新世紀GPXサイバーフォーミュラ Kanon

ROUND4「激走!富士岡決勝!!」

 

 

 

 

 

サイバーフォーミュラレースの最高峰、サイバーフォーミュラ・ワールドGPX。

ワールドGPXに出場する為に必要な「スーパーライセンス」の獲得及び、

第1戦の出場資格を得る為のレース富士岡GPXの決勝のスタートが刻一刻とせまっていた。

それぞれのピットでクルーが忙しく動き回り、否がおうにもサーキットの緊張と興奮が高まってきている。

 

「祐一ーっ!負けたらしょうちしないんだからねっ!」

「あーっ、やかましいっ!耳元で叫ぶなっ!!マコピーっ!」

「誰がマコピーようっ!」

「わわっ、二人ともケンカはいけないよっ」

「あゆあゆは黙ってて」

「うぐぅ・・・・・ボクのほうが年上なのに・・・・」

「気にするな、あゆ。一般的に見て大して変わらないから」

「うぐぅ・・・・どうせボクなんて・・・・・」

「あ、栞ちゃん、今の気温は?」

「えっと、18度で、湿度は18%です」

「秋子さん、カノンのシステム、オールグリーンです」

「ええ、セッティングのほうも万全ね」

「お母さん、コーヒー入ったよ〜」

・・・・・スノークリスタルもメンバーもその例に漏れず、良い意味でレースへの緊張を高めていた。

 

 

 

《さあ、いよいよ富士岡クオリファイ決勝レースが始まろうとしています!さて解説の石橋さん、

このレースの見所はどういったところにあるでしょうか?》

《そうですね、やはり注目すべきはエターナルフォーミュラの折原浩平でしょう。

彼はこのレースがサイバーフォーミュラデビューとなりますが、予選でも圧倒的な速さを見せて、

見事ポールポジションをとっています。彼なら入賞はおろか優勝も充分狙えるでしょう》

 

 

フォーメーションラップを終えたマシンがそれぞれスターティンググリッドにつく。

クリーンエネルギーの使用が義務付けられているサイバーフォーミュラでは、

そのほとんどが無公害の水素エンジンを使用している。

(3位入賞・・・・・・・できなければそこで終わりだ・・・・悔いは・・・・残さない!)

レッドシグナルがグリーンに変わり、轟音を響かせた24台のマシンが

ニセコGPXへの出場権を得るため、世界に挑戦するためにスタートしていった。

 

「カノンが算出した相沢さんの完走率は8%以下・・・可能性は低いですね」

「無理も無いわ・・・・最大4.5Gのかかる1時間半のレース・・・・

初めて経験する祐一さんにとっては厳しいかもしれないわね」

「そんなっ・・・・・」

「大丈夫だよ、栞ちゃん」

美汐と秋子の会話を聞いて不満な声を上げようとした栞を名雪がやんわりと制する。

「だって、祐一だもん。きっとなんとかなるよ」

名雪の発言に根拠は無い。

だが、不思議とその言葉を信じる気になってしまうのだ。

「うん、ボクもそう思うよ。祐一君なら表彰台は間違いないよっ」

「なんだか、あゆさんが言うとなんとなく不安になってきますね」

「うぐぅ・・・・・栞ちゃん酷い・・・・」

「でも、一理ある気もしますけど・・・・」

「うぐぅ・・・・・」

「大丈夫よ。相沢君にはカノンもついているんだし。あのマシンは普通のマシンと違う何かを感じわ。

きっとなんとかなるわよ。あたしも保証するわ」

落ち込むあゆ励まそうと留美もフォローを入れる。

「そうよっ、それに真琴も整備したんだからきっと大丈夫!」

そんなやり取りに頬をほころばせながら秋子は静かに結論を出す

「どちらにしろ・・・・私たちは祐一さんを信じるしかないですね・・・・」

 

 

第1コーナーを制したのはポールポジションの浩平。

その安定性と鮮やかなドライビングは2位以下のマシンを寄せ付けない。

「あいにく、こんなところで負けるつもりはないんだよ」

浩平は既に世界でのバトルを視野に入れている。

彼にしてみれば国内でのレースで負けるわけにはいかないのだ。

 

一方、最下位スタートの祐一は前方のマシンをパスすることができず、最下位のままだ。

「くぅっ!このままじゃ、勝つことなんてできない!なんとか、なんとかしないと・・・」

 

レースも20週を過ぎようとしていたが、いまだに祐一は最下位。

相手のほうも祐一が素人ということで、意地でも抜かせまいと無謀なブロックを繰り返していた。

「カノン!次のラルジュコーナーで仕掛ける!サポートを頼む」

『了解』

しかし既に後方のマシンを20秒以上も離し、独走態勢に入った浩平が祐一のすぐ後ろについていた。

「最下位のマシン・・・・カノンか・・・・だが、容赦はしない!」

ラルジュコーナーで、アウトに膨らんだ相手のマシンのインをつく、カノン。

だが、相手が無理なブロックをしたせいで接触、リヤウイングが吹き飛んでしまう。

「くぅぅぅっ!!!」

ウイングが突然無くなったことで空力バランスが崩れ、ラインがぶれる。

「バカッ!そんなとこにいるんじゃないっ!!」

カノンと接触したマシンを回避し、インに来たスペリオンGTのライン上にカノンが流れてしまったのだ。

とっさにブレーキを踏んでやり過ごそうとする浩平だが、既に回避は不可能だった。

接触した2台のマシンは砂塵を巻き上げながらグラベルへと突っ込んでいた。

「浩平!」

これにはエターナルフォーミュラピットの茜も焦りの声をあげた。

 

「くっ、エンジンがかからない・・・・・!」

イグニッションキーを何度も押すが、電装系に支障をきたしたのか、GSXのエンジンに反応は無い。

一方、浩平のほうもエンジンは止まらなかったものの、グラベルから脱出できずにいた。

「冗談だろ・・・・こんなとこで・・・・」

レースを見守っている誰もが、この2台がリタイヤかと思い始めた。

 

だが―――二人のドライバーはまだ、諦めていなかった。

「カノン!俺に・・・力を貸してくれ!」

『それが私の役割だ。サブバッテリーシステムON!2秒後にエンジン始動!!』

カノンの指示どおりに、行動する祐一。

(かかってくれ・・・・・)

そんな祐一の思いに応えるかのように、GSXのエンジンが息を吹き返し、力強い咆哮を始める。

『セレクトNo1!スイッチON!』

車高を調節したGSXがグラベルを抜け、コースへと復帰する。

「祐一さん、ピットインして。留美さん、準備をっ」

 

「こんなところで・・・・・終われるかっ!」

次々と後続のマシンに抜かれ、順位を落としていく中、少しずつだが、グラベルから脱出しようとするスペリオン。

カノンはこの間にピットイン。

破損したリヤウイングとタイヤ交換に入る。

「ウイング、OKよっ!」

「タイヤも終わったよ、祐一っ、最下位なんかで終わったらゆるさないんだからっ」

「祐一君、がんばれっ」

「ふぁいとっだよ」

クルーの声援が送られる中、コースへと入っていく祐一。

ほぼ入れかわるように浩平のスペリオンがピットイン。

「サスペンションの調整に時間がかかりそうです・・・」

既にテレメーターからの情報でスペリオンのダメージを把握している茜。

その表情は決して明るくは無い。

「ああ、急いで頼む・・・・!」

 

 

《カノンがコントロールラインを通過――っ!

これで折原が最下位!!その折原はようやくピットを出てコースイン!

だが、既にトップから1周以上も離されている!これでは逆転の望みは薄いかっ!?》

この時点でほとんどのギャラリーが浩平の逆転はないと思っていただろう。

「いくら折原でももう駄目だろうな」

「ああ、あの周回遅れのせいでいいとばっちりだ」

「せっかく、実力では飛びぬけていたのに・・・・運が悪かったよな」

「それはどうかな・・・・・・」

とある観客の会話に割って入った声。

話したいた男たちはその声の主を振り返る。

そこには異常に目つきが悪く、黒いシャツを着た男が一人。

「勝つのはの5番のマシンだ・・・・・・・多分な」

不敵に笑うその男はそのまま視線をスペリオンから祐一のGSXへと移す。

「・・・・・・・・それにあの30番・・・・案外面白いヤツかもな・・・」

 

 

 

『後方からスペリオン接近!』

GSXの後方には凄まじいペースで追い上げていくスペリオンがすぐ後方にまで迫っていた。

「あいにく・・・・雑魚に構っている暇はない!ピーコックウイング!!

「こっちだって、負けるわけにはいかない!ブースト・オン!!!

富士岡サーキットでもっとも長く、その速度のために景色が全て幻と化すイリュージョンストレート。

その入り口で共にブースト加速を始めるスペリオンGTとカノンGSX。

2台は共に譲らず、400キロを超えるスピードでコースを駆け抜ける。

「こいつ・・・・・・俺と張り合う気か!?」

「祐一さん、無理よッ、あなたにはまだっ・・・・・!」

秋子のほうも祐一の行動に動揺を隠せずにいた。

祐一はまだ、浩平のペースについていくほどの腕は持っていないはず。

無理をすればそこから事故に繋がる可能性があるのだ。

だが、熱くなった祐一はもうそんなことは頭には無かった。

≪何とカノンっ!!スペリオンにサイド・バイ・サイドッ!!そのまま高速コーナー600Rに突入していきますっ!!≫

「もらったぁぁ――――っ!!」

ストレートでは互角でも、コーナーでは当然浩平に分がある。

ブレ―キングで差をつけ、一気にカノンを突き放す。

祐一は今まで経験したことのない横Gに耐えながら、次々に前方のマシンを抜き去っていくスペリオンを目にする。

「カノンッ・・・!スペリオンの・・・ラインをデータにとってくれっ!同じラインで・・・・!ついていくっ!!」

『それにはスペリオンのドライバーと同じ体力、テクニックが必要だ』

「やれなきゃ・・・・入賞・・できないっ!!!」

『・・・・やってみよう』

前面のモニターにカノンが解析したスペリオンの走行ラインが表示される。

「よぉし・・・・・いくぞっ!!!

スペリオンのラインを正確にトレースし、次々にマシンを抜いていく祐一。

その集中力は極限まで高められ、全神経をドライビングに集中していく。

「どうだっ・・・!カノン!」

『OK。実に入力のしがいがあるデータだ』

スペリオンにぴったりと張り付き、凄まじいペースで順位を上げていくカノン。

「凄い・・・・・凄いです、祐一さん・・・」

「あ、また抜いたっ!祐一君ガンバレーッ!!」

盛り上がりを見せるスノークリスタルピット。

「こいつ・・・・・俺のペースについてこれるのか・・・!」

「ここまできたら・・・・・最後までついていってやる・・・・!」

先ほどまで最下位を走っていたマシンが全力の自分のペースについてくる。

それは浩平を驚愕させるに値する事実だ。

いや、浩平だけでない。

ギャラリーや記者達の間にも動揺が広がり、瞬く間に驚愕へと変わっていた。

「おい・・・・あの30番何者だよ?」

「アレ・・・さっきまで最下位だったヤツだろ?それがあの折原についていくなんて・・・」

.

そしてラスト2周。

ついにスペリオンとカノンがトップグループへと追いついた。

だが、そこでカノンが僅かにスペリオンから少しずつ話されてていく。

「祐一っ!?どうしたの!?」

「・・・・・・」

だが、祐一は名雪の呼びかけにも応えない。

「相沢さん・・・・失神しかけてます!」

今までに体験したことのないGは祐一の体力と精神力を激しく消耗させていたのだ。

「相沢君っ!なにやってんのよッ!」

「祐一さんっふぁいとです!!」

「こらー、祐一―ッ!根性見せないさいよッ!!」

「祐一君っ!ここが勝負どころだよっ!!」

ピットからの声援を受け、辛うじて意識を保つ祐一。

「あと・・・・・2台・・・!」

スーパーライセンスを獲得できるのは上位3名。

現在の祐一の順位は5位。

つまりあと2人抜かなければ入賞はできないのだ。

浩平が2位。祐一が5位のままファイナルラップへと突入する。

《トップグループはイリュージョンストレートを抜け、最後の高速コーナー600Rへ―――っ!!》

『ブレ―キングミス。チャンスだっ!インに飛び込め!』

4位のマシンがブレ―キングミスで、アウトに膨らむ。

「ぐうぅぅぅっ!!!」

強引にインをつき、タイヤが縁石に乗り上げるが、構わずにアクセルを踏み込む。

「抜いたっ!これで祐一が4位!!」

 

トップは・・・・渡さない!!

浩平はコーナー入り口でマシンをアウトによせ、揺さぶりをかける。

トップのマシンがブロックしようとインを空けた瞬間―ほんのコンマ数秒の隙を逃さず、

すかさずインにマシンを滑り込ませる。

こうなってしまっては、イン側の浩平が圧倒的に有利だ。

そのまま鮮やかにオーバーテイクしていく。

 

 

《折原素晴らしいオーバーテイクだ!遂にトップの座に返り咲いたー!!そのままゴール!!!優勝は折原―――!!!

しかしそのすぐ後方!!激しい3位争いが繰り広げられているー!!》

 

「カノン!アウトから一気に仕掛けるぞ!!」

最終コーナー入り口でスリップストリームから出たGSXはそのままアウトからコーナーへ侵入する。

コーナーへの侵入スピードではGSXが完全に上回っている。

しかし、タイヤのグリップがやや足りず、狙ったラインよりも外に流れてしまう。

このままではオーバーテイクできない。

「くぅぅっ!このぉっっ!!!

タイヤのグリップ力が足りないのに気づいた祐一は、すぐさまエフェクトファンのスイッチを入れる。

ブゥゥゥゥゥゥ

マシンを下向きに押し付ける向きに回転を始めたエフェクトファンは強烈なダウンフォースを発し、足りないグリップ力を補う。

「うおぉぉぉぉ!!!」

《相沢がアウトから一気に並んだー!並んだままコーナーを抜けていく!!

ゴールはすぐそこだ!!二台がほぼ同時にゴ―――――ルッ!!果たして3位は――――――!!??》

誰もが固唾を飲んで、順位が出るのを見守る。

そして結果は・・・・・・・

 

3. Y・AIZAWA

 

《3位は相沢祐一っ――!!!!!見事3位争いを制し、

世界への切符「スーパーライセンス」を勝ち取りました!!!!》

 

 

「やったっー―――!!凄いです祐一さん!!」

「あはは、やったやったー!!」

「祐一、えらいっ!!」

スノークリスタルのピットは歓喜の声に包まれる。

 

 

『おめでとう、祐一。だがまだ全てが終わったわけではない』

「ああ、わかってるさ。だけど少しぐらい気を抜かせてくれよ。もうクタクタなんだからさー」

『だが、君にはまだまだクリアすべき課題が残っている。

私の性能を全て引き出すためにも明日から頑張って貰わなければならない』

「・・・・・・・・勘弁してくれよ・・・・」

 

 

「やりましたね、浩平」

ピットから茜が浩平にねぎらいの言葉をかける。

「まぁ、俺の実力なら当然だろ。結構焦ったけどな・・・・・」

「フフッ、でも本番はこれからですよ。相手は世界なんですからね」

「わーってるよ、まかせとっけって。狙うはワールドチャンピオン!!・・・・・だろ?」

「もちろんです。さっそく、明日からマシンの調整に入りますよ」

「・・・・・明日から?」

「はい、明日からです」

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

表彰式が始まり、入賞した3人が表彰台へとあがる。

「去年の名雪の時もそうだけど、やっぱり表彰台はいいわね」

秋子も嬉しそうだ。

今のメンバーは皆は今年からスノークリスタルに入ったので、去年の名雪のときにはいなかったが、

秋子の言葉には同感のようだ。

《今、世界への切符、スーパーライセンスが渡されます》

表彰台の3人に惜しみない拍手が送られる。

 

 

そして、レーサーたちは世界へ羽ばたこうとしている。

ただ一つの栄光を目指して・・・・・・・・・

 

 

 

 

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2002/1/23

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すいません、ちょっと思いつきで瑞佳→七瀬に設定変更です。

たびたび変更して申し訳ないです・・・・・

時間かかった割には大して変わってないですねー(汗)

次回はもうちょっと早く上げられるといいなぁ・・・・・・