Memories Off Another

 

 

 

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「・・・・・で?噂の転校生ってのはどの子だ?」

朝の登校時に信と出くわした俺はいきなり拉致られ、奴の教室まで連れてこられた。

理由はもちろん噂の転校生のお披露目(?)だ。

俺も今日中に見に来るつもりではあったから好都合といえば好都合かもしれない。

「ああ、あのショートの子だよ。智也の隣りの席の。どうだ?結構イイ線いってるだろ?」

言われたとおり智也の席の隣に目をやるとショートの髪の子がクラスの女子と思われる子2,3人と話している。

・・・ちなみに当然のことながら俺は隣りのクラスの女子の顔なんてほとんど覚えてない。

つーか、自分のクラスの女子も未だに全員は覚えてないしなっ!って、そんなことはどうでもいい。

・・・なるほど、確かに信の言うとおり中々可愛い子だ。

パッと見では性格も悪く無さそうだ。

「結構競争率高そうだなぁ・・・」

「やっぱお前もそう思うか?どうだ、これから一緒に話してみるか?」

信は何が楽しいのか、やたらとウキウキした感じで聞いてくる。

「いや、遠慮しておく。っていうか隣りのクラスの俺がいきなり話し掛けるのもどうかと思うぞ?
 それにお前だってまだ、そんなに親しいわけじゃないだろ?」

「それもそうか・・・」

「それよりも問題が一つある」

「ん?・・・何が?」

「どーしてお前のクラスばっか転校生が来て、ウチのクラスには来ない?不公平じゃないか」

「いや、そんなこと冷静に俺に言われても」

「それに・・・・・智也の隣りの席というのもなんとなく気に食わん」

「うむ、まったくだ」

我が意を得たりを言わんばかりに信も同意する。

「そもそもアイツには既に唯笑ちゃんと彩花ちゃんという二人の可愛い幼馴染がいるにもかかわらずだ。
 誠にもって世の中という奴は平等に不公平でいかん」

俺も信の意見に深く同意だ。

「だいたい智也の奴は普段から・・・・」

「あ、信くんに俊くん。おっはよう♪智ちゃんがどうかしたの?」

信が愚痴りモードに入ろうとしたとき今坂がやってきた。

「よっ」

「やぁ、唯笑ちゃん、おはよう。今日は智也は一緒じゃないの?」

片手を上げて挨拶する俺と、愚痴りモードから一転してさわやかな笑顔を浮かべる信。現金な奴め。

「あ、それがさー、聞いてよ二人ともー。智ちゃんってばヒドイんだよ。あのね?」

・・・・またですか。昨日も同じようなことを聞いた気が。

「じゃ、そろそろチャイムが鳴るんで俺はいくわ。じゃな」

「おう」

「あ、うん。またね」

今坂の話に付き合ってると確実にホームルームに遅刻しそうなので早々と退散する。

・・・・しかし、ホントあいつらは毎日毎日同じことやってて飽きないねぇ。

 

 

 

 

自分の教室に戻ってボーっとしてるとすぐに桧月が入ってきた。

桧月の席は俺の隣りなので当然すぐこちらにやってくる。

「よぅ。智也の奴またなんかやったのか?」

「おはよっ。って・・・なんでそのこと知ってるの?」

桧月は不思議そうに首を傾げる。

「さっき今坂に会って愚痴られそうになった」

「あ、あはは・・・そうなんだ」

俺の言葉に思わず苦笑してしまう桧月。

「ま、その前にとっとと信を生贄にして逃げてきたんだけどな」

「それは信くんも災難だね」

「・・・で、今朝はなにやったんだ?」

「うん、それがね、智也ったら朝からずーッと上の空で唯笑ちゃんの話もまるで聞いてなかったの。
 それで、智也も素直に謝ればいいのに下らない言い訳ばっかしてて・・・」

「今坂がヘソをまげた、と・・・」

コクリと頷く桧月。

「・・・・・ま、いつも通りだな」

「ウン、そーなんだけどね。ただ、一度唯笑ちゃんがあーなっちゃうと何言ってもきかないから」

「・・・・今坂も意外と頑固なとこあるからなぁ」

「うんうん、でもさ、智也も智也だよね。すぐ謝ればいいものをさ、・・・・」

しまった・・・・。結局この流れか。

・・・・幸いこのすぐ後に担任が入ってきたので桧月の愚痴に付き合わずにすんだ。

やれやれ。

 

 

「ふわあぁ〜。良く寝た・・・・」

「・・・・今日も授業中ずっと寝てたね」

昼休みに入りいつものように目覚めの伸びを堪能していると桧月に呆れられてしまった。

「ああ、昨日ちょっとTV見てたら3時回ってたから。朝遅刻しない時間に起きれたのが奇跡だ」

「随分、安っぽい奇跡だな・・・・」

呆れながらやってきたのはクラスメイトの相沢祐一。

「俺にしてはかなり上出来だと思うが」

「全然いばることじゃないぞ?そんなことより今日の昼はどうする?」

「昼?そんなのいつも通り購買だろ?」

「・・・はぁ」

「・・・・・おまえ、HRで話聞いてなかったろ」

「・・・・・?」

何故か若干、桧月と相沢の視線が冷たくなった気がする。

「朝のHRで先生が言ってたじゃない。購買のおばさんが腰を痛めたから今日はお休みだって」

「・・・・ほう。それは初耳だ」

「それは初耳だ・・・じゃないだろ。で、どうするんだ?」

「どうもこうも・・・・・・どうするんだ?」

一応学食という手段も残されているがウチの学食は色々とアレなのでできる限り避けたい。

「購買が休みの間は外食OKだとよ。だからどこで食うかという相談だったんだが」

「・・・・なるほど。だったらそこの喫茶店にでも行くか。普段行く機会もないし」

「オッケー。それじゃ行くか」

「だな。とっとと行かないと昼休みが終わってしまう」

「二人とも午後の授業には遅れないようにねー」

「了解」

ちなみに桧月は普段から自分で弁当持参なので購買は関係ないのだ。

俺はというと現在親の都合で一人暮らし。

詳しいことは置いておくとして、当然自分で弁当など作れるはずもなく、普段の昼は大抵購買だ。

智也もたしか今月からは俺と同じような状況のはずだが、
あいつの場合は桧月という非常に優秀かつ面倒見の良い幼馴染がいるので、たまに差し入れがあるらしい。

まったくもって世の中は不公平だ。羨ましすぎるぞ。

 

 喫茶店でのランチを済ませて教室に戻る際、途方にくれながら歩く智也を発見した。

信に聞いたところ、どうやら昼休みを寝過ごして外に買いに行く時間がなかったらしい。

教室に戻って桧月たちにそのことを話したら・・・。

「・・・・ホント、間抜けな奴だよな」

「お前が言うか?」

「そうそう、あのままだったら閉まってる購買の前で一人途方に暮れてたかもしれないよ?」

相沢と桧月の突っ込みをダブルで受ける。

「そんときは自己判断で勝手に外に出たから問題ないな」

もちろん、昼休みに許可なく校外に出るのは校則違反だ。捕まればヒバゴン―もとい、生徒指導教諭の有難くないお説教が待っている。

「そういう問題じゃないと思うだけど」

「そうか?」

何も問題は無いと思うんだが違うのか?

「・・・お前って何かずれてるよな・・・」

呆れたように相沢も呟く。

・・・・・むぅ、なんか今日はよく突っ込まれる日だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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UP DATE 03/10/02

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