HAPPY★KANON

 

第20話

 

 

 

 

「あー、疲れた・・・・・・」

風呂から出た俺はパタッとソファに倒れこむ。

あの後はあの後で散々ママ達やみな達と遊んで・・・・騒いで・・・・流石に体力が限界だ。

いくら明日が休みとはいえ、夜も遅いためママ達もみんな自室に戻っている。

みなはむつきママ、咲耶はうづきママの部屋で寝ることになった。

まぁ、咲耶はうづきママに引っ張られていたと言ったほうが正しいか。

・・・・・なんか異様に長い一日だったなぁ。

学校で皆と騒いで・・・みなと咲耶が押しかけて・・・・ママ達も一緒になって騒いで・・・。

「・・・・・ま、楽しかったからいっか」

久しく感じていなかった気持ちが心を満たす。

(・・・・これでアノ人がいたら収拾つかないな)

自ら思い浮かべた考えに苦笑する。

俺より先に寮を出たあの人は今ごろどうしてるだろうか。

・・・・・・・・今の俺がこうしていられるのもあの人に会えたからなんだよな。

ま、元気にやってるのは間違いないだろうけど。

 

 

カタッ

 

小さな物音に意識が向く。

・・・・・何だ?

 

「おにーちゃん♪」

「うおっ!?」

「あ」

 

ガタタッ

 

「大丈夫?お兄ちゃん」

いきなり目の前にみなが顔を出してきたせいでソファから転げ落ちてしまった。

・・・・不覚。

「おまえ、むつきママと一緒に寝てたんじゃないのか?」

「えへへ〜、むつきママのとこ抜け出してきちゃった。だってみな、お兄ちゃんと一緒がいいんだもん」

「いや、一緒にっておまえ・・・」

「昔はよく一緒に寝てたでしょ?」

そういって小さい頃とまったく変わらない笑顔で笑うみな。

「もうっ、みなづきちゃん!一人だけズルイわよ!全く油断も隙もないんだからっ」

いつの間にか後ろには咲耶も立っていた。

「・・・・おまえもか、咲耶」

「うふふ、うづきママのお部屋から抜け出すのはちょーっと苦労したけどね♪」

なんて笑ってみせる咲耶だが俺はその笑みが引きつっているのを見逃さない。

良く見ると着ているパジャマにもシワがたくさんついていて、目の端にはうっすらと涙まで浮かんでる。

・・・・・・・まぁ、深く追求しておくのはやめておこう。

触らぬ神に祟りなし。

「そういうわけだからお兄様。今夜はずっと一緒だからね

「か、勝手に決めるんじゃない!そもそもソファに3人も寝られるかっ!」

「じゃあさ、じゃあさ、昔みたいにみんなで床に寝ようよ。そうすれば問題ないでしょ?」

みなづきの提案に咲耶はポンっと手を叩いて、

「みなづきちゃん、グッドアイディア!それなら何も問題ないわよね?お兄様

「・・・・・って、そういう問題じゃないだろっ!」

確かに昔はみんなで床に雑魚寝したこともあったさ!

けど、それはあくまで小さい頃の話で・・・・・・。

「お兄様・・・・私たちのこと嫌いになっちゃったの・・・?」

「お兄ちゃん・・・・・お願い・・・・ね?」

「・・・・く、卑怯な」

・・・・・二人してその瞳ウルウル攻撃は反則だぞ。

結局俺が二人の最終兵器に抗えるはずも無く・・・・。

「えへへ、お兄ちゃんと一緒に寝るの久しぶり♪」

「なんだか、昔に戻ったみたい・・・」

そういって二人は真ん中にいる俺にぎゅっとしがみついてくる。

うおぉっ、昔は無かった柔らかな感触がぁっ!!

落ち着けっ!今日はこいつらにずっと振り回されてるんだ、兄としていつまでも振り回されっぱなしでいられるかぁっ!

・・・・・などと俺が自分自身と過酷な戦闘をしていると不意にみなが呟いた。

「・・・・お兄ちゃん、なんだか変わったよね」

「え?」

「うん・・・・ほんの2、3日しか経ってないのに・・・・前よりあったかくなった・・・」

みなの言葉を補足するように咲耶が呟く。

・・・・俺が?変わった?

「そんなことないと思うけどな・・・・」

幾ら俺でもたった2,3日で変わったとは思わない。

まぁ、確かにママ達の影響がないとは言わないけどそこまで急に変わるはずもない。

・・・・・・・と、自分では思ったりなんかするんだけど。

「ううん・・・・変わったよ。お兄ちゃんは自覚がないかも知れないけど、前はみなたち以外にはあんまり笑顔を見せてくれたことなかったんだよ?」

「・・・・・・・」

「お兄様が他の人たちに心から笑ってる顔見たの・・・・私たちが見たのは初めてなんだから」

・・・・・言われてみるとそうだったかもしれない。

ここに来る前の俺は表面上はそれなりの付き合いを演じてはいたが、どこかで他人を拒絶してた。

本当に心を許していたのは同じ境遇のみなづきや咲耶・・・・そしてあの人だけだった。

そんな俺が何時の間にか名雪や香里たちとも馬鹿やって、(振り回されていただけかもしれないが)心から楽しんでいた。

「・・・・・・」

「ちょっと悔しいけど・・・・・・・ママさんたちのおかげなのかな」

みなの呟きに咲耶が俺の腕をぎゅっと強く抱きしめる。

「・・・・あの人たちが本当にお兄様のこと大切にしてるのわかっちゃったし。わたしも認めるしかないわね」

「そっか。・・・・ありがとな」

「・・・ね、お兄ちゃん。みなたちこれからも遊びに来てもいいかな?」

「当たり前だろ。おまえたちも俺の家族なんだから。家族に遠慮なんかするな」

「うん・・・・・お兄ちゃん大好きだよ」

「わたしも・・・・お兄様、大好き・・・・」

 

そして俺達はママ達のこと、この二日間に起きていることを話している内に何時の間にか眠りに落ちていった。

 

 

 

 

 

「じゃ、みなさんいいですか?せーのっでいきますよ?」

 

「「「「「「「せーのっ」」」」」」」

 

「祐一さーん、朝ですよー、いい加減起きてくださーい」
「お兄ちゃーん、朝だよー」
「お兄様、朝ですよー」
「祐一ーっ、起きろっー!!朝だぞーっ!!」
「朝・・・です。・・・・起床時間を3分・・・オーバーしてます」
「朝ーっ!朝だよーッ!!おっきろーっ!!」
「ほーら、起きなさーい!みんなはもう起きてるわよー!」

 

「うおおおっ!?」

耳元での大声に飛び起きる。

「なっ、な、なんだ!?何が起きた!?」

何が起きたのか理解できず当たりを見回すとそこにはママたちに加え、みなと咲耶までが俺を囲んでいた。

「あ、お兄ちゃん、おはよ」

「おはようございます、祐一さん」

「おはよ、お兄様」

「おはよう・・・ございます」

「おっす!目ぇ覚めたか?」

「おはよう。随分ぐっすり寝てたみたいね」

「おっはよー!今日も元気にいこうねっ!!」

「お、おはよう・・・・」

とりあえず挨拶は返したものの・・・・・・朝から一体何?

「ふふっ。何が起きたかわからないって顔してるわね」

「あのね、あのねー。みんなが起きても祐一くんだけ寝てたから、誰が起こしてあげるかって話になってー♪」

「みんな、自分が起こすって一歩も譲らないから、全員で一斉に起こすってことに決まったわけだ」

「バッチリ目が覚めたでしょ?お兄様

「・・・・次回からは普通に起こして欲しいです」

この起こし方は心臓に悪い。

「そもそも俺は別に寝起きが悪いわけじゃないだから普通に起こしてくれれば起きるから」

「えー、それじゃ、つまんなーい!」

「つまらなくていいっ!」

「家族との交流は大事にしなきゃ・・・・ねぇ?」

「そうそう、たまには起こすほうにまわるってのも悪くないかな」

「そうだよ、お兄ちゃん

ダメだ。口で言って伝わるものじゃないらしい。

一人一人に起こしてもらえるのならともかく、毎回これでは性質が悪い。

多少、勿体無い気も(?)するが次からは必ず自分の力で起きることにしよう。

「あ、でもわたしはお兄様に起こしてもらう分には全然オッケーよ。
 そしてその後は二人きりの食事・・・わたしが作った朝食をお兄様に食べて貰うの。そして・・・・」

「おーい、咲耶ちゃーん」

うづきママが咲耶に呼びかけるがその程度じゃ妄想モードに入った咲耶は帰ってこない。

「あー、うづきママ?そのうち帰って来るから放っておいていいよ」

「うん、りょーかい!」

何故かビシッと敬礼するうづきママ。

「よしっ!じゃあ朝飯にするか。今日の当番はオレだから、遠慮なく食べろよ。残したりなんかしたら承知しないぞっ!!」

腕を組んで自信満々のさつきママ。

さつきママの料理か・・・・どうも学校でのイメージからすると家事とは程遠そうだけど、どうなんだろう。

 

 

 

無事に戻ってきた咲耶も加え、みんなで食卓を囲む。

「うん、美味い。これ、ホントにさつきママが釣ってきたの?」

綺麗に焼きあがった焼き魚をつつきながらご飯を食べる。

今日の朝食メニューは焼き魚に豆腐の味噌汁。

「ああ。今日は早起きして釣ってきたんだぜ。正真正銘産地直送の海の幸だぞ」

「獲れたての焼き魚って美味しいですね」

「うん、それにお味噌汁もダシが効いてていい味出してる」

「へへ、そうだろう。そうだろう」

みなと咲耶の感想に満足げにうなずくさつきママ

二人ともすっかりママ達に馴染んでる。いいことだ、うん。

「でもさつきちゃんってば、学校のある日はいつも寝坊してるのに休みの日だけ早く起きるなんて現金だよね〜」

「なんだとぉっ!うづきテメー、よけーなこと言うんじゃねぇっ!!」

「だってホントのことじゃない。悔しかったら学校のある日も自分で起きてみなよっ!」

「上等だっ!コラァッ!!」

・・・・・もはやお約束となりつつあるうづきママとさつきママのケンカが始まった。

この二人よく飽きないねぇ。

「お、お兄ちゃん」

テーブルの上をなにやら色んなものが飛び交う光景を見てみながオロオロするが、
俺は特に気にかけることなく箸を動かす。

「大丈夫だよ、みな。いつものことだから」

「そ、そうなんだ・・・」

「流石、お兄様。どんな時でも沈着冷静。頼りになるわ

・・・・・・このぐらいでイチイチ動揺していたらママ達の息子は勤まらないからなぁ。

ズズーッと味噌汁を飲む俺にむつきママが声をかける。

「祐一さん、みなづきさん、咲耶さん。三人とも今日は何か予定ありますか?」

「ん、特にはないけど?」

「わたしたちも特にないです」

みなと咲耶は二人で目配せしたあと咲耶が答える。

「でしたら、みんなでピクニック行こうかと思うですけどどうですか?」

ポンっと手を叩いてむつきママが言う。

「ピクニック・・・・?」

「はい、みなづきさんたち今日で帰ってしまうんでしょう?
 だから今日はみんなで楽しく遊びましょうって思ってるんですけど」

ピクニックかぁ・・・。うん、反対する理由が全く無い。

「俺は構わないけど。咲耶たちは?」

「もちろん、私たちも問題ないですよ」

「二人とも、時間は大丈夫なのか?」

「ええ、大丈夫。少なくとも夕方までなら何も問題はないわよ。ね、みなづきちゃん?」

「うん。そうそう、何も問題ないよ」

「・・・・・・」

いたずらっぽく笑うみなと咲耶。

むぅ・・・長い経験でわかる。この二人は何かを企んでるな。

「・・・・おまえら、何か企んでないか?」

「あら、お兄様。人聞きの悪いこと言わないでよね。愛するお兄様にそんなことするわけないじゃない、ねぇ?」

「うん、そうそう。みな達何も企んでなんかないもんねー」

・・・・怪しい。絶対になにか企んでる。

「え、と。じゃあ、決定ですね。わたし腕によりをかけてお弁当作っちゃいますから楽しみにしていてくださいね」

「あ、わたし手伝います」

「もちろん、わたしも手伝います!むつきママからお料理教えてもらわなくちゃ♪」

「はい、よろしく願いしますね」

「じゃあ、俺も・・・・」

「お兄ちゃんは座ってて」

「お兄様は座ってて」

・・・・二人とも昔、俺がインスタントのヤキソバのお湯を捨てないでソースを入れたこと知っているだけに反応が早い。

「・・・・了解」

俺は手を上げて降参の意を示す。

そもそも家のキッチンに4人で作業するのは流石に狭いか。

それにしてもピクニックか・・・楽しみだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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                                UP Date 1/12

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すみません、ほんと、間が空きすぎですね(汗)

一話ごとのボリュームを上げたらペースが更に落ちる。うまくいかないもんです。

次回はようやくKanonキャラ達再登場予定。

クロスオーバーのはずなのに彼女達が最後に登場したのは何時だ?(滝汗

次回からはKanonキャラ出てないときはSSリンクに報告するのは止めたほうが良さそうです・・・・。

そーいえば今ごろになってハピレスOVAの4,5巻みました。

なんか2巻とも今までの話に比べてラブラブでいいですねー。

ラブラブなのは好きですよ。自分じゃそうそう書けませんけど(死)