日が沈み、暗黒の夜が来て、再び日は上がる。

フィクス=フェネラル中尉は今や帰る基地も無くなっていた。

すでに“中尉”という地位、いや、帝国兵だという事も疑わしかった。

 

 

 

 

 

絶望の大地 〜帝国軍第306小隊〜

 

 

 

時々、グランが言った言葉が思い浮かばれる。

『もはやこの国は腐っています・・・』

『ですから中尉、どうか私と共に共和国に・・・』

(結局、奴はどうしたのだろうか・・・。今もグリューネルの元にいるのか、それとも・・・)

急に凄まじい爆音がフィクスの乗るジェノブレイカーを襲った。

どうやら戦場が近いようだ。

ブレイカーを高くせり上がった丘の上へ走らせる。

そこからは肉眼で戦場が確認できた。

大規模な戦闘だ。

両軍共に100体はいた。

帝国がかなり押されている。

(どうする・・・。助けるか?)

すこし迷ったが、ブレイカーは戦場へ向かった。

戦場に着くやいなや、砲弾がブレイカーを襲った。

それをかわし、近くにいた一体のガンスナイパーを叩きつぶす。

突然、衝撃を受け倒れるブレイカー。

低空飛行をしていたレイノスからの攻撃だった。

すぐさま身体を起こし、空中にAZ80mmビームガンを発射する。

右翼を貫かれ墜落するレイノスは墜落先にいたレブラプターにより完全に沈黙させられた。

この紅き魔装龍の出現により勇気づけられた帝国軍は、戦況を五分五分にまで持ち直すことが出来た。

戦場を駆けめぐり、敵を撃破していく魔装龍。

ふと、小、中型が目立つ戦場のなかで3機のウルフに襲われているアイアンコングを発見した。

3機のうち2機を潰したが1機は逃がしてしまった。

フィクスはコングのパイロットに通信を入れてみた。

「こちらジェノブレイカー。あんたがこの部隊の隊・・・・」

なんと通信用モニターに映ったのは愚将、カーファス=グリューネルだった。

『き、貴様は!ふん!余計なことを!儂なら3機とも撃破できたわ!』

(まさかこんな奴に手を貸してしまうとは・・・)

そう思い、ブレイカーを走らせようとするフィクス。

『貴様の手など借りぬ!邪魔だ、さっさと出て行け!』

グリューネルは未だに暴言を吐き続けている。

「・・・こちらもお前だと解っていれば助けなかったよ」

言い終わると同時にコングは頭部が爆発し、完全に沈黙した。

「なっ!?」

コングが倒れると後ろに茶色の巨体が現れた。

ゴジュラスmk−Uだった。

その砲塔からは煙が立ち上っている。

『おひさしぶりです。中尉』

ゴジュラスから聞き覚えのある声がする。

「・・・グラン」

グラン=ニコラス少尉。

グリューネルの部下だった彼はかつての主人を虫けらの如く葬ったのだ。

ゴジュラスの4連装ショックカノンが発射された。

標的はジェノブレイカー。

「逆賊め・・・。祖国の恩を忘れたか!」

いいながらこれをかわし、時速250をゆうに越える速度で接近する。

間合いが急速になくなり、ブレイカーがエクスブレイカーをゴジュラスに向けて突き出した。

『逆賊?フッ・・・』

ゴジュラスは軽々と、繰り出されたエクスブレイカーを受け止め、バスターキャノンを発射した。

至近距離からのバスターキャノンを喰らい、吹き飛ぶブレイカー。

「ぐぅ・・・」

激しい衝撃がフィクスを襲った。

とっさにEシールドを張ったがダメージは大きく、右のシールドを失ってしまう。

『俺はもともと共和国の人間なんだよ。お前等、下等な帝国の野郎とは違うのさ』

その声は今までのグランの声とは違っていた。

『まぁ、あんたは他の奴と違っていて俺達にも劣らない逸材だ。今からでも遅くはない。さぁ・・・』

『俺についてこい!フィクス=フェネラル!!!』

「断る!!!」

グランの声に勝るとも劣らない迫力で即返答したフィクスは、傷ついた相棒をゴジュラスに向けて 疾走せた。

『・・・愚かな。散れ!!』

バスターキャノンキャノンの雨が降る。

相棒を巧みに操り、それをかわし接近する。

あと少しで両者が激突する。

その時、一発が目の前に落ち、たちあがる砂煙がブレイカーの視界をふさいでしまった。

『ハ、ハハハハハ!!!消えろぉぉぉぉぉ!!!!!!』

グランは全ての弾薬をその砂煙へと打ち込んだ。

「消えるのは貴様だ!」

全ての弾薬を打ち終えたゴジュラスの頭上から紅き魔装龍ジェノブレイカーが姿を現した。

『瞬間でそこまで飛んだだと!?ば、バカな!』

“F.H”と青く刻まれた、左のシールドから一対のエクスブレイカーが展開される。

『う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!』

「・・・・・終わりだ。」

グオオオォォォ・・・・・!!!!

エクスブレイカーがゴジュラスのコックピットに突き刺さり、ゴジュラスが断末魔の叫びをあげる。

戦場を一陣の風が吹き抜け、頭部を失った機獣はその身体より巨大な炎の柱を築いた。

あとには何も残っていなかった。

そう・・・何も・・・。

あれから2年の月日が流れた。

あの戦闘は結局、共和国、帝国、どちらともなく引き上げはじめ、決着はつかず、爆炎に消えた フィクスとグランは、共に「戦死」とされた。

そして、ここはとある町のはずれ。

旅人がゾイドと共に小休止することを目的に作られたスペースのようなものがある。

そこに一台のレッドホーンが入り、男性が降りてきた。

男性は左隣りにあるジェノブレイカーのパイロットに話しかけた。

顔見知り、というわけではなさそうだ。

「失礼ですが、あなた、フィクス=フェネラルさん・・・ですか?」

「・・・・・人違いだ」

男は少したってから答えた。その顔にはかすかに笑みがある。

「そうですか。いや、私は軍人でしてね。以前、基地内であった人にそっくりだったもので。すみませんでした」

男性はいすに腰掛けると、ポケットから煙草の入った袋を取り出した。

一本取ってから袋を男に向ける。

男が首を振ったので男性はそれをまたポケットへ入れた。

「その人、色々あって今じゃ戦死とされていますけど、私はその人はあんな事で死ぬような人じゃないと思っているんですよ」

くわえた煙草に火を点けて一度吸う。

「・・・フィクスは、あの爆発で死んだ」

男は立ち上がり、相棒に乗った。そろそろ行くようだ。

「おや、行ってしまわれますか」

男性が引き留めるように言った。

「これから仕事があるからな」

「仕事、ですか。何をしておられるのです?えっと・・・」

男の名前を言おうとしたのだが、まだ聞いていなかったことに気づいた。

男もそれに気づいたようだった。

またもや微笑しながら名乗る。

「フェル=ハウンド・・・盗賊だ」

駆けて行く紅の魔装龍の左のシールドには、“F.H”の文字が青く輝いていた。

〜end〜

 

 

 

 

 


ども、ネメシスです。

いや〜なんというかうちのZKDと違って非常にハードな展開です。

フィクス改めフェル=ハウンドのキャラも渋くていいです。

どうやらこれからも続いてくようなので次回も期待しています〜。