共和国軍ディープブルーウインドウ小隊隊長セラ=マクロード中尉が駆る蒼き疾風ブレードライガー。

己の信念を信じ、戦場を求め荒野を駆ける盗賊フェル=ハウンドが駆る紅の魔装竜ジェノブレイカー。

「「オォォォォォォォ!!!!」」

両機のコックピットに雄叫びにも似た叫びが木霊する。

              絶望の大地 〜紅の竜 鎖〜

両機がぶつかり合う直前の事だった。

突然飛来した砲弾が19基地の宿舎に直撃した。

「なっ!?」

「ハウンド、正面だ!」

振り向くとミサイルはブレイカーの目の前まで迫っていた。

「くっ!」

Eシールドさえ張る暇がなかったブレイカーはとっさにエクスブレイカーでミサイルを挟んで投げ飛ばす。

「今のミサイルは・・・」

「アイアンコングの全天候ミサイルだな」

モニターを拡大すると、数十キロ先に共和国ゾイドを多く含む大、中型のゾイドの群が見えた。

大型が8機、中型が12機。加えて、遠距離射撃用に改造されたモルガが20。

「来るぞ!」

マクロードの声と同時に砲弾の雨が降る。

しかし、そのほとんどの砲弾は着弾することなく爆発した。

2人の後ろでは4機のゾイドがそれぞれの砲塔から煙を上げて立っている。

「野党・・・ですね」

「にしては質も量もずいぶんと豪勢よね」

2機のシャドーフォックス。

「ったく。人が気持ちよく寝てたってのにな」

「いきなり攻撃するのは卑怯です」

そして、コマンドウルフ・シルフォードカスタム、ガンスナイパー・ルーンクロノス。

「その声・・・昼間の二人か」

「そうだ。帝国部隊のほうは基地の鎮火を急いでいるので俺達だけでも加勢する。えと・・・」

「ハウンド。フェル=ハウンドだ」

ハウンドが微笑して名乗る。

「俺はアーク=レインリーフ。そっちは仮の妹のシーラ=プリムローズ」

「宜しくお願いします。ハウンドさん、あ・・・」

マクロードがシーラの視線に気づいた。

「ん・・・私もか。セラ=マクロードだ。あの二人はテュア=フレインとセリア=クルセイル」

自己紹介をしている間は一度目の砲撃を撃ち落とされて少々退いていたようだ。

一通り終わったところで再び盗賊の砲撃が始まる。

「何度やっても同じだ!」

シルフィードの前足のボマーユニットが開き、幾発もの弾丸が打ち出される。

続くようにして残りの機も砲撃を開始した。

遠距離戦ではらちが開かないと判断した盗賊団が接近戦を試みて突撃してくる。

一機のディバイソンがツインホーンクラッシャーを突き出し、主力兵器である17門の砲塔を フル可動させながら突撃してきた。

ブレイカーはディバイソンをエクスブレイカーで切り裂き、アーク達は散らばってそれをかわし 他の敵ゾイドを攻撃した。

盗賊団如きなら集団で固まるより個々に叩いた方が効率がよいと判断したのだろう。

しかし、この盗賊どもはバラバラになった機体を規則的に囲み、攻撃しようと行動した。

まるで意志が統率された正規軍のように。

「ハウンド、アーク!お前達は敵の頭を叩け!残りの者は二人を援護する!」

マクロードが指示を出す。

いくら正規軍じみた戦い方をしていても一体一体みればそれは他の盗賊となんら変わりはない。

つまり、こいつらには何者か、戦略に長けた者がついている。

「了解!しっかり援護してくれよ!」

フォックスとライガー、ルーンクロノスが盗賊の群に道を作る。

シルフィードとブレイカーがそこを駆け抜け、群の後ろに回り、そこから敵の司令塔を探す。

「・・・全員が戦闘に参加しているぞ。指示を出している者は戦いながら戦況を判断しているのか?」

「あるいは・・・ここにはいないのか」

エレファンダーの攻撃を避け、反撃をしたところで19基地から連絡が入った。

盗賊の通信を報受したところ、司令塔はすぐ後ろにある山岳のふもとにいるという。

「すぐうしろ、ったって・・・どう見ても50キロ以上あるぞ!?」

「お前達のゾイドなら10分弱でいけるだろう」

「ここは私たちが護るから。お兄ちゃん達は行ってきて!」

マクロードとシーラが次々に言いう。

「往復で20分だ。それまで絶対に持ちこたえろ!」

「うん!」

アークの言葉にシーラが力強く頷く。

「だったら・・・さっさと行くとするか」

ブレイカーが走り出す。

続けてシルフィードも駆ける。

彼らに盗賊からの攻撃が無いわけではない。

盗賊もこちらの意図が読めたらしく、二人に攻撃を浴びせようとしている。

しかし、そのことごとくが残った四人によって阻まれているのだった。

「必死にお前を護ろうとして・・・フッ、兄思いの良い妹じゃないか」

ブレイカーの中でハウンドがアークに話しかける。

「あいつの居場所は俺の隣りって小さい頃に決めたことがあってな。俺がいなくなったら居場所が 無くなるんだとよ」

苦笑しながら、しかし、嬉しそうに言うアークを見てハウンドも微笑んでいた。

「お前達の間には鎖が見える」

「鎖?」

「ああ・・。束縛するための鎖じゃない。互いに離ればなれにならないための鎖がな」

照れくさそうに顔をかきながらアークが返す。

「あんた等にもその鎖はつながってるぞ。きっと、いや、絶対な」

ハウンドは何かを言おうとしたが、止めておいた。

目的の場所が見えたからだけではない。

何故かは分からないが、口に出して言おうとは思わなくなったからだ。

「さ、おしゃべりもここまでだな。ここからは気を引き締めて行くぞ」

「了解した」