辺りに轟音が響き渡る。

戦場で、帝国軍の指揮をとっていたレッドホーンが爆発を起こした。

それにより、残った数機のレブラプターが退散する。

あとに残ったのは2機のガンスナイパーと1機のコマンドウルフ、そして左のシールドに 青く“F.H”と記された1機のジェノブレイカー・・・。

 

 

絶望の大地 〜紅の竜〜

 

 

ここは共和国の小さな基地。

格納庫に先ほどの戦闘で傷ついたゾイド達が入ってきた。

「さっきは助かった。ありがとう」

ウルフから降りてきた男がブレイカーから降りたばかりの男に語りかけた。

「仕事だからな。それより・・・」

そこまで言うとウルフのパイロットが何か重い物が入った袋を差し出した。

「解ってるよ。報酬だろ。今回は少し多めにしておいたぞ」

ブレイカーのパイロットは微笑してそれを受け取ると、何も言わずに愛機に乗り込んだ。

「おいおい、少しくらい休んでいったらどうだ?」

ウルフのパイロットの言葉も聞かずに格納庫から出て、そのままどこかへ走り去るブレイカー。

その姿を格納庫の入り口でウルフのパイロットとガンスナイパーのパイロットが見つめている。

「・・・彼は有能なパイロットです」

ガンスナイパーのパイロットが誰ともなく話しかける。

「解っている。パイロットとしても、指揮官としても、な」

「でしたら、何故ここに彼を引き留めて置かないのです?傭兵だったら、敵の回す日も来るかも 知れないでしょう」

男の声が少し荒ぶる。

「私だって引き留めておきたいさ。しかし、彼は自由を好む。そしてなにより・・・」

ウルフのパイロットはそこで言うのを止めてしまった。

「とにかく、彼はどんなことがあっても軍人にはなるまい。盗賊フェル=ハウンドはな・・・」

ブレイカーは、何もない、広く果てしない大地を疾走していた。

パイロットのフェル=ハウンドは現在、愛機と共に盗賊兼傭兵として勝手気ままに 各地を渡り歩いていた。

(休んでいったらどうだ・・・か)

「フッ・・・・・俺には休む場所すらない」

ハウンドが独り言のように呟いた。

声は寂しそうだったが、表情には寂しさなど微塵も無かった。

(そう・・・。あの時、フィクスは死んで・・・何も持たない俺が出来た)

フィクス=フェネラル。

敗戦により仲間を失ったその男は、自分が撃破した敵機の爆炎の中に消えた。

(何も・・・過去も持っていない俺は、これから何をすればいいのか)

「フッ・・・・・決まっている」

ハウンドが再び独り言を言う。

「過去が無いのならば」

しかし、先ほどのような呟きではなく、今度はしっかりとした声に出して。

「己の力で、未来に向かって突き進めばいい!」

ジェノブレイカーは疾走った。

何処へ続くとも知れない、果てしなく長い路を・・・。

その先に待っているのは絶望や悲しみかも知れない。

しかし、彼と、彼の愛機は真っ直ぐ、ただ真っ直ぐ疾走って行く。

その先にあるものを深く信じて、それに向かって疾走って行く。

何処へ、そして何処まで続くとも知れない、終わり無き路を・・・。