GSと魔法使い(仮)

 

ヴァンパイア・パニック! その2

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……エヴァンジェリンさんはどこへ?」

エヴァによって操られたまき絵からここで待ち受けるとメッセージを受け、いざ来て見ればそこにいたのは茶々丸一人。

おまけに何故か浴場の壁が氷の魔法とおぼしきもので大穴を開けられていた。

ネギでなくとも、何があったのか問いたくなる状況だろう。

「マスターは他の方を追って出て行かれたました」

と、茶々丸はそう言って、大穴を指差す。

「ほ、他の人って誰のことですかっ!?ま、まさかまき絵さんの他にも誰か巻き込んでるんですか!?」

「巻き込んだ、というならば佐々木さんのほかにも大河内さん、明石さん、泉さんが半吸血鬼化しています。ですが、今マスターが追っているのは全く別の方です」

「ええー!!なんでそんなことしてるんですかっ!?っていうか一体誰を追ってるんですかーっ!?」

予想外の事態にネギの思考が追いついていかない。おたおたしながらも茶々丸に説明を求める。

ネギから説明を求められた茶々丸はどう説明したものか思案し、ありのままの出来事を伝えることにした。

「マスターを押し倒した男性の方に変態幼女呼ばわりされたので、激昂して追跡にいかれました」

「は?」

封印から解き放たれたエヴァの圧倒的な魔力はネギも感じていた。

そのエヴァを押し倒した?

それで変態幼女?

いかに優秀だろうと、所詮は10歳の少年。予想もしていなかったことを立て続けに聞かされては思考も停止しようというものだ。

「とにかくマスターがお戻りになられるまでは私がお相手いたします」

ネギが固まって数分後、茶々丸がゆっくりと構えを取る。

「…ハッ!ハイッ、今度は前のように行きませんよっ!」

茶々丸の言葉にようやく再起動したネギは武装した銃や杖を構える。

エヴァとの再戦に備えて、自らのアンティークコレクションから選りすぐった自慢の品々だ。

「失礼します、ネギ先生」

「うっ、くうっ!!」

戦士タイプである茶々丸に足を止めての戦いが不利だと言うのは以前の戦いで嫌と言うほど身に染みた。

突進してくる茶々丸に対しネギは杖に乗り、急加速でその場を離脱する。

が、茶々丸もブースターを点火し、すぐさまネギを追ってくる。

「う、うわっ!」

ネギが呪文を唱えようとしてもワイヤーで繋がれたロケットアームを断続的に放つことでその隙を与えない。

しかし、ネギのほうも相応の準備はしてきている。

魔法銃を始めとした、身に付けたマジックアイテムの数々で茶々丸の攻撃をしのぎ、時には反撃を繰り出す。

「あのっ!エヴァンジェリンさんは今どうなってるんですかっ!?」

今、こうして戦っている茶々丸はあくまでエヴァの従者に過ぎない。

ここで茶々丸を押さえてもエヴァをどうにかしない限り意味はないのだ。

「ご安心を。マスターならこちらに向かっていますのでまもなく現れると思います」

「そうですか。良かった……」

茶々丸の攻撃を避けながら安堵のため息をつくネギ。

いかに敵とはいえ、自分の生徒でもある茶々丸やエヴァを安易に傷つける気はない。

彼女らを傷つけずに勝つ方法を考え、その為に罠もしかけた。

だが、肝心のエヴァがいなければその罠も意味はない。

後はエヴァが現れるのを待ち、逃げると見せかけて二人をその場所へ誘導すればいい。

茶々丸の攻撃をしのぎながらネギは目的の場所へと飛翔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「この私から逃げられると思うなよ、この変態がっ!魔法の射手(サギタ・マギカ)連弾・闇の29矢(セリエス・オブスクーリー)!!」

全力で走り去る横島に向けて、エヴァの手から黒い弾丸が放たれる。

29本にも及ぶ闇の弾丸は横島の逃げ道を塞ぐかのように広範囲に降り注ぐ。

「メイド好きの変態幼女に変態呼ばわりされる覚えはないわーっ!!」

その全てを避けきるのは不可能と判断した横島は右手に霊波刀を出し、避けきれないものは全て叩き落していく。

「ほう、霊波刀か、なかなか珍しい技をもっているじゃないか」

またも変態幼女呼ばわりされたことに一瞬こめかみがピクリとするが、その直後に横島が見せた霊波刀の出力、魔法の射手を危なげなく撃ち落した手腕に感嘆の声を漏らす。

ただの変態かとも思ったがなかなかどうして、手ごろな玩具としては充分に楽しめそうだと内心で舌なめずりする。

そして眼下では、魔法の射手を撃ち落すために足を止めた横島が再びメイド姿の少女4人に囲まれつつあった。

「いくら美少女でもこんな迫られ方はいやだーっ!!」

これが男ならば何も遠慮せずに殴りつけるところだが、半吸血鬼化していようとも流石に自分よりも年下らしき美少女達にそれはできない。

「おおっ!?」

裕奈とアキラの蹴りを四つんばいになってかわす横島。

4人のメイド少女たちのスカートはどれも短く、パンチラどころかパンモロ。

いかに年下といえども、横島の煩悩が刺激されないわけがない。

瞬間、横島から霊力が溢れ出し、その動きも一段階早いものへと移行する。

四つんばいの姿勢のままカサカサーっと、少女たちの包囲網を抜け出す。

「げっ!?」

「魔法の射手連弾・氷の17矢!!」

そこに間髪入れず、エヴァの放った氷弾が横島を襲う。

「わーっ!?」

「フフン、仕留めたか?」

着弾の衝撃と冷気によって横島の居た場所を白煙が覆っていて、横島がどうなったかは確認できない。

とはいえ、先ほどまであれだけの動きを見せていた男だ。この程度で終わり、ということはないだろう。

あの男がどう反撃してくるのか、それをいなし力でねじ伏せる。

それを想像しただけで心躍る衝動が湧き上がってくるものだ。

<マスター、お楽しみのところ申し訳ないのですが>

「む、どうした茶々丸」

気分が高揚していたところへ従者からの念話。

いささか水を差された気にもなりながら答える。

<先ほどからネギ先生が待ちわびておられるのですが>

「…………あ」

自分が呼び出し、なおかつ本来の目的であるネギのことをすっかり忘れていた。

つつー、と額に冷や汗が流れる。

<停電復旧までの残り時間もあります。お戯れもほどほどに>

「う、うむっ。すぐに戻る。それまでお前がぼーやの相手をしてやれ」

<了解いたしました>

予想外の闖入者に我を忘れて飛び出してしまったが、本来の目的はネギの血を吸うことで呪いを解くことだ。

それを忘れて余事にかまけていては本末転倒だ。只でさえ、自分には時間制限があるのだから。

魔法の射手が着弾した辺りの白煙がようやく晴れるがそこに横島の姿はない。

おそらく白煙に紛れてどこかに潜んでいるのだろう。

茶々丸との念話の最中も注意は怠っていない。

男の見事なまでの穏行に舌打ちする。

時間制限がある以上、自分であの男を探してる余裕はない。

かと言って逃がすつもりもなかった。

ここは下僕と化したクラスメイト達に捜索させ、呪いを解いてからゆっくりと相手をしてやろうと考える。

だが、あれだけの動きをしてみせる男にクラスメイト達だけでは役不足かもしれない。

「フン、せいぜい楽しませてもらおうか」

もう一人の従者に念話で命令を下し、エヴァはネギと茶々丸の元へと飛び去っていた。

 

 

 

 

 

「行ったか?」

エヴァが飛び去っていくのを確認した横島が茂みからひょこっと顔を出す。

「しかし、半端ないなぁあのガキ……」

大浴場での一撃、そして先ほどまでのやりとりからその力は下級魔族すら圧倒できる力を秘めている。

まともにやりあったらとても勝ち目はないだろう。

どこにどういった理由で飛び去って行ったのかはわからないが、コレ幸いにと逃げ出したいところだが、それができない理由もあった。

「くすくす、見ーつけた♪」

「はっ!?」

背後からかけられた声に硬直する。

「うわっ!」

背後にいた少女が繰り出したのはリボン。

そのリボンは意思を持ったかのように少女の思うがままに動き、横島を絡めとろうとしなやかに舞う。

だが、そこは幾つもの実戦で鍛えられた反射神経を持つ横島。

不意の一撃だろうとすんでのところでそれをジャンプしてかわす。

が、その間に次々と他の三人の少女も集まってくる。

「流石にこの子たちを見捨てるわけにもいかんよなぁ……」

吸血鬼と化した人間がそのまま陽の光を浴びると灰となって死んでしまう。

男ならともかく美少女がそうなるのは横島にとって看過できるものではない。

エヴァからすれば女子供に手をかける気も無く、まき絵たちのこともネギとの件が終われば無事に解放するつもりだったのだが、それを横島が知るはずもない。

「とりあえず、正気に戻ってもらうか……っと!」

少女達の攻撃を巧みに避け続け、ある箇所へと誘い込んでいく。

それは先ほどまで自分が潜んでいた場所。

「ちょーっと、ごめんな」

じりじりと自分を包囲するように迫ってくる少女達に向けて謝る。

「ぽちっとな」

トン、と自分の足元を叩く。

「え?」

「あれ?」

「!?」

「わぁっ!?」

横島の立っていた場所以外の地面が崩れ、少女達は突如として口を開けた大地の穴へと飲み込まれていく。

少女たちが飲み込まれた穴から程なく淡い緑色の輝きが漏れ出す。

「上手くいったかな?」

横島がそーっと穴を覗き込むとそこには4人の少女が折り重なるように眠っていた。

吸血鬼化を解除するには大ボスである吸血鬼を他の吸血鬼が噛み、秩序を崩壊させる。

とはいえ、ここにはこの子達以外の吸血鬼はいない。

クラスメイトのヴァンパイアハーフを呼ぶという手もあるだろうが、今からでは夜明けまで間に合わないだろうし、そもそもここがどこなのかもわからない。

ならば、この子達の洗脳を解いた上で、この子達自身にあのエヴァンジェリンとかいう吸血鬼を噛まさせるしかない。

そこで、白煙に紛れて落とし穴を掘り、そこに洗脳を”解”くための文珠を仕掛けた。

後はなんとかして自分がエヴァを抑えこみ、この少女たちの誰かに彼女を噛ませればいい。

もっとも、エヴァがネギの元へ飛び去っていかなかったらここまで上手くはいかなかっただろうが。

「とりあえずは、と。おーい」

少女達を穴から運び出し、ポニーテールの少女、大河内アキラを起こしにかかる。

何故、その子かというとスタイル・顔立ちともに横島のストライクゾーンに最も近かったからだ。

裕奈もスタイル的にはなかなかだったが、顔立ちがやや幼いため、アキラを優先した。

「う……、え?」

「お、目が覚めたか?」

ペチペチと横島に頬を叩かれ目を覚ますアキラ。

そして自分が置かれた状況に戸惑う。

目の前にはガクランにバンダナの自分より年上っぽい男。

そして自分は何故かメイド服。

おかしい。自分は確かまき絵たちと一緒に大浴場にいたはずだ。

それがいつの間にかメイド服に着替えさせられ、見も知らぬ男に抱きかかえられている。

そして混乱する思考で一つの答えを導き出した。

 

「俺はゴーストス…いぶらっ!?」

「へ、変態ーっ!!」

 

アキラの繰り出した拳が横島の顔面にクリーンヒット。

なまじ半吸血鬼化しているだけにそのパワーは尋常ならざる威力を秘めていた。

自分が変質者にさらわれ、このような状況になったと盛大な勘違いをしているアキラ。

男が何かを言いかけていた気がするが、そんなものが耳に入るはずも無い。

「ち、ちがうっ!俺は変態じゃなくってゴーストスイーパーだっ!ほらほら、GSの免許証っ!」

ガバッと起き上がりながら自らのGS免許を取り出し、無罪を訴える。

「え、え?あ、あぁと?」

訳の分からぬ自体に取り乱したアキラだが、元々は落ち着きのある聡明な少女だ。

GSの免許を見せられたことで、多少なりとも冷静さを取り戻す。

無論、彼女はGS免許など見たことはなく、それが本物かどうかの判別はつかなかったが、目の前の少年に悪意は感じられなかったこともあり、とりあえず話を聞こうと判断したが。

「まき絵、裕奈に亜子までっ」

自分の傍に倒れているクラスメイト達を見て、動揺するが横島が心配はないと、アキラを宥める。

「あー、大丈夫、大丈夫。今のところ気を失ってるだけで怪我とかはないから。とりあえず話を聞いてくれるか?」

さしあたってすぐに危険はないと感じたアキラは動揺しままの表情で横島の言葉に頷く。

「まず君たちの状態なんだけど吸血鬼に噛まれて吸血鬼化してる」

「え?」

いきなり予想もしていなかった言葉にアキラの身体が固まる。

「ホラ、ここに牙が生えてるだろ?それが吸血鬼化の証なんだ」

横島の言われたとおりに自分の歯を確かめるとそこには有り得ないほどに尖った犬歯が確かにあった。

「俺がここにいるのはまぁ、事故だったんだけどいきなり君たちを噛んだ吸血鬼に襲われてさー、とりあえず俺がキミ達の洗脳を解除したところ。ここまではOK?」

「……はい」

正直、いきなり全部信じろと言われても無理な話だが、最近噂になっていた桜通りの吸血鬼の件もある。

「で、問題なのはここからなんだけど……」

「ケケケ……ココニイヤガッタカ」

「ひっ」

横島がさらに話を続けようとしたところ、不意に第三者の声が響き渡る。

それに悲鳴を上げたアキラを背後に庇いつつ、横島が霊波刀を構える。

声のしたほうを探ると闇から浮かび上がるように一体の人形が宙を浮いたまま進み出てくる。

「ひ、ひえええっ!?動く人形っ!?」

昔から人形には良い思い出のない横島が情けない声を上げる。

大量のモガちゃん人形に迫られたり、マネキンにされた挙句、女性用の下着を着せられたり、髪の毛をそられたという過去の忌まわしい悪夢の数々が彼の脳裏に浮かんでいるのだろう。

それでも辛うじてその場に踏みとどまったのは背後に庇ったアキラがぎゅっと横島の腕にしがみついていたせいだ。

現れた人形に対する恐怖よりも腕に感じる柔らかい感触に意識が集中し、横島の霊力がどんどん上がっていく。

アキラが密着するほど横島の鼻息が荒くなっているのだが、動く人形を目の前して怯えるアキラがそれに気付く余裕は無い。

(悪くない……悪くないぞぉおおおっ!)

内心でそう叫びながら横島は人形へと目を向ける。

「オマエガ御主人ヲ、コケニシタッテイウGSカ。久々ニシャバデ暴レラルンダ。セイゼイ楽シマセテクレヨ」

巨大なナイフを両手に振りかざし、人形が襲い掛かってくる。

「なんのっ!!」

アキラを庇うために横島は非常に後ろ髪を引かれる思いをしながらもその腕を放し、自ら前進し、身を捌くことでその刃をかわす。

その駆け抜け様に霊波刀を横に薙ぐが、それはナイフにがっちりと受け止められる。

見た目の小ささとは裏腹に相当なパワーを秘めているようだ。

そのまま霊波刀をはじき返すように刃が翻り、次々へと二振りのナイフが横島に襲い掛かる。

「くそーっ!なんだって俺が襲われなきゃならんのだっ!一体お前らは何者じゃーっ!?」

いきなり見知らぬ場所へ放り出され、訳もわからず吸血鬼や人形に襲われているのだ。

その叫びはもっともなのだが、そもそもの原因が自分の迂闊さに端を発しているとは微塵も考えてない。

「ケケケ、ボンクラナ外見ノ割リニハ中々ヤルジャネーカ」

「ボンクラとはなんだーっ!!」

人形の攻撃を全て捌きながら隙を探る横島。

文珠を使えばこの人形を倒すことは可能ではあるだろう。

だが、なにぶん相手の事情が何も掴めていない。

降りかかる火の粉を払うのに躊躇いはないが、かといって訳もわからずに相手を滅するのも躊躇われた。

御主人という言葉からこの人形はさっきの吸血鬼の下僕なのだろう。

さっきの吸血鬼から殺気は感じたが、それは感情からくるもので明確に人間に対して害をなそうという感じはしなかった。

なにぶん、自分がどこにいるのか、相手の目的すらもわからない以上、こいつからまず情報を引き出すべきかと判断する。

「一体、おまえの主人の目的はなんだっ!?」

横になぎ払われた刃を身を低くすることでかわし、下から突き上げるように霊波刀を振るう。

だが、人形も躍るように身を翻し、それをかわすと同時に後ろへ大きく距離を取った。

「サーテ、ナンダロウナ?自分デ当テテミナ?」

「ハッ、まさか……」

何かを思い当たったのか、横島の顔に驚きと動揺が浮かんでいた。

その目が一瞬だけ、アキラやまだ眠っている他の三人に向けられる。

 

「メイドさんのハーレムを作ることかあぁぁぁぁぁっ!?」

 

横島の叫びにアキラばかりか人形までもこけた。

「絶対に違うでしょーっ!!」

「ナルホド……ゴ主人ガ手玉ニトラレルワケダゼ」

こけた二人は顔をあげて、それぞれに突っ込み、感心していた。

「と、コケが入って油断した隙に……!」

「ウオッ!?」

横島が手の平を人形の顔に押し付けると同時に光が人形を包み込む。

「くくく……これで貴様は俺の操り人形と化した。素直に俺の質問に答えてもらおうか」

光が人形を包み込むと同時に距離を取っていた横島が人形を指差しながら宣言する。

アキラがいるので本人は精一杯格好つけているつもりなのだろう。

「アイヨ、何カラ答エリャイインダ?」

すくっと立ち上がった人形の言葉に驚くアキラ。

さっきまで敵対してたものがこうもあっさりと横島に従うものなのか?

「な、何したんですか?」

「やー、ちょっと親玉の情報が欲しかったもんでな。俺のとっておきでこいつを”従”えたんだ」

効くかどうかは怪しいところだったんだがなー、と内心で呟く。

「へぇー、凄い。そんなこともできるんですね」

「まぁね。とりあえずお前の名前と目的は?」

感心するアキラの視線に心地よいものを感じながら人形に話しかける。

「俺ノ名前ハ『チャチャゼロ』ッテンダ。目的トイワレテモ俺ハゴ主人ニオマエノ足止メヲシロッテ言ワレタダケダゼ」

「なるほど。で、お前のご主人とやらはどこに何しに言った行ったんだ?」

あれだけ楽しそうに自分を追ってきた割にはあまりに唐突に飛び去っていた。

「アア、ソレハアレダ。ネギトカッテガキノ血ヲ吸イニイッタンダヨ」

「ネギくんがっ!?」

そのチャチャゼロの言葉に驚いたのは横島ではなく、アキラのほうだった。

「知ってんの?」

「えぇ、私たちの担任の先生なんです。あの、なんで吸血鬼がネギくんを狙ってるんですか?」

「ソリャゴ主人ニ掛ケラレタ呪イヲ解ク為サ」

「どういうことだ?」

「ケケケ、ソレガ実ニ間抜ケナ話ナンダガヨ」

そうしてチャチャゼロはエヴァが15年前に登校地獄という呪いをかけられたこと、その呪いを解くにはネギの血が大量に必要なこと、今のエヴァが魔力を発揮できる時間に制限があることなど、洗いざらい全部を話す。

自分の主人の失態を話しているというのに実に楽しそうだったのが印象的だった。

「なるほど、色々突っ込みたいところはあるが話は大体わかった」

「あの、ネギ先生を助けてください」

ぎゅっとアキラが横島の手を握って懇願する。

「おう、任せとけっ!」

元よりアキラや他の少女たちを救うにはあの吸血鬼を抑えるしかないのだ。

そのついでにそのネギとかいう子供を助ければいいだけの話だ。

アキラのような美少女に懇願されて横島が断るはずもない。

「じゃ、ちょっと急ぐか。そのガキがやられたら元も子もないもんな」

そういって横島は右手にチャチャゼロを抱え、左手にアキラの手を握って走り出す。

「あ、あの裕奈たちはっ!?」

「とりあえずことが終わるまではあのままっ!起こして説明してる暇はないしな。大丈夫、あの子達が危ない目に遭わない様に手も打ってある!」

彼女達の中心には”守”の文珠を仕掛けてある。

もし、彼女達に何か起きようものならば文珠の結界が自動的に発動するだろう。

そして走りながらアキラにこれからの作戦を説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

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UP DATE 08/4/26

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>面白かったです。
>人物描写やテンポは流石って感じですね。
>前から読み専でしたが、今後は書いていこうと思います。
ありがとうございます〜。感想を頂けるとやっぱりやる気が増加していくのでありがたい限りです。
>ただ、アキラは十分ストライクゾーンと思うのですが…
まき絵や亜子がいるので微妙かなーと思ってまとめて範囲外にしてたのですが、今後の展開を考えてちょこっと修正しときました。
>絵にも載ってるし、期待してます。
多分、アキラに関しては原作より出番が大きくなるかとw

>どうもはじめましてのオハコンバンニチハ、オラオラです
>ふらりと立ち寄り読ませていただきました
>内容的にも勢い的にもかなり面白いと思います
>後は一話一話の内容の読みごたえが重要だと思います
>頑張ってください
はじめまして〜。まだ描き始めたばかりで面白いと感じて頂けたならば幸いです。
読みごたえに関しても薄っぺらなものにならないよう努力していきたいと思います。

>オモロー!!
>続きが楽しみです!
ありがとうございますー。つーわけで続きの提供です。
なんとか月二回くらいのペースで更新できればなー、と考えております。