HAPPY★KANON

 

第14話

 

 

 

 

 

「お兄様っ!!やっと見つけたっ

既にみなに抱きつかれている状態でみなとは反対側から咲耶に抱きつかれる。

「・・・・・・・・・で?相沢くん?きっちり説明して貰えるわよね?」

「え、え〜と・・・・・と、とりあえず落ち着け、三人とも・・・・な?」

尋常ならざる鬼気を発する3人をなだめようと声をかける。

ちなみに俺は冷や汗ダラダラで、みなと咲耶は相変わらず俺にくっついたままである。

「わたしたちなら充分落ち着いてるよ・・・・ねぇ、香里?」

「・・・・ええ、そうね。あたし達はあくまで相沢くんとその子たちの関係を知りたいだけだから。ねぇ、栞?」

「・・・・はい。別に祐一さんが年下の女の子2人に手を出していた鬼畜とかそんなことはちっとも思ってませんから

・・・・・・・・・まったく効果はなさそうだ。

この状態じゃ説明するだけ無駄というか、とりあえず・・・・・・・・・選択肢は一つしかないようだ。

「じゃあなっ!!三人ともまた学校でなっ!!」

俺に引っ付いてた2人を引き剥がして脇に抱えると、猛然とダッシュする。

名雪たちがなにやら叫んでいるが既に後方に置き去りだ。

「あははっ、お兄ちゃん速い速い♪」

「あんっ、お兄様ったら大胆なんだから

・・・・・・・俺は学校に行った時、生きて帰ることができるのだろうか。

 

 

 

 

 

 

「ハァ・・・・ハァ・・・・ハァ・・・・」

「大丈夫、お兄ちゃん?」

さすがに2人を抱えて人間の限界を超えて走っただけあって、息も絶え絶えだ。

公園のベンチに座ってぐったりしている俺はみなに片手を上げるだけで応える。

「はい、お兄様」

咲耶から手渡された缶ジュースを一気に飲み干す。

「ぷはーっ。ありがとう咲耶」

「どういたしまして

「・・・・って、違う!!なんで2人がここにいるんだよっ!?」

「えへへ・・・・・・」

「そんなこと決まってるじゃない♪」

ちょっと困ったようにはにかむみなづきと対照的に自信満々な笑みを浮かべる咲耶。

「お兄様に会いに来たの

「いや、そーじゃなくて」

「・・・・・・お兄様、わたしたちが会いに来たら迷惑?」

「いや、そんなことは全然ないんだが・・・・」

・・・・・・・・・・潤んだ瞳で上目遣いは反則だ

咲耶は俺がこの瞳に弱いことを熟知してるから性質が悪い。

「・・・・みな、なんでだ?」

「え?えっとぉ・・・・・・、べ、別にただお兄ちゃんに会えないのが寂しかっただけとか、そんなことは全然ないよ、うん」

「み、みなづきちゃん!!全部喋ってるっ!!」

「え、え?あ、あはは・・・・・・」

咲耶と違ってみなはこの手の駆け引きに慣れてないので非常に助かる。

おまけに咲耶も動揺して口が滑ってるし、ふっ・・・・まだまだ甘いな。

「・・・・・・って、それだけ?」

「も、もうっ、お兄様ったら、細かいことは気にしないで

「うんうん、あ、みな、早くお兄ちゃんの家見てみたいな〜」

「・・・・・・・・・・みな、咲耶」

「なに?お兄ちゃん」

「なあに?お兄様

「俺が施設を出て3日しか経ってないぞ!?2日しか我慢できなかったのか!?」

「だって・・・・・・ねぇ、みなづきちゃん?」

「うん・・・・・・だってお兄ちゃんに会えなくて寂しかったんだもん」

「お兄様と施設で暮らすようになってから一日だって会えない日はなかったのよ?平気なわけないじゃない・・・・・」

・・・・・・なんか、説教する気も失せた。

さすがに2人して大人しくなられると俺の負けだ。

「わかった、わかった。.別に怒ってるわけじゃないから元気だせよ、な?」

「えへへ・・・だからお兄ちゃん、だーい好き!」

「お、おい!みなっ!」

「あ、みなづきちゃん、私を差し置いてお兄様に抱きつかないの!!」

「そんなの知らないも〜ん」

「こらっ、おまえら俺の意見も聞けーっ!」

 

 

 

 

 

 

「とりあえず・・・・・人前で抱きつくのはやめるよーに」

「えーっ、なんで〜?」

「いや、なんでっていわれても体裁が悪いというかなんというか・・・・」

「みなづきちゃん、お兄様は照れてるだけなのよ」

「あ、そっか。じゃあ、人前じゃなければいいんだね?」

「そういうこと。それに本気で嫌がってるわけじゃないから余り気にしなくてもOKよ♪」

「おまえらなぁ・・・・・・」

「細かいことはいいっこなし♪久々にお兄様と同じ部屋で寝れるんだから」

「ああ、そうかい・・・・・・・・・」

ん?今なんて言った?

 

「って、何ぃっ!?お前等家に泊まっていく気かのか!?しかも同じ部屋!?」

 

 

「もっちろんじゃない♪明日は休日なんだし、何も問題ないでしょ?」

いや、今の家は色々と問題アリなわけだが(汗)

「それとも・・・・・・私たちがお兄様の家に行ったら迷惑?」

「そうなの?お兄ちゃん」

・・・・・・・・・・まぁ、家族のこいつ等に隠し事をするわけにはいかないもんな。

ママ達のこともきっとわかってくれるだろうし、いっか。

「いや、そんなことは全然ないぞ。じゃ、行こうか」

「「うん」」

二人の笑顔に満足しつつ、俺は家へと向かおうとした。

そして重大なことに気付く。

「・・・・・・・・・ここはどこだ?」

「「え?」」

俺たちの間を吹き抜ける一陣の風。

あたりには日も暮れかけているせいか既に人気は無い。

「・・・・・も、もうっ、お兄様ったら、冗談が上手いんだから♪」

「な、何だ、冗談かぁー。みな、びっくりしちゃった」

「いや、冗談も何も本気だが・・・・・・・・」

あ、二人の顔が段々引きつってきた。

「え?だって、お兄様は道を知っててこの公園に来たんでしょ?」

「いや、全然。さっきは俺も無我夢中で走ってたし」

「あ、でも、調べればすぐにわかるよね?お兄ちゃんこの街で暮らしてたんだもんね?」

「7年も前の地理なんて全然覚えてないぞ」

「「「・・・・・・・・・・・」」」

再び一陣の風が駆け抜ける。

心なしか二人の視線も若干冷たい気もする。

「ねぇ・・・・・・お兄様?余り考えたくは無いんだけど私たちってもしかして・・・・・・・」

「おう、なんだ?」

 

「迷子?この歳になって」

 

「・・・・・・・一応、そうとも言うかもな」

「そうとしか言わないと思うんだけど・・・・・・」

「・・・・・・・・まぁ、なんとかなるだろ」

「そ、そうだよね!お兄ちゃんがいるんだから道くらいすぐわかるよね!」

「と、当然じゃない!お兄様がいれば何も問題はないわよ!」

さて・・・・・どうしたものか

 

(・・・・・大丈夫・・・・・・です)

 

「ん?」

何か今きさらぎママの声が聞こえたような。

「あ、お兄ちゃん、後ろ危ない」

「何?ぐはぁっ!!」

振り返った瞬間顔面に何かが激突する。

「いたた・・・・・一体何が飛んできたんだ?」

「サッカーボール・・・・・だよね?」

みなと咲耶は俺にぶつかった(と思われる)ボールを拾い上げ、しげしげと見つめている。

「どれどれ・・・?」

みなからそれを受け取ってよく見てみる。

確かにそれは一見何の変哲もないように見えるがどこかで見たようなひよこのマークがある。

そして火のついた導火線も。

「って、導火線!?」

言った瞬間にそれは爆発した。

そりゃ、避難する暇もないさ。

ま、間違いなく・・・・・・・きさらぎママの仕業だ。

「大丈夫?おにいちゃん」

「・・・・・・おう」

幸い(?)爆発の規模は少なく被害にあったのは俺だけで済んだようだ。

「あ、お兄様、こんなところに地図が落ちてるわよ?」

「あ、ほんとだ。さっきまで無かったよね?しかもこの公園にちゃんと印までついてるよ」

咲耶とみなが地図に気を取られている間に俺の目の前にひらひらと紙切れが落ちてくる。

その紙には

 

「みんな、おうちで待ってます。

        なるべく早く帰ってきてくださいね

                        きさらぎ」

 

きさらぎママ・・・・・あなたはボクの行動を逐一把握してるんでしょーか。

そして、もうちょっとまともに地図を渡す方法はなかったんでしょーか。

 

「いきなりボールが降ってきて爆発して、おまけに地図まで落ちてるなんて・・・・」

「咲耶、世の中には科学で説明できない不思議な出来事もあるんだぞ?」

「そうね、でもほんと、不思議なこともあるものねぇ・・・・」

「うん、みな、こんなの初めてだよ」

・・・・この二人が素直で非常に助かった。

面倒な説明が省けた。

・・・・・・・・・・もっとも本当に面倒なのは家に帰ってからかもしれないが・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

TOPへ  SSメニュー HAPPY★KANONメニューへ BACK NEXT

                                UP Date 4/17

採点(10段階評価で、10が最高です) 10
お名前(なくても可)
できれば感想をお願いします。

突っ込みなどがあれば容赦なくどうぞ。