HAPPY★KANON
第19話
ふぅ・・・・・さっきはみなのおかげでえらい目にあってしまった・・・。
「じゃ、気を取り直して今度は祐一くんの担任にして現国の先生!
しかしてその実態は!家事万能のメイドママさん!一文字むつきちゃんで〜すっ!」
今度はむつきママか・・・。・・・・どんな格好でしてくるのかな。
今までも色んな意味で驚かせてくれたからけど・・・・。むつきママならどんなものでも似合いそうな気がする。
ちょっとドキドキしてしまう。
「では、むつきちゃんどうぞ〜!!」
ステージの幕が上がりむつきママが現れ・・・・・
「・・・・・・・」
「え、えと・・・・・どうですか、祐一さん?」
・・・・・ハッ!?いかん、あまりに綺麗だったので見とれて思考停止に陥ってしまった。
「いや、その・・・・・えと・・・・うん、き、綺麗だよ、むつきママ・・・・」
そう、むつきママの格好は純白のウェディングドレスなのだ。
その姿はなんというか天使といっても大げさではないと思うくらい綺麗だった。
むつきママも照れているのか、若干頬が赤くなっている。
今のむつきママを見ていると何故か俺も顔が赤くなって緊張してしまう。
「本当ですか?祐一さんにそう言って貰えると私も嬉しいですゥ」
と、照れながらもとびきりの笑顔で微笑んでくれるむつきママ。
・・・・・くぁ、むつきママ。その笑顔は反則的なまでに可愛い過ぎだって。
なんかむつきママが傍にいるだけで俺とっても幸せな気分です。
「あー、俺としてもむつきママのウェディングドレス見れて嬉しいよ。凄く似合ってる」
「なんか照れちゃいますね・・・でも普段ウェディングドレスなんて着る機会なんてないからちょっと得した気分です」
あはは、と笑って照れるむつきママはやっぱり可愛い。
料理も上手いし家事も万能。むつきママって理想のお嫁さんだよなぁ・・・・・。
「祐一くん?何ボケーッとしてるの?」
・・・・ハッ、気付くと不思議そうにうづきママが俺の顔を覗き込んでいた。
「イヤイヤイヤ、なんでもないよ。ア、アハハハッ」
いかん、いかん。
むつきママはあくまで教師で俺のママとしていてくれるんだから、妙なことは考えないほうがいいよな、うん。
「そうですか?なんか顔が赤いみたいですけど・・・」
「いや、大丈夫だから」
「いいからジッとしててください」
言いながら自分のおでこをコツンと俺の額に当てるむつきママ。
うお、むつきママの顔が至近距離に!
「熱は・・・・ないみたいですね」
「あ・・・うん。だから大丈夫だって・・・」
どっちかというと熱よりも胸がドキドキです。
「ならいいですけど・・・ホントに大丈夫ですか?」
「お、おう、勿論。バッチリだ。あまりに体調が良いので踊りだしたいくらいだぞ?」
「・・・・はい?」
「そうなの?じゃ、うづきと一緒に踊る?丁度いま、アニメの新しいオープニングの振り付けを練習中なんだ♪」
目をぱちくりさせるむつきママとは対照的にウキウキしているうづきママ。
「・・・・ごめんなさい。うづきママ・・・それはまたの機会に」
「そう?残念。じゃ、むつきちゃん、そろそろ時間だから一度退場だね」
「はい。それじゃ、祐一さん。また後でゥ」
「・・・・はい」
手を振りながらステージ裏に戻っていくむつきママを名残惜しく見送る。
む〜、写真でも撮っておきたいところだ。
「じゃ、次は咲耶ちゃんの出番で〜す」
・・・・・・・・。
・・・・・・・・咲耶?
・・・・・・・・・・すっかり忘れてた。
・・・・・・・・・・・・今までの全部見られてます?
・・・・えっとぉ・・・・・なんかもの凄く嫌な予感がして、もの凄い勢いで血の気が引いてく。
・・・・・・まったくお兄様ったら私というものがありながら、もうっ。
そもそもなんでこんなことになってしまったのかしら・・・・・。
・・・・
・・・・
・・・・
・・・・
私がうづきママにママさんたちの服装の理由を聞いたら、
「みんな自分が一番過ごしやすい服を着てるだけだよ」
「そ、そうなんですか?あ、あはは・・・」
・・・・・巫女服とかメイド服ってあんまり過ごしやすい服装じゃないと思うんだけどなぁ・・・。
うづきママの天使?の格好とか、さつきママの競泳水着も家で着るのはあまりにも不向きな気がするのは私だけ?
「あ、そうだ!咲耶ちゃんとみなづきちゃんもコスプレに挑戦してみる?」
「え、コスプレ・・・?」
「あ、なんか楽しそう。みなやってみたいです!」
「あら、何か楽しそうねぇ」
ここぞとばかりにみなづきちゃんが乗り気になって、やよいママが話に乗ってくる。
・・・・もしかしてやよいママってパッと見は冷静な大人の女性という感じなんだけど・・・・結構お祭り好きな人?
「楽しいことは・・・・皆で・・・・やりましょう・・・・」
え?え?
き、きさらぎママ・・・?な、なんで天井から現れるの?
「じゃあ、今から皆でコスプレショーをやることに決定しまーす♪」
え?え?え?
「え?わたしもやるんですか?」
「もっちろん、むつきちゃんも強制参加だよ♪」
「ま、待てッ!みんなってオレも入ってるのか!?」
「当然じゃない。キャハッ、さつきちゃんにはどんな衣装きてもらおうかな〜♪」
「ふ、ふざけんな!オレは嫌だからだなっ!!」
「う〜ん、あれもいいし、あ、こんなのもアリだよねっ♪」
「・・・・き、聞いちゃいねぇ・・・」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
う、う〜ん。思いっきり状況というかうづきママに流された気がしないでもないけど・・・・。
でも、いいわっ!こうなったら私の魅力をフルに使ってお兄様のハートをGetするんだから!
「みなづき・・・・咲耶の奴さっきから変だけど大丈夫か?」
「あ、いつものことなんで気にしないでください」
「そ、そうか・・・・・」
「あれ?どうしたの祐一くん?今度は顔が青くなってるよ?」
「い、いや、なんでもないよ・・・あはははっ」
首をかしげるうづきママに手を振って応える。
しかし今までのが見られているとして咲耶がどんな手段に出てくるかが問題なんだよな。
昔からあいつは思い込みが激しい上に妄想癖を持ってるから性質が悪い。
今度はどんな手段で迫ってくるやら・・・・。
「では、咲耶ちゃんの登場で〜す」
もはや御馴染みのようにステージの幕が上がって咲耶が現われる。
「どう、お兄様。似合うかしら?」
・・・・・そうきたか。
今度の衣装はレースクイーンです。
ハイレグではないものの、太ももが露になったギリギリのスカートに胸を強調したコスに、
いつもはツインテールにしてる髪を下ろして、いつのまに咲耶の奴あんなに成長してたんだとか。
って、落ち着け俺っ!相手は咲耶だぞっ!咲耶っ!
首を振って雑念を払う。
咲耶は妹!咲耶は妹っ!!
「・・・・うづきママ・・・・あんな衣装まで作ってたの?」
雑念を払った俺は咲耶から目を逸らしうづきママに尋ねた。
「もっちろん!やっぱり、やっぱりうづきとしては可愛いコスチュームがあったら、
片っ端から作って着て楽しまなくちゃいけないじゃない?」
そういうものなのか?
それは置いておいても何故他のママ達や咲耶のサイズのコスチュームまであるのかという突っ込みはしてはいけませんか?
「お・に・い・さ・ま・?」
ガシィッっと頭を掴まれ無理やり向きを変えられる。
当然そこには怖い笑顔の咲耶さんがにっこりと。
「はっはっはっは、冗談だ。咲耶。似合ってるぞ。ウン。そもそも咲耶ならどんな服だって大抵は似合うじゃないか。
もし似合わない服があるならそれは服のほうがおかしいだけさ」
「もうっ、お兄様ったら、そこまで誉めなくてもゥ」
両手を頬に当てて照れる咲耶は確かに可愛いし、コスチュームも似合ってると思う。
・・・・・・ただ、その細くて白い腕から信じられないほどの怪力が出せるのは何故でしょう。
「んふふふ〜、やっぱり咲耶ちゃんとも仲がいいんだね〜、ママは嬉しいよ、キャハッ」
「う、うづきママ・・・・」
いかん、これではさっきと同じパターンではないか。
「当然♪私とお兄様はラブで結ばれてるんですからゥ」
おいおい・・・・。
「って、くっつくなぁっ!」
「あら、いいじゃない、別に。お兄様ったら照れ屋なんだから」
いや、そのだから腕に密着した薄い布越しの柔らかい感触がぁっ!
「あははっ、祐一くん顔真っ赤だよ。本当照れ屋さんだね♪」
いや、照れ屋とかそう言う問題ではなくて!
・・・・うぐぅ、この二人に抵抗するだけ無駄な気がしなくもなかったり。
うぅ・・・なんかやたらと精神力を消耗してしまった。
これだから咲耶の相手は疲れるんだよなぁ。
・・・まぁ、役得がないといえば嘘にはなるんだけどさ。
「・・・・祐一くん、鼻の下伸びてるよ?」
「そ、そ、そ、そんあことはまったくないぞ!全然!!」
「別にいいけどね〜、仲良きことは良き事だしゥ」
ぐぅの音もでないです・・・・。
「ではお待たせっ!ラストは化学室のアイドル!謎めく神秘!奇天烈な発明は誰の為?
二ノ舞きさらぎこときーちゃんで〜すっ!!!」
いや、そこ普通逆じゃない?
と、俺のささやかでどうでもいい疑問は当然の如く無視されつつステージの幕が上がる。
きさらぎママはどんな格好でか・・・・・・な?
「・・・・・・・・」
無言のまま見つめてくるきさらぎママ。
え、えと・・・・・黒い三角帽子に黒マント・・・・?おまけに赤い魔術書のような本まで・・・・。
もしかしてその格好は、く、黒魔術師?
「・・・どう・・・でしょうか?」
一見、無表情だが微かに頬が赤くなってる様はとても可愛いんだけど・・・。
「え?あ、うん。い、いいんじゃないかな。凄くきさらぎママに似合ってるんじゃないか・・・あははは」
似合ってるというかハマリ過ぎというか・・・・凄く違和感ないんですけど。
「では・・・・ここで一つ召喚術を・・・・・・」
マントを翻して本をパラパラとめくるきさらぎママ。
「は?ショウ・・・・カン・・・・ジュツ・・・・!?」。
ってもしかしてアレ?異世界から何かを呼び出すアレ?
「・・・・・では・・・・・」
きさらぎママが小声で何かを呟くと本の上にボウッっと魔法陣のような光が浮かび上がり、
その魔法陣が床へと移動する。
「って、マジで!?」
「・・・・マジ・・・です・・・・」
きさらぎママそれはもしかしなくてもコスプレじゃなくて本職とかっ!?
「ワクワク。何を呼び出してくれるのかな♪」
「そこっ!ワクワクしないっ!!」
「え〜っ」
「え〜っじゃないっ!!」
「んじゃ、ドキドキッ」
「・・・・・も、いいです。好きにしてください」
うづきママの説得(?)を諦めて脱力した俺はあたりに風が吹いてることに気付いた。
その風は段々と強くなり部屋中を吹き荒らしていく。
やっぱりマジかっ!?マジなのか!?きさらぎママってそっち系の人!?
風が強くなるにつれてきさらぎママの魔法陣の光が段々と輝きを増していく。
「ドキドキ・・・何が出てくるのかぁ」
うづきママって本当にマイペースだね・・・。
部屋の以上なんて「何それ?」って感じで興味津々ときさらぎママに注目している。ちょっと尊敬してしまうぞ。
「では・・・・・大詰め・・・・です」
「おお!?」
風がいっそう強くなった途端に魔法陣の輝きに部屋中が包まれる。
あまりの眩しさに俺は目を瞑ってしまう。
そして・・・・風が止み、魔法陣の輝きも収まった。
恐る恐る目を開けてみる。
・・・・そもそもきさらぎママは一体何を呼び出したんだろう。
ドラゴンとかのような空想上の動物?それとも悪魔とか?
きさらぎママなら何を呼び出しても不思議じゃないような気がするが・・・・。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
きさらぎママの前にいるものを見てうづきママと二人で固まる。
「え〜と・・・・」
「・・・・ヒヨコ?」
そう・・・確かに出て来たのはヒヨコだ。
見た目は間違いなくヒヨコ。
だた、普通のヒヨコと違うのは・・・・
「・・・・大きいねぇ」
「・・・・そうだね・・・」
そう、大きさが普通じゃない。何しろゆうに2メートルはある。
でも見た目は確かにヒヨコだ。普通に考えたら2メートルのヒヨコなぞあり得ないが・・・・。
いや、それ以前にリアクションに困る。
どういった反応をとればいいのだろうか?珍しくうづきママも目をぱちくりしながら首を傾げてる。
「・・・・まだ・・・オチじゃありませんから・・・・」
「・・・・は?」
疑問に思う間もなくきさらぎママは本のページをめくり何か呪文を呟く。
すると非現実的な大きさのヒヨコは煙に包まれ・・・・そこから無数のヒヨコが湧き出てきた。
・・・・・キングスラ○ム?
「わぁっ!可愛い〜♪」
うづきママ復活。そこら中に溢れてるヒヨコを抱き上げてはしゃいでます。
・・・・・うむ、さすがきさらぎママ。なんだか判らんがすごいぞ。
ステージの上で左手に本を抱え右の手の平にヒヨコを載せているきさらぎママになんとなく拍手をしてしまう。
「・・・・・ぼ」
いや、だからそれキャラ違うから。
「・・・・・・・・・?」
え、と・・・・。
「あの・・・・きさらぎママ?このヒヨコたち・・・いつまででてくるの?」
そう、魔法陣からは未だに無数のヒヨコが溢れてくるのだ。
既に部屋中に足の踏み場のないほど増殖している。
きさらぎママは手にした本と魔法陣を見比べて、考え込んだような素振りを見せた後、
「・・・・では・・・また後で・・・・」
そう、言ってきさらぎママが立っているステージの一部がエレベーターのように地下へと降りていった。
「・・・・・・・え?」
俺が呆気に取られている間にもヒヨコ達はどんどん増殖して部屋を埋め尽くしていく。
「もしかして・・・・きーちゃん、逃げた?」
「・・・・・・やっぱり?」
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
魔法陣の効果が消えて部屋中のヒヨコに埋もれた俺たちが助かったのはしばらくしてからのことだった。
・・・・うぐぅ。
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UP Date 10/21