Present for you


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「ガロード?」
「悪い。ティファ、少し出かけてくる」

「はい」

そう言って彼は今日も出かけてしまいました。
窓から見える外は一面の雪一週間ほど、この場所に停泊しています。
その少し前から彼、ガロード・ランは少し変でした。妙にそわそわして私の顔を見るとほっとするようで
けど、直ぐに何処かに行ってしまいます。彼が帰ってくるのを待つ間、私はたまらなく不安になります。
もし、彼が帰って来なかったら。そんな事を何度も何度も考えてしまいます。
そんな事は無い、わかっているけれどもそんな事を考えてしまう自分が少し嫌になります。
「ガロード」
そう呟いても返事は返ってくることはありませんでした。



「ガロードの事?」
「はい」
ティファがブリッジに立っていたサラ・タイレルの所へ向ったのはそれから数分後の事だった。
手にした書類をモニターの上に置き彼女と向き合う。
「なるほどねぇ、年頃の男の子だもんねぇ」
今、ブリッジに唯一いるトニヤが会話に割り込んでくる。
「よしなさい」
「冗談よ、で彼の行き先が気になるんだ」
「はい」
「本人に直接聞いてみたら?」

提案はサラから出されたがやはりティファの性格上無理がある。

「じゃあ、私から聞いてみるわ」

とトニヤ。ティファも

「お願いします」と返事をする。



場所は移って娯楽室。ウイッツが一人熊の置物と戯れている。
その隣に腰掛けているのはトニヤ、本人に聞くのもいいがこの方が良いだろうと言う判断だ。

「ガロード?そういや最近よく出掛けてるな」
「ねぇ、何か知らないの?」
「いや、俺知らねぇな、ロアビィにでも聞きゃあ良いだろう?」
「それは今サラがやってる所」

その事を聞いた途端に顔色が一瞬変わる。
無論、それを見逃すトニヤではない。

「何か隠してるんでしょう?」
「知らねぇよ」
「隠したって解かるんだからね」
「隠しもしないし、知りもしねぇよ!!」

ここまでになると意地のぶつかりあいになってしまう、
永延続いた末に結局勝負はつかず、勝負は引き分けに終わった。



「ロアビィは見つかったぁ?」

疲労困憊のトニヤがサラが見つけ声をかける

「それより声が変よ。大丈夫?」
「そうでもないみたい、そっちはどうだったの」
「ロアビィはキッドと一緒にいたわガロードの事は知らないって言ってたけど」
「なるほど、カラクリは解かったわ」

「からくり?」

まだ解かっていないサラの耳元でそっと自分の推理を聞かせる。
要約すると、男性陣が一緒になって何かを隠していて、その何かは
まず間違いなくガロードの事だろう、と言う事らしい。
周りには誰もいないがこう言う仕草をするのはこう言うことをやってみたいと言う
彼女の性格を反映しているのだろう。

「わかったわ、それじゃあこの事は伏せておいた方が良いわね」
「そうそう、見守っておいてあげましょう」



部屋の中でガロードが帰ってくるのをを待っている。
こう言う心境は独特で言葉では言い表しにくい。
そっと立ち上がり部屋の隅にあるキャンバスへ向かい椅子に腰掛ける。
だが、その後は続かずただ、コンペを持つだけだった。
なにをしているんだろう、なにがしたいんだろう。
ただ、彼が来るのを待っていたい。ただずっと。


「ティファ?」

顔を向けると待ち望んでいた人の姿が確かにそこにあった。
視線を合わせようとするとまたそっとそれをずらす。
やっと帰って来てくれた。コンペをそっと置き、そのまま立ち上がって
私は彼の元へやや早足で向いました。

「おっ、おい!?、大丈夫かティファ」

走り寄って来た私を抱き寄せ額に手を当てて検温してくれる。

「熱は無いみたいだな。ごめん今まで黙っていて」

短く謝ると、彼は今まで出かけていたのは
私に贈るプレゼントの材料を探し、それを作る為に出掛けていて
ずっと、今日クリスマスイブの日に備えていたのだと話してくれました。



「彼も無茶するわね、女の子をこんなに待たせるなんて」
「本当、本当。もう少し彼を待つ女の子の気持ちを考えてあげなきゃ」

娯楽室の壁に寄りかかりながらサラ、トニヤの両名がこの顛末を語り合っていた。
そこへロアビィ、ウイッツ両名が加わってくる。ここへ集まったのは
他に行く所が無かったと言うのが正しい、辺りを見回せば他のクルーの姿も見える。

「だけど、隠しておきたい気持ちって言うのもわかってもらわなきゃねぇ」
「そうよ。恥ずかしいって思ってるって言うのがわかるだろう?」
「確かにそれもそうですが、ティファの気持ちも考えて貰わないと」
「そこにはまだ到達していない、まだまだ子供だねぇ」
「あんまりからかっちゃガロードに悪いわよ」
「それくらいわかってらぁ。おいロアビィ、さっさと渡すもん渡して帰ろうぜ」
「せっかちだねぇ。けれど確かにそうか。これを、僕達からのクリスマスプレゼント」
「ほらよ。どう言う物が趣味かわからなかったから少し心配だがな」

「ありがとう、ございます」
「感激、ありがとう」

 

「それで、ティファ。こ、これなんだけど」

そう言ってガロードが取り出した物は遠目からはよくわからなかったかも知れません。
けれど、私からはハッキリと解かりました。
木彫りのテディ・ベア、それほど大きくはないけれども、ガロードがどれ程
親身になってくれたかわかりました、優しく受け取ってその暖かい感触を確かめる。
ハッキリとそして丁寧に掘り込まれた体の部位
手で撫でてもなめらかに滑っていく。
彼の手に目を移すと指先には小さな切り傷が幾つもついていました。
その視線に気付いたのかガロードは

「あっ、こいつはその、慣れない事したから何度も手切っちゃって。
気にしないでくれよ」
「ガロード」
「ん?」
「ありがとう、ガロード。ごめんなさい、私ガロードに渡す物」
「ああ、気にしなくっても良いよ。そのうちさ、また絵を描いてくれよ。
俺、ティファの絵大好きだからさ」
「はい」

何もしていない私にも優しく言葉をかけてくれる、私はこの時をとても愛しく思いました。


2人が部屋を出て行こうと扉を開けるとジャミル、テクス、そしてパーラが廊下を歩いいる最中。
ゲッとした表情のパーラに無表情のジャミル、そして苦笑するテクス。

「せっかく秘密にして驚かしてやろうと思ったのによ
しかも相変わらず見せ付けてくれちゃってよぉ」
 
正面きって言われてしまい2人とも赤面してしまう、
そんなパーラを諭してテクスが声をかける

「まぁ、ばれてしまっては仕方ないさ、すまないが荷物を運んでくれないか?
いかんせん荷物が多くてな」
「2人とも、頼む」
「わかってるよ、結構大変そうだしな、場所は娯楽室だな!?」
「あったりまえだろう?ティファ、手に持ってるそれは?
ハハーン、さてはプレゼントか何かだろう。ガロードもやってくれるじゃないか」
「ちっ、違うよ。そんなんじゃ」
「2人ともそこまでにしたらどうかな?ティファにも手伝って貰おうか」
「は、はい」
「それでは2人とも食堂へ行って料理を取って来てくれ」
「料理って誰が作ったんだ?」
「みんなでと言うのが良いか、正確にはパーラが一番頑張ってくれたようだが」
「嘘ッ」
「おい、嘘とはなんだ。これでも食事当番を何度もやったんだぜ?
そんな変な物は食わせねぇよ」
「そう言うんならちょっと期待しちゃおっかな」
「おうっ、そうしろそうしろ。先に食べんじゃねーぞ」
「わかってらい。ティファ、行こうか」
「はい」
 
 さっきよりも元気の良い返事をして部屋の中へ再び入り、直ぐに出てくるティファ。
その様子を見ながらジャミルが一言「頼む」と言って娯楽室の方へ、
そしてガロードとティファは反対方向の食堂へと歩き出した。


「今年は良いクリスマスになりそうだな。俺、とっても嬉しいよ」
「ええ、私もとっても嬉しい」


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N.I 12/21/2003