HAPPY★KANON

 

第24話

 

 

 

「うー、なんでわたしがこの人と一緒なんですかっ!!」

「それはこっちのセリフよっ!何が悲しくてこんな貧乳とチームを組まなきゃいけないのよっ!」

「そんなこと言う人大っ嫌いですっ!」

「ふふん、悔しい?悔しいの?」

「くっ・・・そっちこそ何年も祐一さんの傍にいて幼馴染止まりのくせにっ」

「あらあら、お子様にはわたしとお兄様の目に視えないふーかい絆が理解できないようね」

「ふふっ、妄想だけは一人前のようですね。病院にいくことをお勧めしますよ?」

 

えー、くじ引きの結果めでたくチームが分かれたわけだが、一部のチームがとてもやかましいことこの上ない。

他のみんなもいい加減飽きたのか、誰も止めることなくそれぞれのパートナーと和気藹々としている。

「香里さん、よろしくお願いしますっ」

「こっちこそ。頼りにしてるわよ、みなづきちゃん」

優等生の香里と何気に運動神経抜群のみなコンビ。

無難かつ手強そうな相手だ。

「ちっ、オレのパートナーはおまえかよ。せいぜい足引っ張るなよ」

「ふーんだっ!さつきちゃんこそ、そのバカ力で自滅しないでよねっ!」

もはや毎度おなじみうづきママとさつきママコンビ。

一見相性が悪そうで自滅しそうなチームNo1だが、うづきママの意外性もダントツでNo1だ。

今回一番のダークホースだろう。

「やっぱ、こういう楽しそうなことにはやっぱ血が騒ぐわー」

「そうね。若さゆえの特権というものかしらね。わたしも本気を出せてもらおうかしら」

何気にやる気満々のはづき姉とやよいママのコンビ。

はづき姉は見たままに万能タイプだし、やよいママも何でもこなす感がある。

やれやれだ。

ちなみに咲耶と栞はまだ言い合ってる。

あれはまぁ、お互いに足を引っ張りあって自滅するだろう。多分。

「みなさん、元気ですね」

そんなみんなの様子を眺めながら俺の隣で微笑むむつきママ。

「一部は元気余りまくりな気がするけど・・・・・」

咲耶とか栞とか。

会話がもうちょっと穏やかだと良いんだが、その毒気満載の言葉の応酬は見てるこっちが疲労する。

 

 

「では、みなさん・・・各チームごとにそれぞれ中に・・・」

きさらぎママが手元のスイッチを押すと、ドキドキタッグバトル専用アスレチック3号とやらに5箇所の扉が現れる。

しかもそれぞれのフルネーム入りの扉だ。

「おおぉー」

と、うちの姉と妹二人は賞賛の拍手と声を上げるが、その反応は正しいのだろうか。

他のメンバーはきさらぎママの奇行に慣れてるせいか、特別はしゃいだりはしていない。

俺は突っ込まない。今更この程度じゃ突っ込まないぞ、俺は。

なんでチーム分けは今したばっかりなのにフルネームが刻まれてるんだとか、急遽遽参加したはづき姉の名前当然のようにあるんだとかは絶対に突っ込んでやらない。

一瞬俺と目が合ったきさらぎママがくすりと微笑んだような気がする。

 

 

「なんだかドキドキしますね」

「っていうか、いきなり行き止まりなんだけど・・・」

各チームごとに分かれて中に入ったまではいいのだが、そこはさして広くも無い部屋が一つあるだけで入り口以外の出口が何も無い。

これじゃ奥に進むこともできない。

『・・・みなさん、準備は・・・・いいですね』

スピーカーらしきものから響いてくきさらぎママの声。

準備って何の?と、俺が声に出す前にことは起きた。

「え?」

「は?」

いきなりの浮遊感。

足元を見るとそこに床は無く。

果てしない暗闇が口を開けて待っていた。

要するに、だ。

 

 

「いきなり落とし穴かよぉぉぉぉぉぉぉっ!!??」

「きゃぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!」

 

 

 

俺とむつきママの悲鳴が虚しく響いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠に続くかと思われた落下は次の瞬間には終わりを告げた。

「うおっ」

身体が感じたのはマットの柔らかい感触。

どういう原理と素材かは知らないが、あれだけの勢いで落下してきた慣性を完全に相殺し、俺の身体は何の痛みも

「ぐえっ!」

感じる前にむつきママが俺の上に落ちてきた。

「だ、大丈夫ですか!?」

慌てて俺の上から飛びのくむつきママ。

あんまり大丈夫じゃないが心配をかけるわけにもいかない。

すぐに立ち上がろうと腕に力を込め、

「わっ」

「あらっ」

「ぐふぉう!?」

背中に更なる衝撃の二重奏。

俺撃沈。

無理です、もう立ち上がれません。

「あら、一文字先生」

「と、いうことは一文字先生がみなたちの対戦あいてなんですねっ」

「そういうことになりますね。みなづきさん、香里さん、よろしくお願いします」

なんて会話が頭上から聞こえてくる。

そのまま談笑に花を咲かせそうな勢いだ。

「あ、一文字先生、お兄ちゃんはどこですか?」

「そういえば姿が見えないわね。敵前逃亡?」

「あ、あはは。えーと、その、ですね」

きみら二人本気で言ってますか?

と、声を大にしていいたいところだが、痛みで口を虚しく開けるだけで声が出ない。

「まさか、一文字先生を残して一人で逃げたとか?だとしたら人の風上にもおけないわね」

「あはは、お兄ちゃんに限ってそんなことは絶対ないですよー」

「いえ、だからですね。二人とも」

 

 

 

「いいから退けっ!絶対にお前らわざとやってるだろっ!?」

 

 

「・・・・あら、もうバレた?つまらないの」

「えへへっー」

俺の怒鳴り声にようやく香里とみなは俺の背中から移動する。

「っていうか、やっぱりお前らわざとやってたのか・・・」

香里はともかくみなまでそんなことするとは・・・。

「えへへっ、ちょっとはしゃぎすぎちゃった。ごめんね、お兄ちゃん」

ぺロッとした出すみなを見てると途端に起こる気力も失せてしまう。

やれやれ、俺も甘いな。

「で、おまえは一言の侘びもなしか」

ジロリと香里を睨むが、香里は俺の視線をあっさりと受け流し、

「あら、男の子ならそれぐらい平気でしょ?」

と、にこやかな笑顔で言い放つ。

こいつはどこの悪魔だ?

「みな一人なら大したことはないけどな、お前がお」

重い、と言いかけて俺の言葉は断ち切られた。

目の前にはメリケンサックつきの拳が寸止めで止まっていた

おまけに一瞬後に凄まじいまでの風圧が俺の顔面を通り過ぎていく。

「・・・・・・・」

拳圧ですか、今の風は?

「何か言った?」

にこりと、死神の笑顔で香里は言った。

「いえ、なんでもありません」

悲しいかな、普通の人間である俺には神速の拳を持つ香里に抗う術を持っていなかった。

そこ、情けないやつだとか思うなよ?

 

 

 

俺だって命が惜しい

 

 

身をもって知った俺だからこそ確信を持っていえる。

香里は3メートル先にあるローソクの炎を拳圧だけで消せるね、絶対

あいにくと陣内流柔術を会得してない俺にはそんな神の拳をもつヤツに挑む勇気はない。

命が惜しくないヤツはチャレンジしてみるといい。

 

一撃で天国を見ることができるだろう

 

それもかなりの高確率で。

 

『それでは、これから第一回戦を始めます』

どこからともなくきさらぎママの声が聞こえてくる。

他のチームも今頃俺たちと同じように地下に落下しあているのだろうか。

辺りを見回すと俺たちの周り以外は暗闇に覆われていて良く見えない。

どういう原理かは謎だが、俺たちのところだけ明るくなっている。

みんなで辺りを見回しながら、きさらぎママの声に耳を傾ける。

『第一回戦のお題は・・・・・・』

 

 

ROUND1

 祐一・むつきチーム
  VS
 みなづき・香里チーム

 

 

 

次回に続く♪

 

 

 

 

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                      Last UP Date  2006/08/18

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>続きは何処ですか!?
えーと、未来の俺の脳内・・・フヒヒヒヒ! すいま(ry ノ○フz乙

HAPPY LESSONについては全く知らなかったですが、
>各キャラクターの個性がわかりやすいので面白かったです。
>執筆がんばってください
そう言ってもらえるとありがたいです。
執筆スピードのほうはあまり保障できませんが、しっかり書いていきます〜。