ありったけの想いをチョコに込めて

 

2月13日昼過ぎ・商店街

雪の降る商店街を、1人の少女が歩いている
「もうバレンタインなんだね」
羽のついたリュックを背負いその少女、月宮あゆが呟く
「うん、ボクも祐一君にチョコあげよっ!!」

同日夕刻・水瀬家

「秋子さん、チョコの作り方教えてくださいっ!!」
あゆは、居候している水瀬家に帰りつくなり秋子の所へと走っていく
「あゆちゃん、バレンタインのチョコを作るの?」
あゆの申し出を聞き、秋子は『ああ、なるほど』と言った感じの表情を見せる
その秋子の様子を、あゆは期待に満ちた目で見つめていた
「それじゃ、今から作りましょうか」

「ただいま〜っと」
あゆが帰ってきてから1時間ほどの後、祐一が学校から帰ってきた
家に入ると、秋子が夕飯の仕度をしているのであろう、おいしそうな食べ物の匂いが漂ってきた
「今日の晩飯は何だろうな?」
そんな事を口に出しながら、祐一は自分の部屋へと向かっていった

「あ、危なかったね、秋子さん」
慌ててチョコレートを煮こんでいた鍋のふたを閉めたあゆが、
祐一が部屋へ入ったのを確認してからホッとした表情で鍋のふたを開ける
ふたを開けるとすぐに、香ばしいチョコレートの香りがキッチンを包み込む
「そうね」
びっくりした表情のあゆを見ながら、まったく驚いた様子も見せない秋子がそう呟く

同日深夜・水瀬家

あゆのチョコレート作りは深夜まで及んでいた
「う、うぐぅ…おいしいのが作れないんだよ〜…」
涙目になりながら、あゆは必死にチョコを作りつづけている
「失敗しても良いから、自分の納得できるものを作りなさい」
そんなあゆの姿を母親のような表情で見つめながら、優しくそう言った
傍から見れば、その姿は親子そのものである
「うんっ、ボク頑張るよっ!!」
その言葉に、あゆはいつものような元気を取り戻して答える
「うにゅ…チョコレート」
そうやって意気込むあゆを目の前に、目が線となった寝ぼけ名雪が現れる
「わ、名雪さん寝ぼけてるよ〜」
「あらあら、しょうがないわね」
リビングのソファーで再び寝息を立て始めた名雪に布団をかけ、あゆのチョコ作りは進んでいった…

2月14日早朝・水瀬家

「急がないとやばいぞ、名雪!!」
「うん、わかってるよ〜!」
いつも通りの慌しい朝が水瀬家に訪れている
「「いってきま〜す!!」」
遅刻寸前の祐一と名雪が玄関を出て走り去った後、あゆはついさっき完成した手作りチョコレートを冷蔵庫から取り出す
徹夜したせいか、さすがにあゆの顔にも疲れが見える
「うぐ…できたよ〜♪」
更に並んでいる、型に流しこまれたチョコレートを見つめながらあゆが嬉しそうに呟く
「それじゃ、後はラッピングするだけね。」
そんなあゆの後ろに、徹夜したのにまったく疲れた表情の見えない秋子が立っている
「ラッピングって、どうやってするの?」
疲れながらも、最後の仕上げに懸命に取りかかろうとするあゆ
「そうね、ラッピングは…」
そんなあゆに、作り方を教えた秋子も自然と熱が入ってくる

同日夕刻・放課後の学校

あゆは待っていた
放課後になり、祐一が校門から出てくるのを…
「ボク、頑張ったんだよ…」
そう呟いて、あゆは綺麗にラッピングされたチョコレートをギュッと握り締める
そんな中、ふわりふわりと雪が舞い始めた…

「あゆ、どうしたんだ?
 こんなところに突っ立って…」
しばらくして授業が終わり校門から出てきた祐一は、校門前で背中を向けて立っているあゆに声をかける
雪が降っているのに傘もささないで立っていたため、あゆの頭には少しだけ雪が積もっていた
「あ、祐一君っ!」
祐一の声に反応し、あゆは頭に積もった雪の事などお構いなしに祐一の方へと向き直る
「あっ…」
その時、あゆの頭から舞いあがった雪の輝きに、祐一は一瞬ではあるが見惚れていた
「どうしたんだ、あゆ…俺を待ってたのか?」
見惚れていたのもつかの間、あゆが学校へ来た理由がわからずに祐一はそう言ってみた
「そうだよ…きょ、今日は…ば、バレン…タイン…だから…」
祐一を前にして緊張しているのか、あゆは言葉を詰まらせながら祐一に話しかける
「ボク…一生懸命…チョコレート作ったんだよ…」
そう言うと、あゆは祐一のそばへ歩み寄る
「ボクの7年間の気持ち、受け取ってください」
そういって差し出されたあゆの手には…昨日から一生懸命作ったバレンタインチョコが握られていた…


雪が降っていた…
差し出されたチョコレートにも、少しだけ積もるくらいの雪が降っていた…
そんな中…
「これ、ほんとにお前が作ったのか?」
「うぐぅ、ほんとにボクが作ったんだよっ!」
何気に立ち寄った公園のベンチで、で、祐一はあゆにもらったチョコレートを口に入れて驚いていた…
「あゆでも、こんなにおいしいチョコが作れるんだな」
祐一は素直な感想を漏らす
「ボクだって、頑張れば作れるんだよっ!」
祐一の照れくさそうな感想を聞いて、あゆは嬉しそうな表情でそう答える
「とにかく…ありがとな、あゆ」
「うんっ!」

雪の舞う公園のベンチで、7年の想いを詰めたチョコレートが…2人の絆をよりいっそう強くした…



リーザ「バレンタインにちなんでバレンタインSSだよ〜!」
神威「その割には、今回も原作は俺じゃないか…たまにはお前1人で最初から最後までやったらどうだ?」
リーザ「あ、あはは〜…今度は、頑張るわ…」
神威「とにかく、なかなか良い雰囲気で書けたな
    あゆエンド後のお話って事で。」
リーザ「まだまだ失敗も見えるけど、今の私にはこれが精一杯なのよ〜
     という事で、今回はこの辺で〜!」

 
 
 
 


HP開設記念に頂きましたあゆのほのぼのです〜。

健気なあゆあゆがいい感じです。

自分にはとてもこんな感じのものは書けそうにないですね(汗)