GSと魔法使い(仮)

嵐のプレリュード!! その2

 

 

 

 

 

 

 

横島が、麻帆良に引っ越して二日目。ネギから用があるということで来てみれば、そこにはネギと一緒に見知らぬ少女が立っていた。

「すみません、横島さん。朝からお呼びだてしてしまって」

「別にいいって。どーせ今日は暇だったしな。それより、こっちの子は初めてだよな?」

ポンポンとネギの頭を叩きながら、ネギの隣に立つ髪の長い少女に目を向ける。

「はい、ウチは近衛木乃香言います。この度はウチのアスナとネギ君がお世話になったようでありがとございますー」

「木乃香?……ってことはもしかして君、学園長のお孫さん?」

「ん、ウチのこと知っとるんですか?」

「あぁ、昨日学園長からお孫さんがいるって聞いてたけど……、なるほど」

じっーっと、木乃香のことを見つめた後、納得したように頷く。

「……横島さん?」

首を傾げたネギに苦笑しながら手を振る横島。

「あ、いやぁ、学園長に似てないこんな可愛い子で良かったなー、と思って」

「あはは、可愛いなんてイヤやわー、もう」

ごん、と木乃香が何処からか手にしたとんかちを横島に振り下ろすが、絶妙に加減されてるのか横島が頑丈なのか、横島に堪えた様子は無く平然としている。

傍から見たら異様な光景なのだが、ネギも木乃香のとんかちに慣れつつある人間なのでこの場に突っ込む人間はいない。

「まぁ、それはともかくとして、今日は何の用だ?」

「あ、えっと実はですね、明日、アスナさんの誕生日なんで誕生パーティーをやろうと思ってるんですけど、良かったら横島さんも参加してくれませんか?」

「へー、アスナちゃんの誕生日か。別にいいけど……俺が参加してもいいのか?」

確かに面識はあるが何分、知り合って間もない身である。

部外者とも言える自分が参加していいのか疑問を感じるのは仕方ないだろう。

「そんなん平気やて。やっぱりお祝いはみんなでやったほうがアスナも喜ぶし」

「そういうわけなんで遠慮はしないでくださいっ」

と、言われては横島としても断る理由は無い。

「そこまで言われちゃ仕方ないな、喜んで参加させてもらうよ」

横島が了承すると同時に二人が顔を見合わせて頷き、

「したら、もう一個お願いがあるんやけど」

二人していたずらっ子の笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

「うーむ、まさか二日と経たずに戻ってくるとは」

アスナのプレゼントを買いに行くのでそれに付き合って欲しいと言われ、渋谷まで来ていた。

都内から麻帆良に引っ越したばかりなのに二日と経たずにとんぼ返りなのだから横島が苦笑するのも無理はない。

「無理ゆーてもーてすいません。ウチらあんまりここらに詳しくないもんで」

「いや、まぁ、俺もそんなに詳しくないんだけどな」

確かに横島は都内に住んでいたが、万年金欠かつ、服などにもあまりこだわりのない彼にはあまり縁のない場所だった。

「そうなんですか?」

「あぁ。だけど心配するな、応援はしっかり呼んである。もうそろそろ来るはずだけどな」

買い物の場所が渋谷、と聞いた時点で既に連絡を入れてある。彼女ならばこの渋谷は十分テリトリー内のはずだ。

「応援って……どんな人やの?」

「ふっふっふ、それは実際に会ってみてのお楽しみだな」

横島がニヤリと笑うのと、声がかけられたのは同時だった。

「お待たせ、横島クン。その二人が話してた子?」

その声に木乃香とネギが振り返ると、そこにはセーラー服を来た長い髪の少女が立っていた。

なるほど、確かにジージャンにジーンズの横島に比べれば遥かにこの場に馴染んでいそうな雰囲気はある。

―――――――――――ただ一点を除けば。

「…………机?」

そう、その少女の背中には昔の学校で使うような古い机が背負われていた。

「紹介しよう、机妖怪の愛子だ」

「はじめまして、横島クンから話は聞いてるわ。友達の為にプレゼントを買う……!これも青春よねっ!」

「机……」

「……妖怪?」

唖然とする二人に横島はいたずらに成功した悪ガキの笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

「はー、ウチ、妖怪の方初めてみたわー」

「僕もです、でも外見は普通の人と変わらないんですねー」

「まぁ、この机が無けりゃな」

「しょうがないでしょ、私の本体なんだから」

ファーストインプレッションから復帰した二人は実にあっさりと愛子と打ち解けていた。

愛子が元々人間とさほど変わらない外見であったこと、木乃香のおおらかな性格やネギの子供ゆえの純真さも影響しているのだろう。

あまりに二人があっさりと愛子を受け入れたので横島としては少々拍子抜けである。

「にしても僕、てっきり妖怪は悪い人たちばっかりだと思ってたんですが、愛子さんみたいな良い人もいるんですねー」

「騙されるなよ、ネギ。こいつは前科持ちだ。油断してるとパクってやられるぞ?俺も昔、エライ目に遭わされたんだからな」

と、横島は言うが、その口調とは裏腹に顔は笑っているため、本心ではなく単に意地悪で言っているだけだろう。

「そーなん、愛子さん?」

「や、やーねぇ。昔の話よ、昔の。それに、ホラっ私は別に誰かを傷つけたわけじゃないんだしっ、無害よ、私は、ねっ!」

確かに最終的には取り込んだ人間も全て元の時代に帰したし、誰一人傷つけていないのだから、結果的には無害と言えるだろう。

が、仮にあの時、美神が愛子の正体を看破していなれば横島はいまだに愛子の学校で終わることのない学校ごっこを繰り返していたのかもしれないのだ。

そう考えると中々にゾッとしない話である。

「はー、人は見かけによらないもんやなぁ」

「そうそう、木乃香ちゃんも人を見る目はちゃんと養うべきだぞ」

「横島クンにだけは言われたくないセリフね……」

愛子がボソッと呟くが、横島の本質をまだ理解していないネギと木乃香はその言葉に顔を見合わせて首を傾げていた。

「でも、愛子さんはホンマに普通の人と変わらん見た目なんやねー」

「もしかして愛子さん、本当は普通の人間でただ机を背負ってるだけじゃないんですかー?」

「あはは、言うわねー、ネギ君。ねぇ、横島クン」

アハハ、と冗談交じりに笑うネギの頭を撫でながら愛子は、視線を横島へと向ける。

それなりに長い付き合いである横島はそれだけで愛子の言わんとしていることを察して、その首を縦に振る。

「よし、やっちまえ」

「そうこなくちゃ♪」

「え?何をですか?」

「んー?」

背負っていた机を地面に下ろした愛子が何をするのか興味深げに見つめるネギと木乃香。

「ネギ君に私が妖怪だっていう証拠を見せてあげるだけよ」

と、愛子が笑顔で言ったとたん、その姿がフッと消える。

「わわっ、消えた?」

「あれれ?愛子さん消えてもーた?」

二人がそれに驚くのもほんの一瞬。

「わーっ!?机から舌がーっ!?」

次の瞬間には机の中から現れた舌がネギを捕らえ、その中へと飲み込んでしまう。

「よよよよ、横島さんっ!?ネギ君食べられてしもーたっ!?」

「大丈夫、大丈夫。別に取って食われたわけじゃないから」

その光景を見て慌てふためく木乃香を、頭を撫でて宥める横島。

が、同時に素早く回りに目を馳せて辺りを警戒する。

愛子がネギを飲み込もうとした瞬間、凄まじい殺気を感じたからだ。

「ホ、ホンマに大丈夫なん?」

「あぁ、すぐに出てくるから大丈夫だって。俺が保障する、ほら」

辺りを警戒しつつも、木乃香の肩を抱いて愛子のほうへ向けさせる。

しばらくすると、机の中からペッと吐き出されるようにネギが出てくる。

「ネ、ネギ君、大丈夫?」

「あ、はい。全然平気です」

慌てて木乃香がネギに駆け寄るが、ネギ自身に傷もなく、本人もけろっとしていた。

「これで二人とも私が妖怪だって信じてくれたかしら?」

「わ、足が透けとる」

机の上から身体を出す形で現れる愛子。

膝から下は机に溶け込むような形で透けており、流石の木乃香も目を丸くした。

木乃香はほわー、と感心した様子でそれを見つめ、ネギは、

「はい、バッチリですっ!青春って素晴らしいですねっ!!」

「うふふ、そうでしょう?ネギ君ならわかってくれると思ったわっ!」

ガシっと手を取り合うネギと愛子。

青春に燃える生徒である愛子と、立派な教師になろうとするネギとの間に何かしらのシンパシーが芽生えたらしい。

無論、今の愛子の行動を発端とした一連のやりとりに周囲の人間はどん引きしており、愛子とネギからきっちり三メートルの距離を取って空白の地帯ができあがっていた。

「何やっとんだ、あいつらは……」

さりげなく横島と木乃香も同じように距離を取って他人の振りをしているあたり、侮れない。

そんな二人に苦笑しつつ、安堵のため息をつく横島。

先ほど二人から離れる際に木乃香の肩を抱いた瞬間から、首筋に刺すように突きつけられていた殺気がようやく霧散したからだ。

辺りを改めて見回すが、特に不審な気配は感じられない。少なくとも今の時点では。

やがて、何やら熱く語り合っている愛子とネギを周りの通行人は白昼夢のようなものとしてなかったことにしたらしく、引いていた人並みも元通りになっていく。

「おーい、お互いの親睦を深めるのはその辺にしてアスナちゃんへのプレゼント探そうぜー」

「そやなー。ぼやぼやしとったら日が暮れてまうし」

頃合いを見計らって横島が声をかけると二人は正気(?)を取り戻し、

「じゃ、私がおススメのお店を案内してあげるわ、こっちよ」

「はいっ、よろしくお願いしますっ!」

愛子に手を引かれて歩き出すネギ。

教師と生徒……と、いうよりは完全に子供と近所のお姉ちゃんという図式だ。

横島と木乃香はその光景を微笑ましく見守りながら並んでその後をついていく。

そのまま四人連れ添ってあーでもない、こーでもないと色々な店を渡り歩いていく。

が、度々横島が視線を辺りに這わせてそわそわしていて、どうにも挙動不審だ。

「どうかしたの、横島クン?」

「あー、いや、なんでもない。それよりコレなんかどうだ?」

「あ、オルゴールですか?いいかもしれませんね」

「おー、アスナの好きな曲のやつがあるやん。ウチらのはこれにしよか?」

横島が指差したオルゴールを二人は気に入ったらしく、あれこれどのデザインのオルゴールにするかを選びながら盛り上がっている。

「……横島クン?」

「んー、誰かに付けられてるみたいなんだけど、悪意はなさそうだ。気にしないでいいと思うぞ。多分」

と、ネギ達には聞こえないように小声で話す愛子と横島。

おそらく先ほどの殺気を放った人物が後をつけているのだろう。

相手の姿までは見つけられていないが、時折何者かの視線をはっきりと感じ取っていた。

「そ、横島クンがそう思うんならいいけど」

誰かに付けられている、と聞いて良い気はしないが、横島が大丈夫だというなら問題ないだろう。

気が付けばネギたちは選んだオルゴールをレジへ持っていって包装をしてもらっている。

「俺たちも行くか」

「そうね」

ネギ達を追ってレジへと向かう。

ちなみに横島は既に包装された包みを脇に抱えている。

中身は愛子セレクションの可愛らしいクマのぬいぐるみである。

「今日はサンキューな、愛子」

「どーいたしまして、これくらいならお安い御用よ」

それなりに役得もあったしね、と横島に聞こえないように小声で呟く愛子。

「ま、修学旅行直前に転校しちゃうような薄情なクラスメイトにこうして付き合うのも青春よねー」

「ぐ……」

クスッと笑みをこぼす愛子に横島は返す言葉も無い。

「俺だって好きで転校したわけじゃないわい」

「そうなる原因は横島クンにあったと思うけど?」

「そーいや、今度の学校の修学旅行はいつなんだろ?」

この話題は自分に分が悪いと判断した横島はあからさまに話題を切り替える。

「もう修学旅行が終わってたらせつないわよねー」

「いやいや、それは流石に笑えんから」

来週から麻帆良高に通うことは確定しているが、それ以上のことは何も聞いていない。

横島とて一介の学生である以上、修学旅行というイベントはそれなりに楽しみにしてた身だ。

どうせなら新しい学校だろうと修学旅行は思う存分楽しみたいと考えるのは当然だろう。

無論、目的の九割は夜の覗きにあることは言うまでもない。

「大丈夫、大丈夫。その時にはちゃーんとお土産買ってきてあげるから」

「おまえ、楽しんでるだけだろ……!」

「おほほ、何のことからしら?」

横島が半目で睨むが、愛子がその程度で怯むはずがない。その視線を白々しい笑顔で軽く受け流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TOPへ  SSメニューへ タイトルへ BACK NEXT

採点(10段階評価で、10が最高です) 10
お名前(なくても可)
できれば感想をお願いします

UP DATE 08/6/27

************************************************************

長くなりそうだったので一旦切ると、今度は中途半端に短い罠。
適度な長さって難しい。
修学旅行まであと二話ってとこですかね。多分。

>平手打ちの子〜
>少女の正体は〜
皆様のご推察のとおりです。そんな引っ張るもんでもないんですが、彼女の出番はもうちょい先になりそうです。
まぁ、原作に出てると言っても、ロクに描写がない以上、中身は完全にオリキャラになってしまうのが仕様なんですけども。

>横島の行動の描写がとてもよくかけていてとても面白いと思います。早く続きを読みたいです。
描写はどこまで書くか割と難しいところなんですよね。他の人と比べると自分のは描写が多い気がするけど、別に他の人の読んでても描写が足りんなー、とかは思わないし。
もっと文章力あれば気にならないのかもしれませんが。
更新速度に関しては月1,2回程度ってことでご了承ください。これ以上は無理ッス。

>初めまして、GSと魔法使い(仮)読みました面白かったです
>謎の少女の正体なんとなくわかります。何故、麻帆良にいるんだろう…
ありがとうございます〜。その辺はおいおい本編で説明するつもりです。
誤字報告もありがとうございました。

>ところでわたし前回楓フラグと書いたものなんですが、まぁ、恋愛フラグは別になくともいいんですよ。掛け合いが見たいだけなんです。
おおぅ、勘違い失礼いたしました。シロと楓の掛け合いは出せても修学旅行以降になっちゃうでしょうねぇ。
まだ楓との接点が薄い……!GSキャラは横島以外にもゲストっぽい形で頻繁に出していきたいとは思っていますがががっ。

>にしてもやっぱり裕奈とまき絵はあっさり意気投合ですよねぇ、性格的に。
>今後もこの4人との接点が増えていってほしいものです。
>何せ最近の原作では亜子にアキラは出番がある度に不幸度合が加速してますし。こっちでは幸せになってほしいものです。
>新エピソードに入ったことだし、期待しつつ、今回はこの辺で。それではまた。
問題は予想以上に唯一魔法事情を知っているアキラが動かしにくい…………っ!orz
性格的にも一歩引いて見守るようなキャラだから今後の動かし方がしんどそうです(汗
正直魔法界編まではさっぱり考えてないですが、ちゃんと活躍の機会は与えてあげたいですね〜。

>最近のSSで一番気になってます!!がんばってください
ありがとうございますー。ご期待に添えられるよう頑張りたいと思います。