7年前・・・・俺は雪の降るこの街に住んでいた。

俺がある事情で両親がいなくなり、天涯孤独の身になるまでは。

それからの7年間を施設で過ごし、ようやく故郷であるこの街へと帰ってきた。

 

そして俺は今、かつて住んでいた家の前に立っている。

この街には親戚である、名雪と秋子さんもいる。

二人は俺がこの街に戻ってきたときに一緒に暮らそうと言ってくれたが、あえて俺はそれを辞退した。

両親が残してくれた家。

別に昔の思い出にすがる気ははないが、やはりこの家に住みたいという思いが強かったのだ。

 

そして俺は7年ぶりに帰ってきた我が家のドアを開けた。

そして思考が停止する。

なぜなら・・・・・・・・

 

「お帰りなさい!ごはんにします?それともお風呂?」

 

何故か玄関にはメイド服の美少女がにっこりと笑って待っていたのだ。

 

 

 

HAPPY★KANON

 

 

 

バタンッ!!

 

思わずドアを閉めて、自分が今しがた入ってきた家の表札を確かめる。

 

相沢

 

うん、あってる。

いかに7年ぶりとはいえ自分の家を間違えるはずもない。

・・・・とするとさっきの女の人は?

夢?

それとも幻?

いかん、いかん。

こんな昼間からそんなものを見てるようではこの先が思いやられる。

気を取り直して再びドアを開ける。

 

「どうかなさったんですか?あ、もしかしてこの格好・・・・・気に入りませんでした?」

 

ブンブンブン

 

悲しそうに首を傾げる美女に俺は反射的に首を横に振る。

メイド服が気に入るか入らないかといえば、もちろんイエスだ。

「そうですか、良かったぁ・・・・・」

彼女はホッとしたように胸をなでおろす。

・・・・・・・・・どうやら夢や幻といったものではないらしい。

ジッと彼女を見つめているとなんとなく見覚えがあるような気がしてきた。

「もしかして・・・・・・・・・一文字先生?」

「はい、そうですよ。私だとわかりませんでした?」

そう、それは先ほど転入手続きのために行った学校で会った一文字むつき先生だった。

学校ではかけていなかったメガネのためにすぐには誰なのか分からなかったのだ。

「ええと・・・・・なんで先生が俺の家に?」

頭が混乱する中、なんとか言葉をしぼり出す。

一文字先生は優しげな笑みを浮かべ、とんでもないことを言い出した。

 

 

 

 

「今日からわたしがあなたのママになってあげます」

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい!?」

 

 

目が点になる俺に一文字先生は言葉を続ける。

 

「私、祐一さんの話を聞いて考えたんです。

一人で生きていくことってどんなことなんだろうって・・・・・・。

それはとても悲しくて・・・・・・・とても寂しいことだと思ったの。

だから、わたしがキミの・・・・・ママになってあげられたらって・・・・・。

すごく・・・・・・いい考えだと・・・・・思うんですけど・・・・・ダメ・・・・・・ですか?」

 

上目遣いで俺を見上げる一文字先生。

このあまりに魅力的な提案を跳ね除けられる奴がいるなら見てみたい。

そして迷わず撲殺するだろう。

 

 

 

「これからは、私が「おはよう」も、「おやすみなさい」もぜ〜んぶ言ってあげます。

だから祐一さんも、う〜んと私に甘えてくださいね!

一緒にご飯を食べて、一緒にTVを見て、一緒に夕日を眺めて、たまには一緒にお買い物をして・・・・

私、いいママになるため一生懸命がんばりますから祐一さんも恥ずかしがらずに、「ママ!」って呼んでくださいネ!」

 

 

ママ・・・・・と呼ぶのはかなり恥ずかしいが、これからは楽しい日々が暮らせそうだ。

だが・・・・・俺は自分の考えが甘かったことをすぐに思い知らされることになる。

そう・・・・・・・・これはまだ始まりに過ぎなかったのだから・・・・・・・。

 

 

続く・・・・・・・・・・?

 

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                                UP Date 6/5

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