GS横島〜Endless Happy Time!!〜

 

妙神山で行こう! その5

 

 

 

「あ・・・あれ!?俺は―――――」

「横島さんっ!良かった、気が付いたんですねっ!」

「ヨコシマっ!」

「ふん、相変わらず悪運の強いやつだ」

「姉上・・・もうちょっと言葉を選んだほうがいいですよ」

「ワルキューレも変なところで頑固なのねー」

小竜姫、パピリオを始めとした面々が横島の目覚めに安堵の息を漏らす。

既に横島の状態はヒャクメによって霊視されており、横島の安全は確認できていたが、やはりこうして意識を取り戻さないことには安心できなかった。

周りの面々がホッと一息をついてる時、横島は自分がどんな体勢でいるのかようやく気付く。

頭の後ろに柔らかい感触。真上には小竜姫の見下ろす顔。

「し、小竜姫様・・・?もしかして俺が気を失ってる間ずっとこのままだったんすか?」

「え?ええ、そうですけど」

そう、横島は小竜姫に気を失った直後から小竜姫に抱きかかえられていたが、すぐにこの膝枕の体勢になっていた。

「・・・・・・」

わずかの沈黙。

「チクショーッ!勿体ねえぇぇっ!なんで覚えてないんだ、俺のバカやろおぉぉぉぉっ!」

気絶していたのだから覚えてないのは当たり前である。

「チクショーっ!とってもチクショーッ!!」

ガンガンと地面に頭をぶつける横島。

「――――ハッ!しまったっ!どーせならまだ目覚めてない振りしてもっと小竜姫様の膝枕を堪能しとくべきだったっ!俺のアホーッ!」

再び頭をぶつけ始める横島。

毎度のこととはいえ、やはり他の面子は横島の奇行に引いている。

「いやっ、今からでも遅くないっ!小竜姫様っ!あなたの柔らかいその体でボクを癒してください―――っ!!」

そして当然のように小竜姫に撃墜されるのもお約束である。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、横島。本題のルシオラの件じゃが」

「そ、そうだっ!俺の魔族化って上手くいったんスかっ!?」

血溜まりに伏していた横島が猿神の言葉にガバッと跳ね起きる。

「その事に関しては後で詳しく話してやる。それよりも自分の魂の内にルシオラを感じることができるか?」

「え、えーと?」

突然、そんなことを言われても何をどうすれば感じられるのかわからない横島は首を傾げる。

「難しく考えなくても、自分の内部に意識を集中してください。そうすれば今の横島さんなら感じられるはずなのねー」

ヒャクメが自らのトランクを取り出し、機材やら何やらを横島に繋ぎ始める。

「ヒャ、ヒャクメ?」

「いいから今はルシオラさんのことだけ考えるといいのねー」

「お、おう」

目を閉じて精神を集中する。

意識を己の内側へと向け、探っていく。

(ルシオラ・・・・・・)

自らの命を犠牲にしてまで自分を生かしてくれた女。

彼女のおかげで今の自分があり、世界もこうして存在している。

さっきまでも、自分が助けるつもりだったのに逆に助けられた。

自分なんかのことを好きだって言ってくれた。

だから今度こそは自分が助ける番。

(――――ルシオラッ!)

 

 

     強く

          強く

               彼女を想う

 

そして自らの魂の裡に彼女を見つけ出す。

「横島さん、そのままルシオラさんに意識を集中しつつ、それを具現化してくださいっ!文珠生成の要領で・・・っ!」

ヒャクメの声が聞こえた。

瞳を閉じたまま右手にも意識を集中していく。

その右手に収束されていくのは霊力ではなく、自らの魂の一部。

同時に自らの中にあるルシオラの存在が小さくなっていくのを感じる。

「ストップッ!そこまでっ!!」

ヒャクメに言われるままに集中するのを中断し、自らの手のひらを見るとそこには青白い光を発する球体。

物体として固定はしておらず、あくまで霊的なエネルギーが球体となって存在している。

「これが・・・ルシオラ?」

「小竜姫、ルシオラさんの霊破片を」

「ええ」

横島の疑問には答えず、小竜姫が以前ベスパの妖蜂が集めさせたルシオラの霊破片――発光する蛍を横島に差し出す。

猿神との戦いの前にあらかじめ横島から小竜姫が預かっていたのだ。

「さ、横島さん。あなたの手で彼女を復活させてあげて」

「・・・・・・・!」

両の手にそれぞれのルシオラの霊破片。

手を合わせるようにして、ゆっくりと、静かにその二つを合わせていく。

やがて二つは溶け合い、輝く蛍はその姿を人型へ変えていく。

「ルシオラ・・・!」

「ルシオラちゃんっ!」

かつてベスパが再生したときと同様にサイズは手のひらサイズだが、それは紛れも無くルシオラだった。

「うん、意識はまだ戻りそうにないけど存在は霊的にも安定してるのねー」

と、ヒャクメがもう大丈夫と言わんばかりに太鼓判を押す。

「良かっ・・・・・た。本当に・・・・・ルシ・・・・オラ」

手のひらに乗せたルシオラを大事に抱き寄せ、ボロボロと涙を流し始める横島。

「ぐすっ・・・良かったでちゅね。ルシオラちゃん、ヨコシマ・・・」

横島につられるようにパピリオも涙を流していた。

彼女にとってルシオラは数少ない家族なのだ。その姉が無事に復活した。これ以上の喜びはない。

周りの面子も何も言わずに穏やかな顔でその光景を黙って見守っていた。

誰一人として、新たに妙神山修行場を訪れた者の存在を知ることなく。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、横島さん。まずはあなたの状態から説明するのねー」

あれから横島の気持ちが落ち着いた後、一行は異空間の修行場から畳敷きのこの部屋へと場所を移していた。

ルシオラの意識はまだ目覚めていない。

「俺の状態って・・・魔族化したことか?って、言われてみりゃどこも変わってないよーな?」

先ほどに比べて余裕の出てきた横島は自分の体をあちこち触ったり見回すが、これと言って何か変わった様子も無い。

霊力も特に変質したり増えたりはしてないように感じる。

横島の猿神を除いた他の面子の表情が微妙に強張る。

「そりゃ、そうじゃ。お前の魔族化には失敗した・・・いや、させられたというべきかな?」

「は?」

猿神の言ってることが理解できない。魔族化に失敗したのならば何故ルシオラの霊基構造を分離できたのか?

「正確には魂のみが魔族化したんだけど、それ以外は人間のままなのねー」

「はい?え、えーと、つまり?」

「つまりですねー、人間は魂と肉体の両方で存在しているのに対し、神族や魔族は魂がそのまま物質化して肉体の役目を果たしてるようなものなのねー」

図解で説明するヒャクメに対し、ふんふんと頷く横島。

「だから普通、人間が魔族になるっていうのは魂だけ魔族化するだけじゃなく、肉体も魂の一部として再生されるんですが・・・横島さんの場合は違うみたいなのねー」

「言ってしまえば、人間と魔族の中間・・・ということだな」

「なんでまたそんなことに?」

ヒャクメとワルキューレの説明で事情は理解できたがなんでそうなったのか原因がわからない。

「ルシオラさんの仕業でしょう。きっと、横島クンが人間を辞めるのに反対だったんですよ。だから魔族化による変質を最小限に留めようとしたんでしょうね」

「・・・・・・」

ジークの言葉に腕の中ですやすやと眠るルシオラに目を向ける。

「なんか・・・俺が助けるつもりで逆に助けられてばっかだな」

「そんなことないでちゅよ。ヨコシマが頑張ってるからこそルシオラちゃんも頑張れたんでちゅよ」

ぽりぽりと頭を掻く横島ににっこり笑いかけるパピリオ。

その顔を見て、まぁ、結果オーライならそれでいーかぁ、と納得する横島。

元々この男に自尊心やプライドなんてものは無いに等しいのだからその辺りにこだわりはない。

「まぁ、魂が魔族化している以上、横島さんさえその気なら完全な魔族になれるのも時間の問題なのねー」

ヒャクメが言うには、魂が魔族化したことで魔力も使えるようになり、基本霊力もこれから少しずつ増加していくらしい。

ここで言う魔力というのは、魔族の特殊能力を指す。

一般的にゴーストスイーパー、神族、魔族のパワーを指すのにはそれぞれ霊力が基本となるが、種族によって種族固有のエネルギーが使える。

例えば、神族ならば神通力、魔族ならば魔力、竜神である小竜姫は竜気(竜気は厳密には神通力の一種ではある)といった具合に。

神族や魔族が空を飛んだり、瞬間移動を用いる際は霊気ではなく、これらを用いて行われている。

無論、霊力とは無関係ではなくこれらの力は霊格が高ければそれ相応に強力になっていくものである。

人間にも魔力を扱うものは存在するが、人間の扱う魔力は自然のエネルギーを精神の力と術法を用いて制御するものと、魔族と契約することで得る力の二種類が存在する。

「へー、そんなん全然知らんかった」

「横島さん・・・あなたも一応ゴーストスイーパーなんだからそのくらい知っておいてくださいね」

あはは、と微塵も悪気無く笑う横島に小竜姫はため息をつきながら、頭を抑える。

「ま、そんなわけで魔族としての力を使い続ければ魔族に、逆に魔族として力を一切使わなければ今までどおりの人間として生活していけるのねー」

どっちを選ぶかは横島さん次第ねー、と締めくくるヒャクメ。

「どっちを選ぶって、そりゃあ・・・」

腕の中で眠るルシオラを見る。

俺は俺らしく―――

魔族になったところで俺自身が変わるわけでもないが、周りはやはりそうもいかないかもしれない。

そしてルシオラがそれを望んでないのなら、答えは一つしかない。

「ま、せっかくですからこのままで。老師の話とか聞いてると魔族になったらなったで色々メンドクサソーですからねー」

わはは、と笑う横島に周りの面子も安堵のため息を漏らす。

やはりこの脳天気な男には神族や魔族のしがらみとは無縁な人間として気ままにやって欲しいと思っていたのだ。

「なら、私が竜気で横島さんの魔族としての能力を封印しましょう。そうすればちょっとや、そっとのことで魂が魔族化したことがわかることもないでしょうし」

「ういっす、お願いします」

「う、うーん・・・」

話が一段落したところで、横島の腕の中のルシオラが身動ぎをはじめる。

「お、ルシオラ、気が付いたか?」

「ルシオラちゃんっ!」

「ヨ、ヨコシマ・・・?」

ゆっくりと目を開き、ヨコシマの顔を見つめるルシオラ。

「あ・・・わ、わたし?」

「おまえとの約束・・・今度もなんとか果たせたみたいだな」

ニッと笑う横島に対して、ルシオラの瞳には段々と涙が滲んでくる。

「ヨコシマっ!!良かったっ!わたし本当に・・・・・・っ!!」

横島の胸に顔をうずめ、それ以上何か話そうとしても、言葉にならないルシオラ。

他の面々が二人に気を遣い、静かに部屋を出て行く。

そこで横島とルシオラ以外の面子はようやく知ることになる。

鬼門の前で待ちぼうけを喰らわされた人間、雪之丞の来訪を。

ちなみに彼がここを訪れてから既に4時間は経過していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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UP DATE 08/03/22

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妙神山編完結できなかった・・・orz今度こそ次で妙神山編しゅーりょーです。多分。

魔力、竜気、神通力などは原作を見て、それっぽく感じたのでこのSSではあーゆー設定になりました。

>横島の魔族化成功おめでとうです、でもパピリオは対象外だからいいとして
>小竜姫達にとっては下手するとセクハラされても撃退出来なくなったりして・・
横島の場合、自分や相手の強さに関わらず撃退されるのは仕様ですw
>でも3話の会話からすると強くはなっても狙われることにはなるのかな^^
>続きを楽しみにしています
今後の展開に関してはユッキーが一種のキーポイントになるのかなー、と。