HAPPY★KANON

 

第5話

 

 

 

 

 

「祐一っお昼だよ!」

4時間目終了のチャイムとともに駆け寄ってくる名雪。

「あぁ・・・・・・やっと午前中の授業が終わったか」

溜息と共に机の上に倒れこむ。

「なんだよ、随分お疲れじゃないか?」

「北川・・・・・わかってて言ってるだろ?」

「わかるか?」

「おまえのニヤついた顔を見れば誰だってわかるって・・・・・」

こいつは絶対に俺の状況を楽しんでやがる。

化学のあと、保健室に行ったのだが、あまりの混雑振りに並ぶのがアホらしくなってそのまま戻ってしまった。

その頃にはそれなりに回復もしていたし。

それにしてもあそこまで混んでるとは・・・・・三世院先生恐るべし。

北川曰く、

「三世院先生に魅せられた野郎どもは山ほどいるからな。保健室への整理券を巡って休み時間ごとに壮絶な死闘が繰り広げられているんだ」

と、いうことらしい。

ちなみにその整理券は学校公認のものではなく、三世院先生ファンクラブが独自に発行してるとか。

「それより、相沢くんはお昼どうするの?」

「どうするって何が?」

「わたしたちはいつも学食なんだけど祐一は?」

「ああ、そういうことか。俺は弁当がある」

朝にむつきママが俺のために作ってくれた弁当だ。

この弁当があるのにわざわざ学食なんて利用する気になんかなれないぞ。

「そうなんだ、ちょっと残念・・・・・・あれっ?祐一って確か一人暮らしだよね?」

「それがどうかしたのか?」

名雪の代わりに香里が言葉を続ける。

「と、いうことはそのお弁当は相沢くんが作ったの?」

「・・・・・・・・・・」

三人の視線が一斉に俺に集まり、冷や汗が額を伝う。

「ま、まぁ、一人暮らしだと金もかかるからな。こうやって少しでも食費を浮かさないといけないんだ」

「へぇ〜、お世辞にも弁当を作る奴には見えないけどな」

「北川・・・・・人を見た目で判断してはいけないんだぞ。それよりもお前らは学食に行くんだろ?」

あまりこの話題に突っ込まれると困るので早々に話題を変える。

「うん、そうだね。じゃ、祐一も早くいこ」

「だから俺は弁当があるって」

「お弁当持って、食堂で一緒に食べればいいじゃない」

「そうそう」

・・・・・まぁ、断る理由もないか。

「あっ、いたいた〜っ♪」

「うおっ」

声と同時に背中に軽い衝撃。

「あ、うづきちゃん」

北川の視線は俺の後ろ。

俺も首だけ後ろに回して見ると、女の子が俺の首にぶら下がっていた。

「ねーねー、キミが相沢祐一くんでしょ?」

「え?あ、うん」

女の子は俺の質問には答えず、ぶら下がったまま人懐こい笑みを浮かべている。

ちょっと・・・・可愛いかも。

「相沢くん・・・・顔がにやけてるわよ」

う・・・・。香里の視線が冷たい。

「え〜と、誰?」

「きゃはっ、美術担当のうづきだよ♪よろしくっね♪」

「美術担当・・・・・・・って、もしかして先生?俺と同じか、年下に見えた・・・・」

「やっぱ、そう思うようなぁ・・・うんうん」

北川が納得したように頷く。

「あー、二人ともひっどーい!失礼しちゃうな、プンプン」

そう言いながらようやくうづき先生は俺の背中から降りてくれる。

さっきまではよく見えなかったが、たしかに服は制服じゃなくて私服だ。

・・・・・かなり少女趣味ではあるけど。

そしてその背中には真っ白な羽根が・・・・・・・

「って、羽根!?」

「あ、これ?えへへー、可愛いでしょー?今、大人気の魔法少女のコスプレなんだよ」

クルッと一回転するうづき先生。それに合わせてふわっと羽根がなびいてく。

その光景はまるで・・・・・・・・・天使みたいだった。

「それで、四天王先生は祐一に何の用なんですか?」

「あ、うん。えっとねー、噂の転校生くんを今度の絵のモデルにしようと思ってずっと探してたんだ〜」

「絵のモデル・・・ですか?」

「うん!そういうわけだから、放課後にキミのとこに行くからね♪じゃあね、ばっは〜い!」

俺たちが何か言う前にうづき先生はあっという間に嵐のように去っていってしまった。

「・・・・・・・・・・・・・四天王先生相変わらずだね」

呆然とする名雪。

「・・・・うづきちゃんは相沢の居場所がわかるのか?」

「さぁ・・・・」

たしかに場所も決めてない。

「あ・・・・・」

いきなり名雪が思い出したように声を上げる。

「どうしたの、名雪?」

「もう、昼休み終わりだよ・・・・・・・・」

そして俺たちが昼飯を食う時間がなかったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

そして転校初日の授業は全て無事(?)に終わり、放課後。

「祐一っ放課後だよ!」

「なんか・・・・異様に疲れた一日だったな」

「フフッ・・・お疲れさま。まぁ、あれだけ色々あればねぇ」

可笑しそうに含み笑いをする香里。

「おまえも俺の状況を楽しんでたな・・・・・・」

「あら、そんなことないわよ。ね、名雪」

「そうそう」

「・・・・・・・・・」

「水瀬はこれから部活か?」

「うん、そうだよ。北川君は?」

「俺は学食。さすがにあれだけじゃな・・・・・」

昼休みのことを思い出したのか苦笑する北川。

次の休み時間に猛ダッシュでパンをいくつか買ってきたわけだが、所詮は売れ残り。

数も少なく量が足りなかったらしい。(当然俺は、3人が買いに行っている間に一人で、むつきママの弁当を平らげた)

「う〜、いいなぁ」

「諦めなさいって」

情けない顔をする名雪の頭を撫でる香里。

「香里はどうするんだ?」

「わたし?わたしは部室に顔出して、そのまま帰るわよ」

「あ、暇だったら俺と一緒に学食行かないか?」

「あいにくと、妹と一緒に帰る約束があるのよ。また、今度機会があればね」

「そ、そうか」

笑顔で北川の提案を却下する香里。

北川撃沈。あ、向こうで拗ねてる。

「相沢くんはすぐ帰るの?」

「う〜ん、そうだなぁ・・・・・今日はまっすぐに帰るかな」

さすがに朝からあれだけのことがあればちょっと疲れたし。

「そう。じゃあ、またね」

「祐一、また明日ね〜」

「おう」

二人して教室から出て行く名雪と香里を見送くる。

そして、今日の出来事を思い出す。

転校初日であんな目に会うとは思ってなかったけど・・・・まぁ、楽しかったかな。

これからの学校生活のことをいろいろ考えながら教室を出る。

だが、俺の考えは甘かったらしい。

まだ今日という日は終わっていなかった・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

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                                UP Date 7/13

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