Etarnal Memory

 

 

 

 

 

 

 

ダンダンダン!!

ダンダンダンダン!!

「う・・・・・・」

もはや毎朝の恒例となった騒音で目が覚める。

すぐに布団から出ようとして・・・・・・・・・・・・・・やめた。

も12月にもなると朝もかなり寒い。

この暖かい布団から出るのが苦痛なのは決して俺だけでないはずだ。

ダンダンダン!

・・・・・・騒音はいまだに鳴り止まない・・・・・・・

(仕方ない・・起きるとするか・・・・少なくとも今日ぐらいはな・・)

ザァッ

カーテンを開けると窓の向こうには澄空の制服に身を包んだ幼馴染が穏やかに微笑んでいた。

「あっ、今日は随分すんなり起きたんだね。感心、感心」

「そりゃあ、俺だってたまにはそういうこともあるさ」

「はい、はい。毎日そうだと私も助かるんだけどなぁ」

「こういうことはな、たまにあるからこそ、ありがたみがあるんだぞ?」

「ハァ・・・・私は毎日のほうがありがたいんだけどなぁ。ま、いっか・・・これもいつもの日課だしね」

半ば、諦めにも似た表情で溜息をつく彩花。

「じゃ、玄関で待ってるから早くきてよね?」

「ああ」

軽く手を振って応えると、彩花は屋根を伝って自分の部屋へと戻っていった。

さて、また何か奢らされないようにさっさと着替えるとするか。

机の上にラッピングされた包みを確認すると学校へ行く仕度を始めた。

 

 

 

 

 

「なぁ、彩花。放課後は暇だよな?」

登校中、いつもどおりに彩花の作ってくれたサンドイッチを頬張りながら尋ねてみる。

「うん、今日は別に予定はないよ」

「そっか、じゃあちょっと俺に付き合ってくれよ」

「あ、もしかして智也・・・・・」

「あ〜、えと、さ、今日はおまえの誕生日だろ?だから・・・・・さ」

こういうセリフを言うのは未だに慣れないので自分でも顔が赤くなるのがわかる。

「あはっ、私の誕生日、覚えててくれたんだぁ」

「そりゃあ、毎年のことだからな。忘れようがないさ」

小学生のころには毎年、唯笑を含めた3人でパーティを開いたものだ。

今更忘れようにも忘れようがない。

「待ち合わせは・・・・一回、家に帰ってから・・・・・俺んちに5時・・・・・いいよな?」

「うん、そだね。じゃ、放課後、楽しみにしてるからね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彩ちゃん」

「彩花さん」

「彩花ちゃん」

「桧月さん」

「彩花ちゃん」

「桧月さん」

「「「「「「誕生日おめでとう〜」」」」」」

「え?え?え?」

玄関に入った彩花を迎えたのは、唯笑、双海、みなもちゃん、音羽さん、小夜美さん、ついでに信。

いつものメンバーの祝福の言葉だった。

「な、なんで皆がいるの?」

予想もしなかった出来事に目を白黒させている彩花。

「えへへ〜、それはですね〜、智也さんが始めに言い出したんですよ」

「そうそう、彩ちゃんにはいつも世話になってるから、まとめてその分お礼がしたいって」

「あ、コラ!唯笑!俺がいつそんなこと言った!?」

「え〜、私たちもちゃんと聞いたよ〜、ねぇ?小夜美さん」

「そうそう、みんなが集まってるところではっきり言ったわね。お姉さんはちゃんと覚えてるわよ」

「だぁ〜!!音羽さんに小夜美サンまで!?勝手に話を作るんじゃない!?」

「でも、この話を企画したのは三上くんなのは本当ですよ」

「それはそうと、こんなところで立ち話もなんだし、さぁさぁっ、桧月さん、どうぞ奥に」

「おい、信っ、ここは俺の家だぞ」

「まぁまぁ、細かいこと気にするなって」

こんな馬鹿騒ぎをしている俺たちのやりとりに彩花は・・・・・

「あははっ、みんな・・・・・ありがとうっ」

嬉しそうに微笑んでいた・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

リビングには小夜美さんや音羽さんが作った料理と双海の紅茶がならび、唯笑やみなもちゃんの手で飾り付けられていた部屋で、

信と小夜美さんがボケて音羽さんが突っ込み・・・・・みなもちゃんと唯笑がはしゃぎ、双海の紅茶トークが始まる・・・・

いつものメンバーが揃い、いつもと同じように騒いでいた・・・・・・・・・。

そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ・・・・・・・・・・

 

 

 

「あ、もうこんな時間になっちゃったんだ・・・・・・」

「本当・・・・・時間が経つのは早いわねー」

ふと、気付くと時計の針は22時を過ぎようとしていた。

信はともかく、みなもちゃんなんかはこれ以上遅くなるとまずいか・・・。

「じゃ、私たちはそろそろおいとましましょうか」

「そうですね、これ以上いるとお二人の邪魔になっちゃいそうですし・・・・彩花さん、後は智也さんとお二人でごゆっくり過ごしてくださいね」

双海は珍しく、意味ありげな視線で俺たち二人を見る。

「ななななっ何言ってるの、詩音ちゃん」

「あっ、彩ちゃん、真っ赤になってる〜」

「わっ、本当。彩花ちゃん、耳まで真っ赤だよ〜」

「も、もうっ、唯笑ちゃんにみなもちゃんまで・・・・」

「うふふっ、青春っていいわよね〜」

小夜美さんってたまに妙におばさん臭くなるのは気のせいだろうか?

「じゃ、ここらで俺たちは退散するとしましょう!皆様は不肖ながらこの稲穂信が駅までお送りいたしましょう」

「稲穂くんじゃぁ・・・・・ちょっと頼りないかな?」

「そ、そりゃないよ、音羽さん〜」

「あははっ、冗談だって」

 

と、まぁ・・・・・・・・こんなわけで

「結局、帰るときまで騒がしかったなぁ」

「あははっ、そうだね。でも、私は楽しかったよ」

「まぁな。な、少し外、歩かないか?」

「え、でも。片付けないと・・・・・」

「あのなぁ・・・・・・今日の主役がそんなことやってどうするんだよ。んなことはあとで俺がやるから気にするなって」

なんというか・・・・・自分の誕生日にまでそんなことを気にする彩花に苦笑するしかなかった。

 

 

 

「わ、やっぱり外は寒いね・・・・」

「もう12月だからな・・・・・・これからもっと寒くなるぞ」

「そして智也がなかなか起きなくなるんだよねぇ〜」

「う・・・・・・・・・・・・・」

「ま、これも毎年のことだから慣れてるけどね」

まずい、このままだと俺にとって良くない方向に話が進みそうだ。

慌てて俺は話題を切り替える

「で、今日は満足してもらえたでしょーか?」

「・・・・・うん、そうだね。本当に楽しかったよ。クリスマスもまた、皆であーやって騒げたらいいかな」

「彩花がそうしたいっていうんなら俺も同意見だな」

他愛のない話をしながら、俺たちは目的地へと辿り着く。

「やっぱり、ここの公園に向かってたんだ・・・・・・」

「ここは俺たちにとって思い出の場所だからな」

そう、ここは俺が告白をし・・・・・・互いの気持ちを確認したあの公園だ。

俺はコートのポケットからラッピングされた包みを取り出す。

「彩花・・・・・これ、えーっと、誕生日プレゼント・・・・」

「・・・・ありがとう・・。ね、今開けてもいいかな?」

「ああ、もちろん」

包みをあけると中には2つのイヤリングが姿を表す。

「わぁ・・・・・・本当に貰っていいの?」

「バーカ・・・・・当然だろ。他にあげる奴もいないしな」

ちょっと照れくさくなってそっぽを向く。

「智也・・・・・・今日は本当にありがとう・・・・」

「・・・・・・・礼をいうなら俺のほうさ・・・・いつも、ありがとうな・・・・・・・」

いつも世話になってるのは俺のほうだからな。

こんなときでもないと面と向かっていう機会もないけど。

彩花には本当に感謝してるんだ・・・・・。

「彩花・・・・・・・誕生日おめでとう・・・・・・」

そして俺たちはどちらともなくキスをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UP 2001/12/7

TOPへ  SSメニューへ 

採点(10段階評価で、10が最高です) 10
お名前(なくても可)
メールアドレス
(管理人からの返信希望の方のみ)
できれば感想をお願いします

 

************************************************************