・俊一・・・・・」
・・・・・・ガーン。
一人盛り上がっていた気分が一気に消沈する。
どうやら俺は名前すら覚えてもらえなかったらしい。
「わたしは双海詩音です。・・・・先ほども言いましたけど」
「ああ、うん」
「では、仕事を再開しましょうか」
そういって本棚に向かう双海さんは一瞬だけど微笑んでくれた・・・・・ような気がする。
「・・・・よし。さっさと終わらせるか」
名前を覚えられていなかったのはかなりショックだが、今度はちゃんと覚えてもらったようだし、
何より今見せてくれた笑顔のおかげでかなり良い気分で作業を続けることができた。
「これでラスト・・・・っと。これで全部終わりだよな?」
「はい。これで本日の作業は終了です。お疲れ様です」
「ああ、お疲れさま。じゃ、帰ろうか」
「い。お気をつけて」
・・・・・・・。
「えーと、双海さんはまだ帰らないの?」
この流れなら昇降口までは一緒に帰ろうとかそういう流れだと思うんだが・・・・。
「ええ、私は図書室の閉館時間までいなければなりませんから」
「そっか・・・・」
なんとなく気の抜けた返事をしながら辺りを見回すが、この部屋に残ってる奴なんて俺ら以外にいないんだけど。
(ま、しょうがないか)
「前、学校に来る時に見かけたんだけどさ、双海さんて駅、中目町だよね?」
「はい、そうですけど?」
「俺も中目町だからさ、今度機会があれば一緒に帰ろうよ」
「・・・・・・はい」
一瞬双海さんは考え込んだものの、すぐに頷いてくれた。
「今日はどうもありがとうございました。おかげで助かりました」
「ま、俺は代理としての責務を果たしただけだし。・・・・・つーか、むしろ余計な仕事を増やしちまったしな」
そういって本棚が直撃した頭を抑える。まだちょっとズキズキする。たんこぶできてないだろーな。
「わたしは気にしてませんから。それよりもぶつけたところ、お大事に」
あの時のことでも思い出したんだろうか、そう言った双海さんの目にはいたずらっぽい、楽しげな光が浮かんでいる。
「・・・・了解。にしても双海さん、随分楽しそうだね」
「いえ、そんなことありませんよ?ふふっ・・・」
笑いながら否定されても説得力は何も無い。
「ま、俺も楽しかったからいいけどな」
「そう・・・ですか?」
「うん、双海さんが笑ってるとこ見られたし」
俺がニヤリと笑って言うと、
「・・・・・そのことは他言無用です」
と、双海さんは言うものの、カァァと顔が赤くなっているのでとても可愛い。
一矢報いた気分で気持ちいい。
「ははっ、了解。じゃ、またね」
図書室のドアを開けて手を振って双海さんに挨拶する。
「はい、ごきげんよう」
・・・・・・・・今日はいい日だ。
ちっとは新井にも感謝しておいてやるか。返礼には何の変更もないけど。
そしてその日はいつもより数段浮かれた気分で過ごした。
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UP DATE 04/02/14
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