新世紀GPXサイバーフォーミュラ Kanon

ROUND2「選択」

 

 

 

 

 

 

富士岡サーキットに辿り着いた祐一を<スノークリスタル>のスタッフ達が出迎えていた。

その中には、祐一のいとこであり、スノークリスタルのドライバーでもある水瀬名雪、そしてその母親の秋子の姿もあった。

「久しぶりだねっ、祐一」

「祐一さん、お久しぶりですね」

GSXから降りた祐一を水瀬親子が笑顔で迎える。

「よ、よう、名雪・・・・・・・・秋子さんもお久しぶりです」

「?・・・・どうしたの、祐一。顔色が悪いよ?」

「いや、え〜と、それがだな・・・・・」

「祐一さん、何故GSXに乗ってきたの?トランスポーターはどうしたんですか?」

「え〜と・・・・・・そのことについて何ですけど・・・ちょっと問題がありまして・・・・」

祐一の歯切れの悪い態度に顔を見合わせる名雪と秋子。

「まぁ、ここで話すのも何ですし、モーターホームに入りましょう」

祐一達もそれに同意し、秋子に続きモーターホームに入ろうとしたが・・・・・・・

「お帰り、祐一くんっ!」

「え?」

祐一が声の方向を振り向くと、一人の女の子が両手を伸ばして向かってきていた。

それをサイドステップで思わず避けてしまう祐一。

「・・・・えっ!」

 

 

 

どかっ!

 

 

 

 

モーターホームにまともにぶつかる女の子。

「だ、大丈夫か?」

「・・・・・・・」

女の子は激突した体勢のまま全く動かない。

「・・・・・祐一。今のは酷いと思うよ・・・・・」

「・・・・・・お〜い、生きてるか?」

「・・・・・」

返事がない。

「もしかして・・・・全然痛くも痒くもなかったとか?」

「すっごく、痛かったよぉっ!!!」

女の子はがばっと振り返って涙目で祐一を非難の眼差しを送る。

「うぅ・・・・・避けたぁっ!祐一君が避けたぁっ!」

「すまん・・・・いきなり襲って来たから・・・・・まぁ、細かいことは気にするな、あゆ」

あゆ―――――それは祐一にとって、もう一人の幼馴染だった。

7年前に家族を亡くしたあゆは以来、水瀬家に引き取られていたのだ。

「ぜんっぜんっ細かくないよっ!それに襲いかかってなんかないよっ!」

「全然、大丈夫そうだな、あゆあゆ。それに襲いかかったんじゃないなら何なんだ?」

「感動の再会シーンだよっ!それにあゆあゆじゃないもんっ!」

「・・・・・何処が?」

「うぐぅ・・・・・もう、いいもんっ!」

拗ねてそっぽを向くあゆ。

「うぐぅ・・・・・7年ぶりの再会シーンで木にぶつかったのボクぐらいだよ・・・・・」

「やったな、世界初だ」

「ぜんっぜんっ嬉しくないよっ!」

「どうしたの、祐一さん?」

先に中に入った秋子が今の騒動を聞きつけて戻ってきた。

「いえ、何でもないです」

「・・・・・・・うぐぅ」

 

 

 

 

―モーターホーム内―

「・・・・・と、いうわけなんですけど」

「そう、そんなことがあったの・・・」

事情を聞いた秋子は深刻な顔をしている。

マシンが狙われたことも問題だが、今は明日の予選の問題のほうが深刻だった。

カノンのドライバー登録システムが解除されない限り、正規のドライバーである名雪がGSXを動かすことはできないのだ。

「本当にすみません・・・・・・」

あの状況では、他に方法もなかったとはいえ、祐一は自分の責任を感じられずにいられなかった。

「祐一が気にすることじゃないよ〜」

「うん、ボクもそう思うよ」

「そうね、祐一さんが乗らなかったらGSXは奪われていたもの。祐一さんの判断は正しかったはずよ」

「ね、登録システムを解除するのにはどれくらい時間がかかるかな?」

「カノンは3ヶ月はかかるって言ってたけど・・・・・・・」

「それじゃ、明日の予選どころか、ワールドGPXに間に合わないよ〜」

「だから困ってるんだろ・・・・・・」

「う〜」

「う〜ん」

落ち込む祐一と考え込む名雪、あゆ。

「とにかく、やれるだけのことはやってみましょう。一応、登録解除できないか試してみますから」

 

 

 

数十分後、スタッフ達が登録解除のためにあらゆる手段を試してみたのだが、結局徒労に終わっていた。

「やっぱり・・・・・駄目なのか・・・・」

「祐一がきにすることじゃないよ。祐一は全然悪くないんだから、ね?」

落ち込む祐一を名雪が励まそうとするが、祐一の表情は晴れない。

「でも、もし登録解除出来なかったら・・・・お前はレースに出れないじゃないか」

「あっ、だったらいい考えがあるよ」

突然なにかを思いついたらしいあゆがぽんっと手を叩く。

「祐一くんが名雪さんの代わりにレースに出ればいいんだよっ!」

ぽかっ

「うぐぅ・・・・祐一君がぶったぁっ〜!」

「バーカ、ここのチームのドライバーは名雪だろうが。大体、レーサーでもない俺が出て勝てるわけないだろ」

レースにおいてテクニックはもちろん、それ以上に駆け引きが必要となる。

レース経験のない祐一にはそれが欠けている。

それは祐一自身も名雪もよくわかっているはずだが・・・・・

「う〜ん、でも祐一ならきっと大丈夫だよ」

根拠はないだろう名雪だが、その言葉は間違いなく本心から出たものだろう。

祐一もそれを感じ取ったのだろうが、祐一自身はそんなことは思っていない。

「だいたい、そんなこと秋子さんが許すはず」

「了承」

「・・・・・・・はい?」

祐一の首がギギギッという擬音が出そうな感じで背後を振り向くと秋子が微笑んでいた。

「明日のレース、祐一さんに出てもらいましょう」

「うん、それがいいよねっ!」

あゆも秋子の賛成を得たことで自分の考えに自信をもったようだ。

対して、慌てたのは祐一だ。

「そんな無茶な!だって俺素人ですよ!それに名雪はどうするんですか!?」

「GSXが使えない以上、名雪には昨年のマシンを使ってもらうしかないんだけど、それだとGPXの予選も危ないわ」

スノークリスタルは去年もワールドGPXに参戦していたのだが、マシンスペックで他チームに大きく遅れをとり、ロクな成績を残していなかった。

そのため、急遽ニューマシン「カノンGSX」の使用が決まったのだ。

「それなら、序盤は捨てて、GSXのデータを使った新しいマシンで途中参戦のほうがまだ望みがあります」

「うん、私もそう思うよ〜」

「それに祐一さんもレーサー志望なんでしょ?だったら丁度いいじゃない」

「いえ、レーサー志望でも俺はサイバーじゃなくてバイクなんですけど・・・」

なおも食い下がる祐一。

「祐一さんがもし、勝てばワールドGPXへの出場資格が手に入るし、GSXのレースデータも手に入るし、一石二鳥というわけですね。

もちろん、強制はしません。レースへの参加は祐一さんの意思次第ですよ」

「そんなこと言われても・・・・・・・・」

「時間はまだ、ありますから・・・・・明日までに結論を出してくれれば良いですよ」

「・・・・・・はい」

 

 

 

 

 

祐一はGSXの中で一人考え込んでいた。

「・・・・・・俺は・・・・どうすればいいんだ・・・・」

『抽象ナ質問ニハ答エラレナイ。選択基準ヲ示シテホシイ』

そのカノンの応えに驚いたのは祐一だ。

「・・・おまえ、コンピューターのくせに車以外のことも答えられるのか?」

『失礼ナ!・・・・・サ、ドウゾ』

「え、え〜と・・・」

意外な展開に動揺しながらも、祐一はカノンの言う選択基準を上げる。

「ドライバー不在でレースを危険するか・・・・・それとも、レーサーでもない俺が予選に出場するか・・・」

『答エハ至ッテ明確ダ。予選ニ出場スレバ決勝進出ノ可能性ハ、ゼロデハナイ』

「ゼロではない・・・・・・・か」

カノンの答えで祐一の意思は決まったようだ。

その瞳には決意の色がはっきりと現れていた

 

 

 

「秋子さん・・・・・」

「答えは出たようですね」

モーターホーム内では祐一と秋子のほかに、名雪、あゆがいた。

それぞれが祐一の答えを緊張した面持ちで見守っている。

「はい、俺に走らせてください!俺のせいでこんなことになってしまったからには、俺にできることをやってみようと思うんです」

「了承」

祐一の答えに秋子は静かに頷いて了承し、名雪とあゆも満面の笑顔だ。

「それに・・・・カノンはただのレースマシンじゃない。何とかなる気がするんです」

それは短い期間ではあったが、カノンと過ごした祐一の中で確かな確信とも、なっていた。

「まぁ、あんまり期待されても困りますけど・・・・」

「大丈夫だよっ。誰もぜんっぜんっ、期待してないからっ!」

「ほぉ・・・・・・」

「あ」

慌てて口を塞ぐあゆだったが、事実ではあるため、あえて反論はしなかった。

後日あゆに対してのからかいが通常より厳しくなったのは言うまでもない。

「じゃ、決まりね。祐一さん、明日は頑張ってくださいね」

「はい!」

そして・・・・・・・運命の予選が始まる・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

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2001/12/12

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今回、カノンの喋り方(?)変えてみたんですがどうでしょう・・・・・・?

やっぱり見ずらいかなぁ・・・・・・・・特に意見も感想もなければ次回からまた元に戻すようにします。