コンピューターによるナビゲーションシステムを搭載したレースマシン
サイバ―フォーミュラの登場はF1に代わる21世紀のニューレースマシンとして
世界中の人々を熱狂させた・・・・・

 

 

 

 

 

 

新世紀GPXサイバーフォーミュラ Kanon

ROUND1「カノンGSX始動」

 

 

 

 

サイバーフォーミュラレースの頂点“ワールドグランプリ”への出場権「スーパーライセンス」を得るためのレース

富士岡200マイルレース予選2日前・・・・・

 

 

 

−イギリス−

その日、祐一はサイバーシステムの開発者である父親に呼び出されていた。

「祐一、明日日本に行ってくれ」

祐一の父、相沢弘一の第一声がそれだった。

「は?」

「親戚の水瀬さんがサイバーフォーミュラに参加しているのは知っているだろ。

それで、昨日完成したニューマシンを水瀬さんに届けて欲しいんだ」

「ちょっと待てぃ。それをなんで俺が運ばなきゃいけないんだ?会社で届ければいいだろうが」

疑惑に満ちた表情で祐一は聞き返す。

「少し込み入った事情があってな。どうしてもお前に頼みたいんだ。どうせお前は日本に行く予定だったんだからちょうどいいだろ」

祐一は日本で一人暮らしすることになっていた。ただし親戚の家の近くでという条件つきだが。

「そういう問題じゃないだろ!大体そんな重要なものを無関係の俺に押し付けるな!自分の会社の人間に運ばせろよ!」

弘一は、怒鳴り散らす祐一の反応を予想していたようで、ニヤニヤしながら話を続ける。

「ほう、そうか。それなら日本での一人暮らしの費用は当然自分でだすんだな?親の援助は一切いらないというんだな?」

「・・・・・・ぐっ。卑怯だぞ。親父」

「じゃ、頼んだぞ。せいぜい気をつけろよ。最後までしっかりお前が運べよ」

「うぐぅ・・・・・・」

結局祐一に残された選択肢は一つしかなかった。

 

 

 

 

 

−翌日−

「七年ぶりだな・・・」

空港から出た祐一はトランスポーターに寄りかかり感慨に耽っていた。

祐一にとっては七年ぶりの日本なのだから無理もないだろう。

ニューマシンはトランスポーターに積んである。ここからは祐一がトランスポーターで運ぶことになっている。

 

−数時間後−

「マジか・・・。勘弁してくれよ・・・・・今日中に運ばなきゃなんないだぜ・・・・・」

トランスポーターは道路の脇に泊まっていた。

前輪が見事にパンクし、当然走行出来そうにない。

既に富士岡サーキットではフリー走行が開始されている。

予選が開始されるのは明日からだが、今日中に車検を行わなければクオリファイには出場できない

「たくっ・・・・・なんで俺がこんな目に・・・・・」

途方にくれた祐一は修理会社に連絡しようとして携帯を取り出した。

「ぐはっ・・・圏外・・・」

郊外の一本道だ。

辺りに建物など見当たらなければ、人気もない。

「もしかして絶望的?」

一人呟いていたところ

バラララララララッ!

そこに一機のヘリが飛んできた。

助かった―――そう祐一が思った瞬間、

『そこのトランスポーターのドライバーに告ぐ!速やかにその積み荷を引き渡せ!』

「はい?」

昨日に続きまたもやハニワ顔のなる祐一。

当然、父親の弘一からこんなことは聞いていない。

雰囲気からしても、弘一が手配したわけでもなさそうだ。

『繰り返す!速やかに積み荷を引き渡せ!!』

「訳がわからんけど、渡したらまずいことになるよなぁ」

そして、出発直前に弘一が言っていた言葉を思い出す。

 

いいか、このマシンは何が何でもお前が届けるんだ。いいな

 

普段のおちゃらけた態度と違い、あのときの表情は真剣そのものだった。

とりあえず祐一は自分が置かれている状況を整理してみた。

1.トランスポーターはパンクして動けない。

2.ニューマシンのキーは祐一が持っている。

3.マシンは今日中に届けなけれなばいけない。

4.ニューマシンを渡すわけにはいかない。(多分)

「・・・・・・・と、なるとやることは一つか・・・・・」

そして祐一は一つの結論を出し、行動に移すことにした。

トランスポーターの荷台を自動で開き、その間に祐一はニューマシンの中に乗り込む。

ヘリからは祐一が乗り込んだのは見えていないだろう。

「これが父さんの作ったマシンか・・・・・」

マシン本体には装甲を始め色々なオプションパーツが装備されていた。

「さて・・・うまくいくかな?」

祐一はサイバーフォーミュラのライセンスを持ってはいたが、サーキット以外で動かしたことなどない。

祐一は恐る恐るキーを差し込む。

ブーン

カチッカチッ

同時に祐一はイグッションキーを押し、エンジンを始動させる。

すんなりとエンジンはかかり、ギアを入れ替えアクセルを踏み込む。

「って、おお!?」

ヘリのクレーンがマシンを掴もうとした瞬間にカノンGSXは荷台から飛ぶように発進していた。

マシンのあまりの反応の良さに祐一自身が驚いていた。

「ちょっと、踏んだだけでこれか・・・・・っと、さっさと行くか」

道路に飛び出すと、すぐに走り出すが、ヘリもすぐさま追ってくる。

それを振り切ろうとアクセルを踏み込む、マシンのメーターは250キロ以上を示していた。

祐一がバックミラーを覗くとヘリはGSXを追跡している。

まだGSXを奪うことを諦めるつもりはないらしい。

「ええっと、無線は・・・・」

コックピットに備え付けられたボタンを適当に押していくが、どれも反応がない。

「だ〜、どれが無線のスイッチだ!?」

・・・・・なんという酷いドライビングだ。君は本当にライセンスを持ったドライバーなのか?

「・・・・・・は?」

サイバーシステムのマシンヘッドが動き、音声を発したのだ。

『このマシン、カノンGSXの性能を30%も生かしきっていない。ドライバーが未熟なのはわかるが』

「あー、うるさいっ!今はそんなこと言ってる場合じゃないんだよっ!」

カノンの声をさえぎって祐一が叫ぶ。

『私はナビゲーションサイバーシステム・カノン。君は誰だ』

「だから今は自己紹介なんてやってる場合じゃないっての!!」

やがてへリの下部からミサイルが発射され、前方の崖に直撃する。

その衝撃で崖は崩れGSXの前方を塞いでしまう。

「ぐあっ!こ、殺す気かよ!」

慌ててステアリングを切り、落石との接触を避けるが、そのまま舗装道路を飛び出し、荒地へと飛び込む。

GSXはオンロード用に調整されている為、車高が低く、激しい振動がマシンを襲い、スピードも落ちている。

「おいっ、もっとスピードが出ないのか!?」

『GSXは現在オンロード用に設定されている。よって、コースが不適切。コースを修正したまえ』

「それができればとっくにやってるわ!!」

『コース修正が困難ならば、ステアリング横のセレクトNo.1のスイッチをオンに』

「No.1・・・?これか!」

カノンの指示どおりにスイッチをオンにすると車高が上がり、マシンが安定し、スピードも上がった。

「こういう便利な機能があるならもっと早く言えよな・・・・」

『あなたに質問されたのは、たった今だ』

カノンの合成音がピシャリと言い放つ。

「ぐ・・・・コンピューターのくせに生意気な・・・」

『注意せよ。ヘリが上空に迫っている。回避運動をせよ』

カノンの言うとおりGSXの上空にはヘリがいて、クレーンで車体を掴もうとしているところだった。

「くっ」

祐一はクレーンから逃れようとステアリングをきるが遅い。

クレーンがGSXのサイドウイングをはさみこむ。

「しまった!」

『警告、このままではマシンが破壊される。減速せよ』

「それができりゃ最初から問題はない!この場を切り抜ける方法は!?」

『状況が把握できない』

「・・・・・・・これだからコンピューターは・・・・・くそっ、肝心なときに役に立たないな」

『それは私に対する侮辱と判断する』

「ぶ、侮辱だぁ!?・・・・・ってこんなことやってる場合じゃない!」

そうこうしている間にもクレーンがマシンを持ち上げようとしているのだ。

「こうなりゃ、こいつを使うしかないか」

祐一はブーストレバーに手をかける。

ブースト―それはマシンのシステムを稼動させるオイルを大量に消費し、タイヤやエンジンに掛かる負担も大きい為、

使用時間と回数が限定されるが、マシンパワーを瞬時に引き上げ、爆発的な加速ができる装置である。

一気にレバーをオンにして。アクセルを踏み込む。

『ブーストポッド作動。エンジン臨界点までカウントスタート!』

カノンのマシンヘッドが引きあがり臨界点までのカウントが始まる。

「いっけぇ――――っ!!」

一瞬でエンジンパワーが1.7倍に引き上げられ、爆発的なパワーを生み出す。

そのパワーはGSXを一気にヘリのクレーンから解放させた。

『クレーンから脱出成功。しかし前方に岩壁が存在している』

「があーっ!次から次へと!!親父の奴、後できっちり話をつけてやる!!」

『崖の亀裂をすり抜けていくことは可能』

岩壁の隙間は祐一の目でも確認できた。

すぐにカノンのモニターで表示された映像にはマシンの高さ分の幅があるようだ。

「え?」

『No.3のスイッチをオンに。シフト後方のファンレバーを前後に』

「OK,やってやるよ!」

カノンのいうとおりマシン一台の横幅はなく、マシンの高さ分のスペースがある程度だ。

ボディの両側についているファンの、左側のはボディを浮かせる向きへ最大パワーに、右側のファンは

ボディを路面に押し付ける向きへ最大パワーで可動を始める。

岩壁に激突する瞬間GSXの車体の左側がフワリと浮かび上がり、片輪走行へと移行する。

「おお!?」

片輪走行へと移行したGSXはそのまま岩壁の隙間へと入り込み、左側の車輪が岩壁を捉えた。

ボディは慣性の法則に従いそのまま岩壁へと押し付けられ、やがて右側のタイヤも密着することになった。

GSXのエフェクトファンは両方とも壁に押し付ける向きに回転させ、壁にはりついて走行している。

「す、凄い・・・・・」

この岩壁を抜ければ富士岡サーキットはすぐに見えてくる。

さすがにヘリもそれ以上追うことは出来ず、引き返していった。

 

 

「やれやれ・・・・・・・酷い目にあったな・・・・・・」

『あなたのドライビングテクニックは未熟すぎる。これからずっと付き合っていかなければならない私は不幸というべきだ』

「だったら安心しろよ、俺はここまでお前を運んだだけだよ。俺はスノークリスタルのドライバーじゃないんでね」

ちなみにクリスタルスノーとはカノンが所属するチーム。つまり祐一の叔母にあたる水瀬秋子がオーナーをしているチームだ。

『残念ながらあなたの声紋および角膜は既に私に登録された。あなた以外のドライバーがこのマシンに搭乗することはできない」

「なっ何ぃ!?」

『良きパートナーとなれることを願っている』

「あ・・・・あはは・・・・・・、何でこうなるんだっ―――――――!!!!」

祐一の叫びに応える者は・・・・・・当然いない。

祐一の試練はここから始まるのだった・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

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2001/12/8

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