HAPPY★KANON
第21話
「ピクニック、楽しみだね、お兄ちゃん」
みなと咲耶の二人に挟まれて、三人でものみの丘への道を歩く。
ママ達全員と一緒に行くと誰かに見られる可能性が高いのでものみの丘で合流することになってるいる。
「ふふ・・・・・自然に囲まれた場所でお兄様と二人っきり・・・・うふふ・・・」
咲耶は咲耶でなにやら旅立っているがいつものことなので放っておこう。
「そうだな。ま、俺はゆっくりできれば何でもいいけど」
ピクニックなら別に爆発に巻き込まれたり、プロレス技の実験台にされることもないだろう。多分。
「あら?」
「あ」
「お?」
曲がり角。そこに出くわしたのは誰であろう、香里と栞の美坂姉妹だ。
「よ、二人とも」
「こんにちは、相沢くん」
「こんにちわです、祐一さん」
ガシッ
ガシッ
ドンッ
「・・・・・何のつもりだ、二人とも?」
・・・・・何故か挨拶した俺は栞と香里の二人に両手を拘束され壁に押し付けられた。
「あら、別にどうもしないわよ?ただ、いきなり逃げられないようにしただけ」
「そうですよ?昨日はいきなり走っていっちゃいましたからね。そのこと、忘れてませんよね?」
笑顔で俺の疑問に答える二人。ただし、目は笑っていない。
みしみしと握られた手が悲鳴を上げる。
・・・・・・・・・・・・・昨日のことすっかり忘れてました、ハイ(汗)
俺の休日をゆっくり過ごしたいという、ささやかな希望は早くも粉みじんに打ち砕かれた。
「ははははっ。嫌だなぁ。別に逃げたりなんかしないさ。だから、さ。もう少し力緩めてくれませんか?」
「大丈夫ですよ。祐一さんがこの子達との関係を話してくれさえすれば、何も問題ありませんから♪」
「ちょ、ちょっと!あなた達、わたしのお兄様に何するのよっ!」
いつから俺はお前のモノになった?
「あー、咲耶。俺は大丈夫だから、ちょっと黙っててくれないか?な」
「はーい」
この状況では逃げられないし、余計に話がややこしくなる。
栞と香里も一日置いて落ち着いたのか昨日ほどの鬼気はない・・・・・・・・ような気がしなくもない。
「それじゃ、相沢くん。話してくれるわね?」
「この二人は俺が施設で暮らしてたころの幼馴染。よーするに血の繋がってない妹みたいなもんだよ」
わかりやすく簡潔に説明する。
「本当に本当?」
ギリっと俺の手を握る香里の手に力が入る。
「天地明神に誓って本当だ。それ以上でもそれ以下の関係でもない」
「・・・・残念だけど今のところはね」
「・・・・・ふぅ、ならいいんだけどね」
俺の言葉の後に続く咲耶の言葉にようやく納得したのか香里達はようやく解放してくれる。
「ま、判ってくれればいいがな」
コキコキと解放された腕をほぐす。おお、掴まれてたところが青くなってるぞ。
「おやおや、二人の幼馴染との関係がはっきりしてホッと一安心というところですかな?」
「しかしまだ安心はできませぬぞ?幼馴染の場合はふとしたきっかけで恋に落ちるフラグが山ほどありますからな〜」
・・・・・・・・いや、おまえら何処から沸いて来た?
「・・・・・・栞」
「はい、お姉ちゃん」
栞はポケットからトゲ付きグローブを香里に渡す。
それを無言で身につける香里。
「おまえのポケットは四次元ポケットか?」
「そんなこと言う人、嫌いです」
そう言いつつも唇に人差し指をあてる栞は笑顔だ。
そしてその傍らでは香里がグローブを装備し、必殺の右を繰り出していた。
「余計な解説ありがとぉぉぉっ!!!!」
「「じゃあ、何故殴りますか〜〜〜〜〜!?」」
余計な解説だったからだろ。
「ねぇ、お兄ちゃん。さっきの人たちなんだったの?」
「・・・・気にするな。世の中には知らないでいいこともある」
ポンポンとみなの頭を叩く。
そもそも俺だってアレが何かわからん。知りたくも無いしな。
「まぁ、せっかくだからちゃんと紹介しておこう。こっちがみなづきでこいつが咲耶」
「よろしくお願いしまーす」
「よろしくお願いします」
・・・・・みなはともかく咲耶の挨拶に殺気のようなものを感じたのは気のせいだろう。
「で、こっちがクラスメイトの香里に、その妹の栞だ」
「よろしくね、二人とも」
「よろしくお願いしますね」
・・・・・・・なんとなくみなを除く三人の間で火花が散ったような気がするのは目の錯覚だろう。
「ところで、祐一さんたちはこれから何処に行くつもりなんですか?」
「ああ、俺達はこれからものみの丘に行くつもりだけど」
「そ、私たち3人だけで楽しく過ごすつもりなんです♪」
言うや否や俺の腕をとって密着する咲耶。
「あー、咲耶ちゃんだけお兄ちゃん独り占めするのはズルイよっ」
咲耶に負けじとみなが空いてる俺の腕に密着する。
「だぁーっ!二人ともすぐ俺にくっつくんじゃない!」
「へぇー、楽しそうですね。私たちもご一緒していいですか、祐一さん?」
「え?え、ええと・・・・」
別に断る理由も特に無いけどものみの丘ではママ達も合流するからちょっとマズイかな?
「それとも・・・・ひょっとしてわたしがいると邪魔ですか?」
「いや、別にそんなことはない」
栞の言葉に一秒で即答してしまう俺。
・・・・・・・・・・・・俺って奴は上目遣いで頼みごとをされると断れないのか?
「じゃ、決まりね」
「ちょ、ちょっと、お兄様!」
「しょ、しょうがないだろ?ここで変に断ってママ達と合流したところ見られたほうが面倒だし・・・」
俺の悲しい弱点は置いといて、咲耶を説得する。
「?二人で何話してるんですか?」
「いや、別になんでもないぞ」
「そうそう、お兄様と私だけの秘密ゥ」
おまえはそうやって火を注ぐんじゃない。
「む〜」
「ふふん」
視線を交差させて火花を散らす栞と咲耶。
アホくさいのでもう放っておこう。
「じゃ、いい加減いくか」
「うん!」
「そうね」
みなと香里と連れ立って歩き出す。
「そういや名雪は一緒じゃないのか?」
「名雪?そうね、あの子なら・・・・」
そういって腕時計に目をやる香里。
傍目に見たそれは9時半を示していた。
「寝てるわね。間違いなく」
自信を持ってきっぱりという香里。
「そ、そうか」
そして置いてけぼりにしてきた咲耶と栞が追いついてきたのはしばらくしてからのことだった。
「ハァ・・ハァ・・・・置いてけぼりなんて・・・・ハァ・・ハァ・・・酷いです・・・」
「わ、わたしとしたことが・・・・ハァ・・ハァ・・・・不覚を取ったわ・・・」
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UP Date 2/18