ジェノブレイカーの前に、狂気の満ちた笑い声と共に、見たこともないゾイドが現れた。

ハウンドの顔色が変わる。

「バカな・・・」

それはそのゾイドの出現のためではない。

「貴様は死んだはずだ!何故ここにいる!?」

声の主、

「グラン!!!」

グラン=ニコラスの出現のためだった。

              絶望の大地 〜紅の竜 “運命”〜

「クックックックッ・・・お久しぶりです。いや、初めまして、か。フェル=ハウンドさん」

グランのその声は、かつてグリューネルを滅ぼしたときのままだった。

「あの時、爆風でコックピットから吹き飛ばされて助かったんです。神が私を殺さなかったという ことですよ」

にやつきながら淡々と語るグラン。

「“神”・・・だと?フッ・・・“悪魔”の間違いだろ!?」

ブレイカーが仕掛けた。

エクスブレイカーを展開し、グランの見たこともないゾイドに突撃をしたのだ。

「突撃とは・・・相変わらずですね・・・」

グランのゾイドが恐ろしいほどの速さで移動し、エクスブレイカーが空を切った。

「そんな物ではこいつには傷一つつけられませんよ。この・・・」

グランのゾイドの背部から、何かドリルのような物が現れる。

「バーサークフューラーには!」

ドリルがブレイカーを襲う。

「くっ!」

避けきれず、Eシールドを張ったが、やすやすと貫かれ、装甲をかすった。

「どうですか、このバスタークローの味は!」

2本のバスタークローが次々とブレイカーに襲いかかる。

「・・・お世辞にも、美味い、とは言えんな」

ハウンドは苦笑しながら答え、後方へブレイカーを飛ばせた。

「間合いを取ってバスタークローを使わせないつもりでしょうが・・・無駄ですよ」

両足のアンカーで固定されたフューラーの尻尾と首の装甲がせり上がり、口内に出現した砲塔には 光りが集められて行く。

それを見たハウンドの脳裏に、ある言葉が浮かび上がる。

“荷電粒子砲”

それは、先ほど自分が使用した、最悪の兵器の名だった。

口内の砲塔に集められた光が、着地したばかりのブレイカーに向けて放たれた。

「!!」

Eシールドを張り、とっさに左へ避ける。

紙一重で避けることは出来たが、激しい衝撃がハウンドを襲った。

「くっ、お返しだ!」

アンカーによる固定が解けていないフューラーは回避行動がとれない。

そう判断したハウンドは、ブレイカーを荷電粒子砲発射形態にし、すぐさま荷電粒子砲を打つ。

「な、何!?」

アンカーも出さずに粒子砲を放ったブレイカーは、反動で後ろにあった岩にたたきつけられたが、 グランもこれは予想外だったらしく、荷電粒子砲の直撃を受けた。

フューラーの周りに土煙が舞う。

(・・・・)

徐々に土煙が晴れて行く。

土煙が無くなると、バスタークローと一部の装甲を失ったフューラーが現れた。

「・・・・・やってくれたな、ハウンド」

邪悪なまでに禍々しいグランの声がする。

凄まじい勢いで攻撃を仕掛けるフューラー。

「お前はここで死ぬ!それがお前の運命だ!!!」

「ここで死ぬのが俺の運命?笑える冗談だな!!!」

勢いに押されていたブレイカーは、迫り来るストライクレーザークローを ハイパーストライククローで受け止め、エクスブレイカーでの反撃を開始した。

止められたレーザークローを無理矢理ブレイカーから放し、エクスブレイカーを避け、 すぐさま攻撃をするフューラー。

「何?お前は“運命は変わる”とでも思っているのか!?残念だが、どうあがこうとも運命は 変わらん!!」

攻撃をかわし、振り向きざまに放ったフューラーのストライクスマッシュテイルが ブレイカーに直撃した。

「ぐぅ・・・」

倒れそうになるブレイカーを無理に起こす。

「運命は変わらない、そんなことは承知している!」

「ならば・・・潔くここで消えろぉぉぉ!!!!!!」

フューラーが再び荷電粒子砲を放った。

しかし、かなりのダメージを受けているためか、先ほどのような激しさは無く、ブレイカーの Eシールドを破ることは出来ない。

「運命は変わらない。だがな、俺の“運命”は・・・・」

ブレイカーがフューラーに向かって飛んだ。

「俺の“運命”は・・・・こんなところで終わりはしない!!!!!」

ストライククローが頭部にあたり、フューラーが倒れた。

フューラーはすぐさま起きあがり、ブースターに火を点け、空中に止まった。

「くっ・・・今回はこれで引き上げよう。しかし・・・・・フェル=ハウンド!次ぎに合うときは 必ず貴様を殺す!覚悟をしておけ!」

それだけ言うと、フューラーは低空を飛行して何処かへ消えていった。

「・・・・ふん、正直、貴様とは二度と会いたくはないな」

つぶやいて、ブレイカーは傷ついた身体で町へと戻っていった。

フューラーは荒野を走っていた。

「ちぃ!何故、新型を使っても勝てないのだ!帝国から盗んできたゾイドでは駄目だというのか!?」

フューラーに悪態をついていると、通信機が鳴り響いた。

「こちら第6研究所です。聞こえていますか、グラン少佐?」

「聞こえている。どうした、何かあったのか?」

通信機には若い白衣を着た男が映っている。

その後ろでは、数人の白衣を着た人が何やら慌ただしく働いているようだった。

「例の物が完成しました。早急にこちらまでお戻りください」

グランの表情が変わる。

「了解した。すぐに行く」

通信を切ると、グランはフューラーの向きを変え、走り出した。

「あれが完成したか・・・・クックックックック・・・・・ハーッハッハッハッハ!!!」

何もない荒野には、バーサークフューラーの邪悪な影が映し出されている。

邪悪な、漆黒い影が・・・・・・。