乾いた山岳地帯を1機のシールドライガーが走っている。

その荒い走りは、なにかから逃げている、ともとれる。

突然、ライガーの頭上から、ジェノブレイカーが姿を現す。

ライガーは慌てて引き返そうとしたが、ブレイカーの攻撃の方が早かった。

頭部を破壊されたライガーは、その場に倒れ、沈黙した。

そんな光景を見下ろす1人の男がいた。

「まさかこの様なところで出会うとはな。・・・フッ、宿命、か。だが・・・まだ早い。 夜はこれからだ。・・・・・行くぞ」

グルルルル・・・グオオオオォォォォォ!!!!!!!

男に反応したのか、後ろにいた、恐ろしいまでに凶悪な眼をした機獣が吼えた。

            

絶望の大地 〜紅の竜 “荷電粒子砲”〜

 

仕事を終えたハウンドは小さな町の宿所にいた。

今回は予想していた以上の報酬だった。

食料と弾薬を買っても金銭的に余裕があったのでここに泊まる事にしたのだ。

何ヶ月ぶりかの風呂から出て食事をとる。

「・・・もう夜か」

食事を終えて、ふと、外を見ると、すでに陽は落ち、2つの月が昇っていた。

外に出てみた。

得に用事は無いのだが、なんとなく出てみた。

他に誰もいなかったので、上を見上げて歩いてみた。

月が妖しく、されど美しく輝いていた。

気がつくと、ジェノブレイカーが置いてある町はずれまで来ていた。

ブレイカーを見上げる。

(・・・・・・・)

突然、爆音がし、強い光りが町を照らした。

「砲撃!?どこからだ!?」

ブレイカーに乗り込み、モニターで辺りを見回す。

町から少し離れた岩場に、カノントータスが2機とプテラスが1機いた。

ブレイカーを最高速度で走らせると、10分もしないうちに、肉眼で確認出来る距離まで近づけた。

(ここで気づかれると砲撃戦だな。しかし、飛行しているプテラスに気づかれずこれ以上近づくことは 不可能に近い・・・)

岩山の上には1機のゾイドが待機していた。

昼間の戦闘を見下ろしていた、恐ろしく凶悪な眼をしたゾイドだ。

この場所からは2機のトータスと1機のプテラスだけが見えている。

「・・・来たか」

ゾイドの中で男が呟いた。

と、一発の砲弾がプテラスに直撃し、プテラスはその場で爆破した。

それを見た2機のトータスは、見えない敵を警戒して互いに背中を合わせて対空砲を構えていた。

どこからか、一筋の閃光が放たれた。

閃光は、2機のトータスを飲み込み、消えた。

トータスは、残骸すら残さなかった。

待機していた凶獣が動き出す。

岩山から飛び降り、閃光が放たれた方へ走り出した。

ジェノブレイカーが放ったマイクロポイズンミサイルはプテラスに直撃し、爆発した。

それを見届けたハウンドはブレイカーを荷電粒子砲発射形態にする。

ブレイカーの口内の砲塔が妖しく輝き、その輝きはやがて一筋の閃光として打ち出された。

その閃光は、向きを変えずに飛んでいった。

閃光は、2機のトータスを飲み込み、消えた。

跡には残骸すら残っていない。

(この化け物が・・・)

愛機に、いや、“荷電粒子砲”という、恐るべき兵器と、それを使ってしまった自分に悪態をつく。

少しして、町に戻ろうと、後ろを向いた。

凶獣は、岩山から飛び降り、閃光が放たれた方へ走り出した。

凶獣のパイロットの表情には、憎しみと喜びが混じり合っている。

「3人もの部下を犠牲にしたんだ。違っていたら、町を1つ消してでもあんたを捜してやるよ」

男がにやりと笑い、その手に力が入る。

凶獣の眼に紅の魔装龍が映った。

手にさらに力が加わる。持っている操縦桿が折れてしまいそうなほどだ。

ブレイカーが向きを変えた。

見えた。

はっきりと、蒼い“F.H”の文字が。

「見つけた・・・。クックック・・・ハーッハッハッハ!!!!」

「クックック・・・ハーッハッハッハ!!!!」

向きを変えたブレイカーの前に、狂気の満ちた笑い声と共に、見たこともないゾイドが現れた。

ハウンドの顔色が変わる。

「バカな・・・」

それはそのゾイドの出現のためではない。

「貴様は死んだはずだ!何故ここにいる!?」

声の主、

「グラン!!!」

グラン=ニコラスの出現のためだった。