ROUND7「アメリカ第1戦決勝」
サイバーフォーミュラワールドGPXとは
世界各国を転戦し、年間10戦を戦い、各レースで
1位から6位までに与えられるポイントのトータルを競う夢のレースである
コースはサーキットのみならず市街地、オフロード、砂漠、雪原と
マシンと人間の限界に挑む過酷なレースである
その試練に耐え、年間、最多ポイントをあげたドライバーが
世界一速い男、ワールドチャンピオンの栄光を手にするのである。
遂にワールドGPX第1戦アメリカGPX決勝が開始されようとしていた。
予選は前評判の高い、舞、住井がフロントローにつき、
それに続き、佐祐理、ナイト・シューマッハという形になっている。
祐一は予選7位からのスタートとなっている。
STARTING GRID *順位*ゼッケン*ドライバー名
1*7.川澄 舞
2*21.住井 護
3*23.倉田佐祐理
4*1.ナイト・シューマッハ
5*12.アラン・ハ―スト
6*5.折原 浩平
7*30.相沢 祐一
・・・・・・
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既に各マシンはフォーメーションラップを終え、スタートまであとわずか、各ドライバーの緊張も高まっている。
「・・・・・・・負けない」
「フッフッフッ・・・・・今年こそは俺が優勝を・・・・・」
「大事な緒戦・・・・・はりきっていきますよ〜」
「・・・・・・・・・」
「さ〜て、俺の力が世界に通用するか、試してみるか」
「やれるとこまでやってやる。・・・・・チャンスがあればいつでもいってやる・・・・!」
それぞれの思いが交錯する中、グリーンフラッグが振られ、
赤いシグナルが灯る。
「今だ!!」
レッドシグナルが点灯したのを確認した祐一はアクセルを踏み込む。
シグナルが青に変り、各車がエンジン音を響かせ一斉にスタートした。
「いただきっ!」
「!?」
スタートで飛び出したのは住井のスタンピード。
ポールポジションの舞をかわし、トップへと踊り出る。
トップグループ各車に緊張が走り、一瞬の隙が生まれる。
「!?・・・・・・いける!」
一瞬の隙から生まれた各車のスペースの間をすり抜けるように駆け抜けるGSX。
《おーっと!!、相沢祐一、前の6台の隙を突き、トップへ踊り出たー!!
そのまま第1コーナーを曲がってグランドキャニオンコースへと突入していく――!!》
「トップになっちゃった・・・・・・」
名雪が呆然と呟く。
彼女も以前ワールドGPXの決勝に出場したことはあったがトップに立ったことは一度も無かったのだ。
もっとも、それはマシンに差がありすぎた為だが。
「祐一さん、凄いですっ!」
「フフッ・・・・祐一さんも初めての世界GPXでやってくれるわね」
秋子も思わず笑みがこぼれる。
レースは祐一を先頭に、住井、舞と続いている。
「まいったね・・・・・いきなり初出場のやつが俺の前を走るとは」
「・・・・油断した」
ここでこのコースの紹介をしておこう。
高低差1.372mの峡谷を走り抜ける、全長50102m(約50km)のコースを6週。
市街地、峡谷、砂漠の3つのセクションからなる、長距離のコースである。
難所として有名なグランドキャニオンの峡谷コースは40゜前後の傾斜を持つ
大小様々なコーナーが多数存在し、数百回にも及ぶシフトチェンジによって、ブレーキ、ギア、エンジン系統を酷使し、多大な負担がかかる。
50kmを走らなければ、ピットには戻れず、コース上でトラブルを起こしたらほぼリタイヤといっても過言ではないほど、過酷なコースなのだ。
このコースはどれだけマシンに負担をかけずに走れるかということが最大のポイントだ。
留美「うん、GSXの調子も良好ね」
真琴「この分なら優勝間違いなしようっ!」
あゆ「いっけぇー、祐一くん!!」
初めて出場する世界の舞台でトップにたったということで三人とも興奮を隠せない。
それは他のメンバーも同じだろう。
美汐「えっ!?」
そんな中、美汐の驚愕した声がピット内に響く。
名雪「どうしたの、天野さん?」
美汐「・・・フライングです。今、審判団から連絡があったんですが相沢さん、フライングしたそうです」
名雪に聞かれた美汐は苦い表情で答える。
今までの明るいムードが一気に吹き飛び、クルーの表情も暗いものに変る。
名雪「フライング・・・?」
美汐「ええ、60秒のペナルティです」
栞「そんな!今、せっかくトップに立ってるんですよ!?」
秋子「栞ちゃん、落ち着いて・・。モニターで確認してみましょう」
モニターにスタート時の映像が映し出されるが、そのままでははっきりとわからなかった。
美汐「スローモーションにしてみます」
スローモーションで流れた映像にはシグナルが青に変るコンマ数秒前にGSXがスタートしていた。
秋子「確かにスタート前にでているわね・・・」
名雪「そんな〜せっかくトップにたったのに・・・・」
秋子「・・・・祐一さんに伝えましょう・・・」
トップを走り続けるGSXに秋子から無線がはいる。
「祐一さん、聞こえますか?」
「ああ、秋子さん。トップですよ、トップ!」
初めてトップに立った祐一は興奮気味だ。
「落ち着いてきいてちょうだい、フライングよ」
「・・・・フライング?」
秋子のその一言で祐一の表情が豹変する。
「こちらでも確認したわ、全走行タイムに60秒の加算がされるわ」
いくらトップを走ってたとしてもこの60秒のハンデはとてつもなく大きいものだ。
「いい?レースはまだ始まったばかりなのよ。落ち着いて」
(・・・・・60秒・・・・・・)
今の祐一には秋子の声はまったく耳に入っていなかった。
トップを走り、浮かれていたところに突きつけられたこの事実は祐一に大きなショックを与えていた。
すでに頭の中は真っ白になり、祐一は冷静な判断など出来なくなっていた.
(せっかくトップにたったのに・・・・・60秒のペナルティ・・・・)
「無茶だけはしないで、いいわね?」
(冗談じゃない・・・・!このまま逃げ切ってやる!!)
そうと決めた祐一はシフトアップし、ペースアップをする。
「祐一さん!落ち着いて!」
秋子は必至に祐一を諭そうとするが今の祐一には無駄だった。
GSXはペースをあげ、後続を序々に引き離していくが、
焦りから雑なドライビングになり、時折舗装路からはみ出すようなラフな走りになっていった。
そして、後続のレーサー達にも祐一のフライングの報告が届いていた。
住井「フライング?オッケーッ。こっちは無理に追わないよ」
舞「・・・・・ペナルティを取り戻すつもりなの・・・・・60秒も逃がすほどわたし達は甘くない・・・」
佐祐理「そんなペースじゃ、マシンがもってくれませんよ」
あゆや他のレーサー達も祐一の無謀な走りでは、マシンが持たないと考える。
仮にマシンが持ったとしても、60秒のペナルティがある以上、容易に追いつけると考え、自らのペースを崩さない。
シューマッハ(・・・・・相沢君、走るのはマシンよ、気持ちじゃないわよ・・・)
浩平「あいつ・・・運に見放されたね。ま、素人にしちゃよくやったほうか」
秋子「祐一さん、スピードを落として!そのペースじゃGSXがもたないわ!祐一さん!?」
ピットではペースを上げ続ける祐一に警告を続けるが、ペースを落とす気配はない。
(60秒のペナルティがあるんだ・・・・!ペースを落としたらこのハンデは取り戻せない・・・・!)
祐一は無言のまま無線のスイッチをオフにする。
留美「こらーっ!相沢ぁっ!ちゃんとピットの指示をききなさいよっ!!!!!!」
あゆ「うぐぅ!?」
真琴「わわっ」
名雪「わ、びっくり」
栞「・・・・・・・・七瀬さん?」
突然の七瀬の変わりように唖然とする4人。
栞の額には汗、あゆなどはその形相の凄まじさに涙目になっている。
美汐「七瀬さん・・・・・相沢さん、無線のスイッチを切ったみたいですけど・・・・」
あゆ「・・・うぐぅ・・・・七瀬さん怖いよ・・・」
留美「・・・・・は!?・・・・あら、やだ、わたしつい興奮しちゃって・・・・あはは」
正気にもどった七瀬は慌てて取り繕うが、時、既に遅し。
無線を切った祐一はこんなピットでのやりとりも知らず、マシンの負担を無視したハイペースを保ち、後続との差を広げていく。
『速度を落とせ。ブレーキトラブル発生の可能性90%。ペースを落とせっ!』
「・・・・・カノンッ!後ろとの差は!?」
ピットとの無線を切った祐一はカノンの警告も聞こうとしない。
『・・・・・・・・・・・』
「カノン、後ろとの差は!?答えろ!!」
『・・・・・・現在、30秒02の差』
「まだだ!あと30秒離してみせる!!」
『・・・だが、これ以上のこのペースを続け―――』
さらに警告を続けようとするカノンのボイスが途切れる。
祐一がカノンのボイスまでもオフにしたのだ。
「負けるわけにはいかない!!」
もはや祐一には冷静に判断する力を失っていた。
レースも4週を過ぎた頃、既に24台中8台がリタイヤしていた。
2位以下の順位は舞、シューマッハ、住井、佐祐理、浩平。
依然とトップは祐一が独走し、2位との差も58秒まで広げ、ペナルティのロスを取り戻そうとしていた。
美汐「2位との差が60秒まで広がりました!」
栞「これで祐一さんがちゃんとしたトップってことですね」
あゆ「これなら優勝できるよ!」
栞やあゆたちは喜んでいたが、傍らの名雪と秋子は逆に不安な表情をしていた。
残すところあと2週のみだが、舞、ナイト・シューマッハらトップドライバー達の反撃はここから始まろうとしていたのだ。
そして、カノンGSXはマシンの限界に達しようとしていた。
「燃料も半分を切った・・・・・・・そろそろ仕掛ける・・・!」
舞達は燃料が減り、マシンの重量が軽くなるのを待っていたのだ。
同じ全開走行でも、マシンが軽いほうが、負担も減り、タイムも縮まるのだ。
ペースをあげた舞はグングンと祐一との距離を縮めていく。
「このままトップを守って優勝はもらう!!」
意気込む祐一だが、サイドミラーには舞のソニックブレードが映っていた。
「い、いつの間に後ろに!?」
レイウイングはGSXのすぐ後ろについている。
祐一はカノンのボイスをオンにし、
「カノン!GSXのパワーが落ちてるぞ!!」
『エンジンが熱限界に達している。これ以上は無理だ』
「くっ・・・・エンジンを回しすぎたっていうのか・・・・!」
後の舞はマシンを左右に振ってじわじわとプレッシャーをかける。
「絶対に抜かせるかっ・・・・!!」
GSXは加速し続け、260キロをオーバーする。
『これ以上のスピードだとコーナー進入時に曲がりきれない!ペースを落とせっ!』
「平気だっ、条件は同じ!あいつに出来るなら俺だって・・・!」
『前方に30Rのヘアピンカーブあり!速度を落とせ!』
だが、祐一はアクセルを緩めない。
ソニックブレードも速度を落とさず、GSXに並びかける。
『祐一っ!ブレーキをっ!!』
「ここで・・・・フルブレーキ」
舞は自分の限界を冷静に見極め、ブレーキを踏み込む。
ソニックブレードは減速し、GSXはそのスピードのまま、ヘアピンに突っ込む。
完全なオーバースピードで突入したGSXは曲がりきれずスピンを起こし、コース外で停止する。
その傍らを舞のソニックブレードはゆうゆうと抜きさっていく。
「くっ!このまま終わってたまるか!抜き返す!!」
ギアを入れ替え、リスタートするが、その背後にはナイト・シューマッハが迫っていた。
「相沢君・・・・負けん気だけではレースには勝てないわよ」
ナイトセイバーはGSXのスリップストリームから抜けると左サイドからあっさりと抜いていく。
「くっ・・・・あいつはナイト・シューマッハか!?」
祐一の脳裏に予選時の出来事が浮かび上がる。
そんなに浮かれてるんじゃ、もう決勝の答えは出てるわね
「くそっ!負けてたまるか!」
抜き返そうとする祐一だが、エンジンは限界寸前、冷静さを欠いた祐一とシューマッハとの差は縮まるどころか、逆に開いていった。
「カノンっ!もうパワーはあがらないのかっ!?」
『・・・・・エンジン、ブレーキともに限界に達している。祐一、ペースダウンを』
「ぐっ・・・・・・!」だが、祐一はなおもペースを落とさない。
その間にカノンのボイスは次々とマシンの異常を訴える。
『2速、および4速ギア破損。ミスファイア発生。冷却水システム停止。停止せよ、停止せよ』
ドオンッ
「・・・・・・・!」
ついにエンジンの負荷が限界を超え、オーバーブローする。
GSXは激しいスピンを起こしコース外へと吹っ飛んでいく。
「カノンGSX、オーバーブローです!」
「そんな!」
「・・・・・・・・・ここまでね」
ピット内を一陣の風が通り抜けた・・・・・。
停止したGSXの傍らを次々と他のマシンが追い抜いていく。
「くっそおっ!」
『各部の損傷チェック終了。2番、4番シリンダー破損。ガスケットにクラック発生。レース続行は不可能』
トップグループはファイナルラップに入り、舞とナイト・シューマッハが激しいトップ争いをしていた。
「・・・・・・凄いプレッシャー・・・・何者・・・?」
ナイト・シューマッハは執拗なまでに舞にプレッシャーをかけ、チャンスを狙っていた。
「相沢君・・・よく見ておきなさい。これがレースの駆け引きよっ」
ナイトセイバーはホイールベースを延長し、エアインテークの収納、ウイングの水平移行によって、
高速走行モード〔スプリントモード〕に移行する。
スリップストリームから出るとそのままソニックブレードの横に並びかけ、右コーナーへ。
ナイトセイバーはブレーキングを遅らせ、アウトからソニックブレードの前へと滑り込んでいく。
「!?」
鮮やかとしか言いようないほど見事なオーバーテイク。
浩平「茜、トップは誰だ!?」
茜「現在のトップはナイト・シューマッハ。タイム差は42秒です」
浩平「42秒!?なんて速さだよ・・・・!」
トップとのタイム差に舌打ちする浩平。
「捕まえたっ・・・・!」
舞がナイトセイバーを射程圏内に捉える。
しかしナイトセイバーは圧倒的なコーナリングスピードで舞を引き離す。
「・・・・・・・速い・・・・・!」
《今、トップを走るナイト・シューマッハがゴ―――ル!!!速い!圧倒的な速さです!
優勝候補筆頭と言われた川澄舞を寄せ付けません!まさに超音速の騎士!!!
圧倒的な強さでアメリカ第1戦を制しました――――――――!!!!!!》
シューマッハに続いて、舞、佐祐理、住井が次々にゴールしていく
浩平もそれに続き、初出場ながらも入賞を果たした。
茜「浩平、入賞おめでとうございます」
記者やカメラマンに囲まれる浩平に茜が声をかける。
浩平「ああ、サンキュ。見てろよ、次は表彰台だぜ・・・・・」
浩平の視線の先には表彰を受けるナイト・シューマッハ、舞、佐祐理がいた。
(ナイト・・・・シューマッハ・・・・・・・)
《華々しい勝利を飾りました超音速の騎士・ナイト・シューマッハ!
初出場、初勝利の快挙を川澄と倉田が祝います。一時は同じく初出場の相沢祐一がトップに立ちましたが、
やはり実力の差か、レース終盤でエンジンブローを起こし、リタイヤとなっています》
モニターに映し出されている表彰式の様子を祐一は忌まわしげに睨みつけていた。
RESULT *順位*ゼッケン*ドライバー名*獲得ポイント
1*1.ナイト・シューマッハ 10P
2*7.川澄 舞 8P
3*23.倉田佐祐理 6P
4*5.折原 浩平 3P
5*21.住井 護 2P
6*12.アラン・ハ―スト 1P
・・・・・・
・・・・・・
30.相沢 祐一 リタイヤ
2002/3/19
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